今週の小ネタ:緑茶+運動で減量効果がアップ?コラーゲンペプチドで疲労回復?FOMOの恐怖を乗り越えるには?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
緑茶+運動で減量効果がアップ?
緑茶ってダイエットドリンクなのでは?って話は昔から多め。緑茶はカテキンって成分が豊富で、こいつにはいろんな良い作用があると言われてるんですよ。たとえば、
- 脂肪燃焼の促進:脂肪をエネルギーとして効率よく消費。
- 熱産生の増加:基礎代謝を高める。
- エネルギー消費の増大:運動中のカロリー消費量をアップ。
みたいな感じですね。とにかくカテキンにはエネルギーの消費量を高める働きがあるんですな。
そこで新たに行われたメタ分析(R)では、「運動に緑茶を組み合わせたら痩せやすくなるのでは?」ってポイントを深掘りしてくれていてためになりました。過去の研究では、「カテキンは体重減少に有効」という報告と「特に効果はない」という報告が混在していたので、メタ分析で精度が高い結論を出してくれているのはありがたいですね。
このメタ分析は、10件のRCTをまとめたもので、「緑茶+運動」のメリットを調査したものです。細かいところは置いておいて、大まかな結果からまとめると、こんな感じになります。
- 緑茶を飲みながら運動すると、運動だけをした場合よりも、体重がちょっとだけ多めに減った(SMD=-0.30、p=0.011)。
- 多くの研究は8~12週間で、どれも効果は小さいながらも一貫していた。
- また、BMIの低下においても緑茶と運動を組みあわせたグループのほうが数字が減っていた(SMD=-0.33、p=0.03)。
- 体脂肪についても、緑茶と運動を組みあわせたグループのほうが数字が減っていた(SMD=-0.29、p=0.049)。
- 一方で、コレステロールや中性脂肪の値に関しては、運動と緑茶を組みあわせても追加のメリットは確認されなかった。
ということで、これを見る限り、せっかく運動をするなら一緒に緑茶を飲んだほうが良い気がしてくるわけです。この結果を参考に、「緑茶を飲むタイミングや量」をざっくり推測してみると、以下のような感じになるでしょう。
- タイミング:緑茶を飲むタイミングは、運動の直前が良いっぽい。
- 摂取量:1日500mg程度のカテキンを飲むことで、最も効果が出やすいっぽい。
- 運動の種類:有酸素運動(ランニングやサイクリング)と緑茶を組み合わせると、効果が出やすいっぽい。
まぁあくまで緑茶の減量メリットは「ごくわずか」なレベルなんで、実践の際は大きな期待を抱かないようにお願いします。ただし、「ちょっとでも効果を上げたい!」という方には、緑茶を活用するのも良い方法じゃないでしょうか。
コラーゲンペプチドで疲労回復?
コラーゲンのサプリを飲むべきか?って問題については賛否があるんですが、新しい系統的レビュー(R)では、「コラーゲンで筋肉痛や疲労が早く回復するぞ!」という話になっていて勉強になりました。
このレビューは、コラーゲンペプチドが筋骨格系にプラスの影響かどうかを調べたもので、大きく2つのシチュエーションに焦点を当てております。
- アスリートに役立つかどうか:コラーゲンが筋肉のダメージを抑制し、回復を促進することで、トレーニングのダウンタイムを短縮できるんじゃないか?
- 高齢者に役立つかどうか:コラーゲンが筋肉量を増やし、筋力を向上させることで、加齢にともなう筋肉の減少に役立つんじゃないか?
