私たちの判断を鈍らせる「認知のゆがみ」40選
認知行動療法では、「認知のゆがみがメンタルの不調の原因だ!」と考えられております。もともともヒトの脳には事実をゆがめて解釈する傾向がありまして、これが行き過ぎると不安や鬱を引き起こしちゃうわけですね。
そんなわけで、どんな「ゆがみ」が起こりがちなのかを事前に知っておくと、人生のいろんな場面で何かと便利だったりします。いろいろリストアップしてたら100個以上になったんですけど、とりあえず個人的に大事だと思う40個にしぼってみました。誰にでも思い当たるフシがあるんじゃないでしょうか。
ありがちな「認知のゆがみ」40選
1.個人化
なんでも自分のせいだと考える思考。
例:「自分のミスで仕事が上手くいかなかった!」
2.外部化
なんでも他人や環境のせいだと考える思考。
例:「親の育て方が悪かったせいだ!」
3.読心
他人が思ってそうなことを勝手に推測。
例:「この人はわたしを嫌っている!」
4.ラベリング
他人や自分にレッテルを貼る思考。
例:「俺はバカだ!」「あいつは最低だ!」
5.白黒思考
なにごとも良いか悪いか決めないと気が済まない。
例:「ダイエットに失敗したら負け犬だ!」
6.すべき思考
自分で決めたルールに縛られまくる状態。
例:「誰にでも優しくしなければ!」
7.永久思考
いまの問題が永久に続くと考えてしまう状態。
例:「自分はそういう人間なのだ!」
8.拡大化
ひとつの問題が他のエリアにも広げて考える状態。
例:「自分のやることはすべて裏目に出るのだ!」
9.否定的な予言
根拠もなしにネガティブな予想をしてしまう。
例:「どうせ上手く行かない!」
10.肯定的な予言
根拠もなしにポジティブな予想をしてしまう。
例:「好きなことを仕事にすれば人生はうまくいく!」
11.破局化
つねに最悪な予想をしてしまう状態。
例:「仕事でミスった!もうクビだ!」
12.自己奉仕バイアス
成功は自分のおかげだが、失敗は他人のせいだと考える状態。
例:「お前のものは俺のもの。俺のものは俺のもの」
13.拡大化
実際よりも問題を大きく見てしまう。
例:「体重が200グラム増えた!太った!」
14.全か無か有効
すべてを手に入れないと意味がないと思い込む状態。
例:「1位を取らない限りは失敗だ!」
15.過度の一般化
ある場面で通じるルールをすべてに当てはめてしまう。
例:「どんな状況でもポジティブに!」
16.過小評価
自分のしたことを必要以上に低く見積もってしまう。
例:「東大を出たけどハーバード出身にくらべたら大したことない!」
17.サンクコスト
自分が投じた金や労力をベースに未来の行動を決定する。
例:「半年前に入った英会話教室、ほとんど成果が出てないけどせっかく金を払ったから続けてみるか…」
18.モラルライセンシング
一度いいことをしたから、悪いことをしても構わないと思う状態。
例:「運動をしたあとはタバコがうまい!」
19.高すぎる基準
失敗をふせぐためには完璧であらねばならないと思い込む状態。
例:「もっと努力をしなければミスを犯してしまう!」
20.社会的な拒絶への過剰反応
ちょっとした相手の反応にビビりまくる状態。
例:「会話中にアクビされた!嫌われてる!」
21.社会的な受容の見逃し
実は相手が興味を持ってくれてるのに、そこへ注意がいかない状態。
例:相手が身を乗り出して話を聞いてるのに、自分の話に気を取られて気づかない。
22.会話のネガティブな想起
過去の会話で自分が失敗したとこだけを思い出す。
例:エピソードトークをして笑いが起こったのに、「あそこで噛んじゃったな…」とだけしか考えない。
23.事務的な対応を否定だと思う
たんに相手が事実を伝えただけなのにネガティブにとらえてしまう。
例:「了解しました」というメールに、「(笑)がついてない!怒ってる!」と反応。
24.権利への信念
