糖質は必要な栄養素なのか、それともただの毒なのか? その2
シリーズの1回目では、「炭水化物はそんなに悪者じゃないんだよー」って話をしてみました。今日は「糖質はまったく摂らなくてもいいのか」について考えてみましょう。
超低糖質は人間にとって自然な状態ではない
前回は、炭水化物を摂りまくっている狩猟採集民は意外と多いって話をご紹介しました。なぜ狩猟採集民の食生活が重要なのかと言えば、彼らが、糖尿病や動脈硬化といった現代病とは無縁なのはもちろん、肥満すら存在しない暮らしをしているから。
これは人類学者の調査で何度も確認されてまして(1,2)、アフリカ、カナダ、南太平洋などの幅広い地域で、多くの狩猟採集民が「デブ?痛風?糖尿?なにそれ?」といった生活を送っております。うらやましいですねぇ。
で、多くの研究によれば、典型的な狩猟採集民は、総カロリーの30〜40%を炭水化物でまかなっていることがわかっております。唯一、イヌイット族だけが20%以下ですが、それでもハイパー低糖質ってわけではありません。
ちなみに、いまの日本人の炭水化物量は平均で40〜60%ぐらいだそうで、狩猟採集民の食生活は、現代人よりも低糖質だけど、そこまで極端に糖質を絞っているわけでもないって感じ。これぐらいが、健康のためにはちょうど良いレベルなのかもですね。
以上の情況証拠を見るにつけ、やはり「糖質をカットしすぎた生活」は、人間にとって自然な状態でないと思わざるをえない次第です。
超低糖質のデメリットとは?
実際のところ、超低糖質ダイエットのデメリットも確実に存在してまして、その代表例が甲状腺機能の低下。甲状腺ホルモンの分泌が下がっちゃった状態で、慢性疲労、うつ病、脱毛、皮膚炎など、さまざまな問題を引き起こすやっかいな症状であります。
超低糖質ダイエットを始めて上記の症状が出てきたら、すぐに炭水化物の摂取を増やすべき。ただし、この問題については、生まれつき超低糖質に強いタイプの人もいるので、判断は難しいところなんですが。
で、もう1つ、さらに大事なのが、超低糖質が腸内環境にあたえる影響であります。アメリカンガットプロジェクトの調査(3)によれば、長期にわたって超低糖質(1日30グラム以下)の暮らしを続けると、腸内の善玉菌が発酵を起こしづらくなるせいで、腸内環境が悪化しちゃうそうな。同様に、近ごろCellに出た論文(4)でも、腸内細菌のエサになる炭水化物が減ることで、さまざまな現代病を引き起こすことが指摘されております。
言わずもがな、腸内環境はアンチエイジングの最重要ポイント ですから、やはり長期にわたって超低糖質な暮らしを送るのはよろしくないのでは?と思われます。
まとめ
そんなわけで、いろいろ書いてきましたが、ざっくりまとめてしまえば「何事も極端はよくないよ」っていう超フツーの話です(笑)。個人的には、やはり狩猟採集民の暮らしにならって、総カロリーの20〜40%を炭水化物にするってのが安全かと思います。
credit: Eva the Weaver via FindCC