これらの効果を裏付ける研究は過去にもあるんだけど、包括的なレビューは少ないので、ありがたい内容になってるんじゃないでしょうか。
このレビューは、過去のコラーゲン研究から信頼度が高い8件をまとめたもので、だいたいこんな知見を導きだしてくれてます。
- 筋肉痛を減らすメリット:4件の研究が筋肉痛へのメリットを調べ、そのうち1件のみでプラセボよりも有意に筋肉痛が軽減したと報告している(効果量:0.678)。
- 筋力回復メリット:筋肉がダメージを受けた後のジャンプ力が、コラーゲンを飲んだ後のほうが早い傾向があった。また、コラーゲンとホエイプロテインを併用した場合は、筋力の回復率が22%も増えた。
- 筋疲労や筋損傷の回復メリット:筋肉の疲れやダメージを示す血中マーカー(クレアチンキナーゼとか)の変化については、研究データは一貫していなかった。なので、どこまで効果があるのかは良くわからない。
ってことで、この結果をふまえた上で研究チームは、「コラーゲンペプチドを飲むと急性の筋肉ストレスを軽くしてくれるかも」と結論づけておられます。データを見てると研究間のバラつきが大きいので、ハッキリしたことは言えないんですけど、期待が持てる結果じゃないでしょうか。
もしコラーゲンを試してみたい時は、以下のポイントを参考にしてみてくださいませ。
- 摂取タイミング:運動の30分前か運動後すぐに摂取。
- 用量:1日あたり10g程度のコラーゲンペプチドが推奨されるケースが多い。
- 併用する栄養素:ビタミンCを一緒に摂ると吸収率が高まる可能性がある。
くり返しになりますが、あくまでコラーゲンは「まだ試してみる価値あり」の段階ではあります。とはいえ、それなりのポテンシャルはありそうなので、「筋肉痛が辛い」「回復を早めたい」という方は、まず2~3カ月試してみて、自分の体感で効果を判断してみると良いかもしれません。
FOMOの恐怖を乗り越えるには?
「FOMO(Fear of Missing Out)」って言葉があるじゃないですか。SNSで友人たちが楽しそうなイベントに参加している投稿を見て、「自分だけ取り残された気がする!」みたいに感じちゃう、あの感覚のことです。
この心理は、一般的には「楽しそうなイベントに参加できなかった!」みたいな後悔の気持ちが働いていると考えられがちなんだけど、新しい研究(R)では、FOMOの本質は「社会的な絆を失うかもしれない……」という恐れなのだ!って結論になっておりました。
これはコーネル大学などの研究で、「FOMOってどんなメカニズムで起きるんだろう?」って問題を調べたものです。合計5,441人にも及ぶ参加者を対象に、SNSの投稿閲覧や仮想シナリオの操作を含む多様な手法で調査を行っております。
その結果わかったのは、以下のようなポイントです。
- FOMOは社会的なつながりへの不安から生じる:FOMOはイベント自体の楽しさとは無関係に、「自分がいない間に他の人が絆を深めたらどうしよう」という不安が大きい人ほど発生しやすい。
- FOMOは自分への影響を過大評価する傾向から生じる:多くの人は、他人が同じイベントを逃しても「大したことではない」と思うのに、自分の場合は「大きな損失」と感じる、という認知バイアスを抱いていることが確認された。
- SNSがFOMOを悪化させる:SNSで友人たちの楽しそうな投稿を見ると、「自分の価値が低く見られるかも」という不安が増幅される人が多かった。
- FOMOは「後悔」や「疎外感」とは異なる:「後悔」とは失った瞬間の楽しみや利益に焦点を当てる感情であり、「疎外感」とは明確に排除されたと感じる体験を意味する。その点で、FOMOは「将来的に絆や自分の居場所がなくなるかもしれない」という漠然とした不安が中心にある。つまり、FOMOとは「自分がいない間に周囲ばかりが仲良くなることへの恐れ」だと言える。
ってことで、幸いにも私にはこの感情はないのですが、心当たりがある人には割と辛い感情かもしれませんな。研究チームいわく、
人々は昔から所属感を求めてきた。しかし現代では、SNSを通じて他人の行動が四六時中目に入るため、過去にはなかった形でFOMOが増幅されている。
確かに、現代はSNSで他人の生活が可視化されまくってるんで、「見えない安心感」が失われているのかもしれませんな。
しかし、この研究では、FOMOをやわらげるためのシンプルなテクニックも明らかにしてくれてまして、単に「過去の社会的つながりを振り返る」だけでも大きな効果を得られるんだそうな。要するに、「昔の楽しい時間や親しい関係を振り返るだけでFOMOは緩和できるよー」って話でして、これは手軽で良いですね。