糖質は必要な栄養素なのか、それともただの毒なのか? その1
当ブログでは糖質制限について取り上げることが多いので、たまに「結局、糖質って必要なの?」ってご質問をいただいただいたりします。
確かに、糖質制限ダイエットの世界では「肝臓が糖を作るので、糖質なんて摂らなくてもいいんだ!」なんて主張も見かけますし、一方では「糖質を絶つなんてとんでもない!」って意見もありまして、どっちが正しいのかわかんなくなっちゃうところです。
アンチ糖質派の主張
この問題については、パレオダイエットの世界でも意見はわかれてまして、たとえば2012年にハーバード大で開かれた「古代健康シンポジウム」では、「糖質は古代人の食事に必要だったか?」ってテーマで議論が行われております(1)。
アンチ糖質派の考え方はシンプルで、基本的に人類はみな「糖尿病予備軍」であり、糖質はどんな状況でも毒にしかならないので、摂取量が少ないにこしたことはないというもの。ブドウ糖がインシュリンの分泌を上げて体に炎症を起こすので、1日の摂取量は20〜70グラムにすべき、との主張が展開されております。このへんの理屈は、糖質制限ダイエッターにはおなじみでしょう。
また、進化の観点から見ても、糖質は手軽にカロリーを補給して人類全体が生き残るために使われた栄養素で、個人の長生きには向いてないんだ、とも。実際、線虫を使った実験では、糖質が寿命を縮めるってデータが出たそうな。
糖質擁護派の主張
と、アンチ糖質派の主張はなかなか説得力がありそうに思いますが、実際のところ、わたしは「そこまで糖質を悪者にしなくてもいいんじゃない?」と思っております。
というのも、世界をみわたすと、炭水化物を食べまくってても肥満や糖尿病と無縁に暮らす人たちが結構いるんですよね。
代表的なのはパプアニューギニアのキタバ族で、彼らの食生活は総カロリーの約70%が炭水化物だったりします(2)。まだ長寿大国だったころの沖縄もすごくて、実に総カロリーの85%が炭水化物。さらに、太平洋の島に暮らすツキセンタ族は、なんと総カロリーの約95%が炭水化物!(3)
それなのに、いずれの部族も、糖尿病や動脈硬化、心筋梗塞、肥満とは無縁だったというからビックリ。これだけ見ても、「糖質は毒だ!」って主張にはムリがあるように思います。
同様に、「糖質が寿命を縮める」って説もいまいち乗り切れないところで、ヒトを対象にした研究で、糖質で寿命が短くなることを示した論文がないんですよねぇ。これまた、アンチ糖質派には不利な要素の1つかと。
じゃあ何が悪いのか?
糖質がそこまで悪くないなら、肥満や現代病の原因はなにか?って話ですけども、たとえばポリネシアの原住民がニュージーランドに移住したとたんに肥満が増えたとか(4)、糖尿病の患者がパレオダイエットに切り替えたら症状が改善したなんてデータ(5,6)もあるんで、
- 加工食品
- 植物油
- 砂糖・果糖ブドウ糖液糖
あたりのほうが、糖質よりも肥満の引き金になってる可能性が大。ざっくり言えば、
- 加工食品と砂糖を食べる
- ホルモンバランスが壊れる
- そこに炭水化物を大量に投下
- 太る!
って感じでして、要は糖質だけを減らしても根本的な問題の解決にはならないんじゃない?って話であります。また、1949年に沖縄で行われた調査(7)では、「長寿の原因は摂取カロリーが少ないから」ってデータも出てまして、昔の人にくらべて食べ過ぎてるのも原因の1つかも。
そんなわけで、「糖質はそこまで悪くないよ!」って話を書いてみましたが、長くなってきたんで今日はここまで。次回は、「糖質はまったく摂らなくてもいいのか」問題について考えてみたいと思います。
2014.9.13 UPDATE : 続きを書きました→「糖質は必要な栄養素なのか、それともただの毒なのか? その2」