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「前世の記憶」を持つ人たちってどんな人なの?を調べた研究の話

 


世の中にはいろんな研究があるんですが、近ごろおもしろいのが「過去世の記憶」に関する研究であります。過去世の記憶ってのは「私は前世で古代エジプトの工芸職人だった!」「私には第二次大戦の兵士の記憶がある!」みたいなやつですな。私はまったく経験がないですが、たまにそういう人を見かけたりしますね。

 

いかにもスピリチュアルな話題のようですが、実は科学や心理学の分野の研究対象になってまして、「過去世の記憶」が発生する理由について調査が進んでいたりします。ってことで今回は、近ごろ見かけた「過去世の記憶」に関する調査をチェックしてみましょう。

 

 

1. 過去世の記憶には共通パターンが存在する

2021年に発表された研究(R)では、「過去世の記憶」に関する観察研究をたくさんレビューして、それぞれの調査にどんな特徴があるのかを調べてくれております。なので、過去世のデータをまとめて大きな結論を出してくれてるんで、ありがたいことですね。

 

で、ここでは、過去世の記憶には文化を超えて一定のパターンが見られると結論してまして、だいたい以下のような知見を明らかにしております。

 

  • 世界中で多くの人が死後の世界や転生を信じており、地域や文化による違いがある。例えば、イランでは98%、日本では51%が死後の存在を信じているとの調査結果が示されている。

 

  • 過去世の記憶が最も多く語られるのは、2歳から5歳の間で、この年齢の子どもたちは、時折、自分の人生には存在しない家族や出来事について話し始めることが多い。記憶の内容は、死因(75%が暴力的な死)、前世の名前や家族、場所など。現世では学んでいないスキル(例:未学習の言語を話す“ゼノグロシー”)、恐怖症、偏好が語られるケースもある。その内容は驚くほど詳細で、特定の地名や個人の名前、出来事を語るケースも珍しくない。

 

  • さらに、記憶の中には「生と死の間の時間」に関する言及もある。過去世から現世への転生までの期間について具体的に語るケースもあり、その平均は16カ月程度とされている。この「中間期間」には、天国や霊界のような場所をイメージさせる描写が含まれることもある。

 

  • ただし、こうした記憶は学校生活が始まる9歳前後になると、徐々に語られなくなる。なので、この現象は「幼少期特有の記憶力や想像力の影響」が大きく、意識の深層にある記憶が現れる時期なのかもしれない。

 

 

 

2. 過去世の記憶を持つ人々に見られる共通の心理的特徴

ちょっと前には過去世の記憶を持つ子どもや大人を対象にした研究(R,R)も行われてまして、前世の記憶をしつこく口にする子どもや大人たちの心理などを調べた上で、「過去世の記憶を語る人ってどんな特徴があるの?」というポイントを掘り下げてくれております。その要点をまとめて見ると、こんな感じになります。

 

  • 過去世の記憶を語る人たちは、そうでない人たちに比べて以下の特性が強い。

    • 夢想傾向が強い:空想にふける能力が高く、物語を創造する力に優れている傾向がある。なので、過去世の記憶ってのは、豊かな想像力を示しているのかもしれない。

    • 注意を引きたがる傾向:他人に注目されることを好む行動が見られる場合がある。ただし、過去世の記憶に関連する解離症状(意識や記憶が分離する現象)は、臨床的に問題のない範囲であることが確認されている。

    • 記憶の影響と人生への影響:大人の場合、過去世の記憶が人生に与える影響はおおむね肯定的または中立的で、割とメリットのほうが多いらしい。

      • スピリチュアルな信念の強化:過去世の記憶を持つ人の約半数は、転生や魂の存在に対する信念が強まり、人間関係のつながりを深く感じると報告した。これによって、死や人生の意味についての不安を和らげる役割を果たすこともあるらしい。これは宗教が持ってる機能と似たようなところがありますね。

      • 人生観の肯定的な変化:「過去世の自分より、今の自分の人生のほうが満足している」と答える人も多かった。過去世の記憶を語る経験は、現在の人生に対する感謝や充実感を生むきっかけになるのかもしれない。

    • ただし、一部ではネガティブな影響も報告されており、たとえば、幼少期に「おかしな子ども」とからかわれる経験や、過去世の記憶に関連する恐怖症との闘いなどがある。とはいえ、多くの場合、そうした経験を乗り越えた後には前向きな影響だけが残るらしい。

 

 

ということで、いくつか見てみましたが、「過去世の記憶」についてざっくりまとめると、

 

  • 基本的には、「過去世の記憶」は豊かすぎる想像力とかまってちゃん傾向のミックスで起きるのだと思われる。

 

  • 「前世があるかもしれない」という考え方は「死後に新たな人生があるかもしれない」という発想につながり、これが死への恐怖や人生の終わりに対する不安を軽減する可能性がある。これによって、自分の死の恐怖や他人の死の悲しみを乗り越えて、メンタルの改善につながる可能性がある。

 

みたいな感じっすね。「最高の体調」にも書いたとおり、“死”ってのは私たちのQOLに大きな影響を与えるポイントですから、ここに「過去世の記憶」が役立つかもしれないってのは良い感じですね。まぁ過去性を信じるか信じないかは個人の自由ですが、こうした現象が私たちの視野を広げ、新たな視点を与えるかもしれないってところは覚えておくと良いかもですね。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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