ネガティブ思考で成功を導く「プレモーテム」完全ガイド
こないだ「間違いを減らす5つの心理学的アプローチと日本発の“ポカヨケ”戦略」って話を書きました。人間には間違いを犯す心理傾向が5つぐらいあるから、それを避けるためのアプローチを事前にやっておこうってことですな。
その対策の中で筆頭に当たる手法が、「プレモーテム」であります。これは「自分の計画がすでに失敗したとしたら?」と仮定を立てて、失敗の原因をあらかじめ洗い出し、対策を立てるって手法のこと。「これは絶対にうまくいく!」と自信満々で進めたプロジェクトが、いざフタを開けてみたら予想外のトラブル続出で、「もっと早い段階で問題を見つけられたら……」と後悔するようなシチュエーションで使うんですよ。こういった問題を防ぐために、プロジェクトがまだ始まっていない段階で、意図的に「最悪のシナリオ」を想像することで、隠れたリスクを炙り出し、それに対応する準備を整えるわけですな。
この手法で最も重要なのは、「ネガティブ思考を活かす」ことであります。優秀なプロダクトマネージャーが、ユーザーテストで「何がうまくいっているか」よりも「どこがダメなのか」を知りたがるように、プレモーテムでも、プロジェクトが進んだ後に起こりうる問題を、ネガティブ思考を駆使して先回りしておくんですよ。「なんだか暗い作業だな……」とか思うかもですが、割と昔から効果が示されているテクニックでして(R)、だいたい以下のようなメリットがあると考えられております。
- リスクの早期発見:どんなプロジェクトにもリスクはつきものだけど、それが表面化するタイミングは様々。その点で、プレモーテムでは、プロジェクト初期の段階で潜在的な問題を洗い出すため、後になって「もっと早く気づいていれば……」という後悔を減らすことができる。
- チーム全体の連携強化:チームでプレモーテムを行う場合は、チーム全員が一堂に会して意見を出し合う。その過程で、メンバー間の信頼感が深まり、プロジェクトの目標やリスクに対する認識が統一され、結果としてプロジェクト全体のスムーズな進行につながる。
- 「想定外」の削減:プロジェクトの失敗の多くは、「想定外の問題」に起因するため、プレモーテムでは意図的に「最悪のシナリオ」を想像するため、この「想定外」を大幅に減らすことができる。
プレモーテムの進め方
ってことで、以上のメリットを得るために、プレモーテムの具体的なやり方を見てみましょう。プレモーテムはチームで行うのが一般的なんだけど、ここでは個人で実践する方法を紹介しておきます。
ステップ1. 目的を明確にする
最初に、プレモーテムを行う目的を明確にしましょう。個人でプレモーテムを行う場合は、以下のような目的が考えられます。
- プロジェクトの失敗要因を洗い出し、対策を講じる
- 自分の見落としを事前に発見する
- 時間やリソースを効率的に使うための準備をする
たとえば、 「このブログ記事を公開した後にアクセス数が低迷する場合を想定して、原因を特定し対策を練る」みたいな感じっすね。目的を紙に書き出すと、後のステップで軸がぶれずに進められますんで。
ステップ2. 最悪のシナリオを想像する
次に、「プロジェクトが失敗した」と仮定し、その理由を具体的に想像します。このステップでは、ネガティブな思考を積極的に活用してみましょう。
- 「プロジェクトが失敗した!なぜだろう?」と自問しながら、考えられるリスクをリストアップ。その際は、頭に浮かんだものを一つずつ記録する(質より量を優先)。
- チェックリストの例:
- 計画不足: 「そもそもタスクのスケジュールが現実的ではなかった」
- 実行ミス: 「重要なデータの確認を怠った」
- 外的要因: 「クライアントからの予期せぬ変更依頼があった」
- 成果物の質: 「ターゲットユーザーのニーズを見誤った」
想像を膨らませるためには、以下のような問いを自分に投げかけてみるのも効果的であります。
- 「誰が不満を感じるだろうか?」
- 「どこでスケジュールが崩れた可能性がある?」
- 「どんな外的要因がプロジェクトに悪影響を及ぼしたか?」
ステップ3. 問題ごとの解決策を考える
失敗の原因を洗い出したら、それぞれのリスクに対して解決策を考えます。「どうすればこの問題を防げるか?」って考えてみて、具体的なアクションを検討しましょう。
- リスト化したリスクの横に、解決策を書き出す。
- 解決策が複数ある場合は、優先順位をつける。
- リスク: 「スケジュールが遅れる」
- → 解決策: 「プロジェクト開始時に余裕を持った締切を設定し、マイルストーンごとに進捗を確認する」
- リスク: 「ターゲットユーザーのニーズを見誤る」
- → 解決策: 「早い段階でユーザー調査を行い、仮説を検証する」
- リスク: 「予期せぬクライアントの変更依頼が来る」
- → 解決策: 「最初にプロジェクトのスコープを明確化し、変更があった場合の対応ルールを事前に定める」
ステップ4. リスクの優先順位をつける
リスクと解決策をリスト化したら、次に優先順位をつけます。すべてのリスクに同時に対応するのは難しいため、影響が大きいものから順に対策を講じましょう。その際は、「プロジェクト全体に与える影響の大きさ」と「そのリスクが実際に起こる可能性」を基準に対策を決めてください。
- 例:
- 優先度高: 「重要データの確認ミス」→ 小さなミスでも全体に影響する
- 優先度中: 「スケジュールの遅延」→ 事前の調整でリカバリー可能
- 優先度低: 「外的要因の影響」→ 起きる可能性が低い
ここでは、リスクを以下のようなマトリックスに整理すると、視覚的に優先順位がつけやすくなりますんで、お試しください。
発生確率 高 | 発生確率 低 | |
---|---|---|
影響 大 | 最優先事項 | 次に対処すべき |
影響 小 | 要モニタリング | 後回しOK |
ステップ5. 行動計画を立てる
最後に、優先順位の高いリスクに対して具体的な行動計画を作ります。ここでは、「誰が」「いつまでに」「何をするのか」を明確にするのが大事。個人の場合でも「いつまでに」を意識することで実行の確実性が増しますんで。
行動計画の例:
- リスク: 「重要なデータの確認ミス」
- 行動: 完成前にチェックリストを作成し、すべてのデータが揃っているか確認。リリース3日前に再確認を実施。
- リスク: 「ユーザー調査不足による失敗」
- 行動: プロジェクト開始2週目までに5人のユーザーインタビューを実施し、主要なニーズを明確にする。
- リスク: 「スケジュールの遅れ」
- 行動: タスクごとにマイルストーンを設定し、週ごとに進捗をレビュー。
ってことで、プレモーテムのやり方は以上です。一見するとネガティブなアプローチにも見えますが、意思決定の精度を上げる強力なツールですんで、ぜひ次に何かを決める時には試してみてくださいませ。