このブログを検索




速筋 vs 遅筋:自分の筋肉タイプを知ってトレーニング効果を最大化しようぜーという話

 


「速筋」と「遅筋」という言葉を耳にしたことがある人は多いでしょう。これは筋肉のタイプを言い表す言葉で、速筋は短距離走やパワー系の動作に強く、遅筋はマラソンや耐久系の運動で威力を発揮する感じですね。

 

速筋と遅筋ってなに?

もう少し細かく説明すると、

 

  1. 速筋:瞬間的に大きな力を発揮するのが得意な筋繊維。短距離走や高重量のウェイトリフティングなど、スピードやパワーが求められる動作で活躍する。ただし、疲労しやすいので持久力には向いていない。

  2. 遅筋:長時間にわたって力を発揮できる筋繊維。マラソンや長距離サイクリングのような持久力系の運動に適している。速筋に比べてエネルギー効率が良く、疲労しにくいのが特徴。

 

みたいな違いになります。平均的な人は速筋と遅筋をおおよそ50:50の割合で持っているんだけど、これは割と個人差が大きい要素だったりします。なので、自分の筋肉がどちらのタイプに偏っているのか、またそれをどのようにトレーニングに活かすべきかってのがわかれば、運動の効果が爆上がりするんじゃないかとも考えられるんですよ。

 

実際、新たに出た研究(R)でも、400人を超えるスポーツ科学者やコーチにインタビューを行ったところ、みんな「自分の筋肉タイプを知っておくと便利だ!」と答えたんだそうな。この調査によると、「筋肉タイプに合わせたトレーニングの重要性」ってのは、過去の研究でも示されているそうで、

 

  • 2020年のある研究(R)では、エリートランナーを集め、通常のトレーニングに加えて、3週間にわたって30%のトレーニング量を増やすように指示。その結果、速筋が優位なランナーは疲労が蓄積してパフォーマンスが低下した一方で、遅筋が多いランナーはトレーニングの増加に適応し、パフォーマンスがさらに上がったとのこと。

 

  • 最近の研究(R)では、遅筋が多いランナーは、運動をしている時のエネルギー消費効率でも有利だと報告している。遅筋は速筋よりもエネルギー効率が良いので、持久力が求められる場面ではかなり上手く働いてくれる。調査によれば、この効率差は最大で7.8%にも達するそうで、これはかなりの違いだと言って良い。

 

  • 速筋と遅筋は、筋トレの成果にも違いをもたらす。たとえば、速筋が多い人は、短時間で高いパフォーマンスを発揮するのが得意だが、持続的な動作には向いていない。一方、遅筋が多い人は、割と軽い負荷でも多くのトレーニングが可能になる。

    ある研究(R)では、1RM(最大挙上重量)の80%の負荷でスクワットを行った際、速筋派は5~8回で限界に達したのに対して、遅筋派は11~15回の反復が可能だった。これだけの違いがあると、「60%の負荷で1セット8〜12回のトレーニングをする」みたいな一般的な筋トレ法も、万人には適応しない可能性も出てくる。

 

ということで、これらの知見を見ていると、確かに「自分の筋肉タイプを知っておくと便利っぽいよなー」とか思うわけです。

 

 

自分の筋肉タイプを判断するには?

こうなると、自分の筋肉タイプを判断するにはどうすれば良いのかが気になりますが、最初に上げた文献には、以下のような簡易的な方法が紹介されておりました。

 

 

1. 垂直跳びテスト

垂直跳びの高さは、速筋の割合を推定する手がかりになりまして、だいたいの目安は以下の通りになるらしい。

 

  • 男性:上に思い切り50cm以上ジャンプできたら、速筋のほうが多い可能性が高い
  • 女性:上に思い切り35cm以上 ジャンプできたら、速筋のほうが多い可能性が高い

 

 

2. スクワットの反復回数

1RMの80%の負荷でスクワットを行い、限界までの回数を数えてみても、だいたいの判断ができるらしい。判断の基準はこんな感じです。

 

  • 5~8回 → 速筋派
  • 11~15回 → 遅筋派
  • 9~10回 → 混合型(50:50に近い)

 

 

3. 距離によるタイム比較

短距離と長距離のタイム差も、筋肉タイプを知る手がかりになるとのこと。基本的には、短距離(50m~100m)のタイムが優れている人は速筋優位、長距離(5km以上)で安定したペースを維持できる人は遅筋優位の可能性が高いと考えられるそうな。これはわかりやすくて良いですね。

 

 

自分の筋肉タイプに沿ってトレーニングするには?

自分の筋肉タイプを把握したら、次はそれに応じたトレーニングを計画してみるのも良い感じです。以下のガイドラインを参考にしてください。

 

  • 速筋派に向いてるトレーニング法:速筋派は、短時間で高い力を発揮できる反面、疲労しやすい特徴があるので、トレーニングでは「高負荷・低反復」を重視すると良い。具体的には、

    • 重量:1RMの70~90%
    • 反復回数:4~6回
    • セット間の休息:2~3分(十分な回復時間を確保)
    • また、スプリントやプライオメトリクスなどの爆発的な動作を含むトレーニングも効果的だと言える。

 

  • 遅筋派に向いてるトレーニング法:遅筋派は、持久力が強みなので「低負荷・高反復」を中心に据えます。具体的には、

    • 重量:1RMの40~60%
    • 反復回数:12~15回以上
    • セット間の休息:30秒~1分(回復を短めに設定)
    • また、ランニングやサイクリングなど、一定ペースでの長時間運動も取り入れると良い。

 

ということで、筋肉タイプはパフォーマンスやトレーニング効果に影響を与えるようなので、自分の肉体の特性を知っておくとなにかとよさげ。もちろん、速筋派がマラソンを走れないわけでも、遅筋派が短距離で成果を出せないわけでもないんだけど、筋肉タイプを理解することで、自分の体に合った最適なトレーニングプランを作ることができるはずであります。私は速筋派なので、やはり今後も高重量のトレーニングを続けていこうかと。

 

筋肉タイプに合わせたトレーニングを試して、ぜひ自分のポテンシャルを最大限に引き出してみてください!


スポンサーリンク

スポンサーリンク

ホーム item

search

ABOUT

自分の写真
1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

INSTAGRAM