自分が信じていることは相手もそうあるべきだと考えてしまう。
例:「結婚は30代までにしなければならない!」
25.処理能力を低く見積もる
自分のトラブルを処理する能力を過剰に低く考えてしまう状態。
例:「どうせ俺なんかコミュ障だ!」
26.ピークエンドの法則
ある体験が終わったときと、感情がもっとも高まった瞬間を記憶しやすい傾向。
例:「終わりよければすべてよし!」
27.公平世界仮説
人がしたことには、それにともなった結果が帰ってくると考えた状態。
例:「努力は必ず報われる!」
28.感情を行動の原因ととらえる
人が行動する原因には必ず感情がともなっているという思考法。
例:「もっとやる気があれば仕事が進むのに!」
29.感情を判断の基礎に使う
自分の気分をもとに客観的な状況を判断する。
例:「この部屋に入ったら気分が悪くなった!霊がいる!」
30.割引率への注目
実際に使う労力や金額よりも、割引率の大きさに目がいってしまう状態。
例:「半額セール!半分も安い!買おう!」
31.妄想
反対の証拠がいろいろあるのに、とにかく考えを変えない。
例:「100キロ超えたけどデブではない!」
32.ハロー効果
ひとつの特徴から別の要素まで歪めて判断してしまう。
例:「黒ウーロン茶を飲んだからポテチは帳消し!」
33.認知的服従
周囲の意見に無意識に従ってしまう状態。
例:「水素水は売れてるから効果があるんだろう」
34.段階的要請
小さな頼みごとをされたら、次のより大きな頼みごとも引き受けてしまう状態。
例:「こないだ1,000円貸してくれてありがとう!今度は5,000円お願いしたいんだけど!」
35.譲歩的要請
いったん大きな頼みごとを断ったら、次の小さな頼みごとを引き受けてしまう状態。
例:「1万円貸して!ダメ?じゃあ1,000円でいいや」
36.機会費用の誤認
ある行動をしたときは、別の行動をする機会を逃しているという事実を見逃す。
例:「ちょっとゲームでもするか…。30分ぐらいいいだろ…」→「あの30分で仕事をしとくんだった…」
37.内集団バイアス
自分が所属するグループや好みが似ている相手ほど過大評価しやすい傾向。
例:「動物好きに悪い人はいない!」
38.所有物の過大評価
自分のものほどよく見えてしまう現象。
例:「ウチの子がいちばかわいい!」
39.時間の見積もりバイアス
タスクが終わる時間の長さを過小評価する傾向。
例:「これぐらいなら明日までに終わるな…」
40.ダニングクルーガー効果
知識や能力がない人ほど、自分は能力が高いと思い込んでしまう傾向。
例:「まわりはバカばっかりだ!」
ただし「認知のゆがみ」は悪者ではない
そんなわけで、ありがちな「認知のゆがみ」をリストアップしてみました。人生で何らかの判断をしなければならないときなどに、いまの自分の状態をよく観察しつつ、「あ、いまラベリングしてるな…」などとチェックしていくといい感じです。
ただし、ここで大事なのは、必ずしも「認知のゆがみ」はすべて悪いわけじゃないところ。「認知のゆがみ」のおかげで自分の価値観に沿った行動ができるんなら、別にいちいち修正していく必要もないです。
たとえば「ウチの子がいちばかわいい!」は事実に即してないかもしれませんが、そうでも思わないと子育てのモチベーションが上がらないケースもあるでしょう(笑)。自分の根っこに「子どもをしっかり育てる!」って価値観がある限りは、別に認知がゆがんでようが問題はないわけです。
その意味では、まずは自分の「価値観」がどこにあるかを把握しとくのが大事。価値観がわかってないと、認知のゆがみに流されるままになっちゃいますからね。このあたりは「ACT」でも強調されてますね。
まぁ難しいことを考えずとも、自分の認知をチェックしてみるのは意外と楽しいもんです。「あ、いま読心した!」とか「白黒思考が起きた!」とか、思考をチェックするゲームとして遊んでみるといいかもしれません。