実はナスやピーマンが体に悪いってどこまで本当?
ナス科野菜が体に悪いって本当?
ナス科野菜に関するご質問をいただきました。
以前にアレルギー体質だとナス科の野菜は食べないほうがいいとの話がありましたが、私は腸が少し弱いので、アレルギーではないけどやはり気になっています。普通に健康な場合でも、ナス科野菜は避けたほうがいいのでしょうか?
とのこと。確かに、当ブログでは以前に「アレルギー持ちはナス科野菜は止めといたほうが無難かも」書いております。ナス科野菜には、わりと腸を荒らしやすい成分が入ってて、アレルギーには良くない可能性があるんですよ。
ナス科野菜には特殊な成分が
具体的なナス科野菜の例を挙げますと、
- トマト
- ナス
- ジャガイモ類(サツマイモを除く)
- トウガラシ
- ピーマン
といったところ。カレーなんかでおなじみの食材ばっかですな。
これらの野菜にはちょっと特殊な成分が入ってまして、
- アルカロイド:植物が作り出す天然の農薬。カプサイシンとかソラニンなんかもその一種
- レクチン:糖とくっつく能力を持ったタンパク質
- サポニン:植物が作り出す天然の防御システム
これらの物質が、体に毒なんじゃないの?とか、リーキーガットを引き起こすんじゃないの?と考えられてたりするわけです。
いまのところ動物実験で判断するしかない
では、具体的なデータはどうなのかといえば、そこまでハッキリした証拠があるわけでもありません。 たとえば、
- アルバータ大学の生体外研究では、ジャガイモのアルカロイドで腸内の細胞に穴が開く可能性がみられた(2002年,1)
- アルカロイドをマウスに与えてみた実験では、リーキーガットと同じ現象が確認された(2010年,2)
- サポニンを与えたラットの腸内に穴が開いた(1996年,3)
といったところ。いずれも動物に大量のアルカロイドを食べさせたら炎症やリーキーガットが起きたって話でして、いまんとこヒトでは同じ現象が確認されてないんですよね。
また、ジャガイモのアルカロイドに関しては、唯一ヒトを対象にした2005年の実験がありまして、こちらでは「よほど大量に食べなきゃ大丈夫じゃない?」ぐらいの結論。ただしこれは健康な男女が対象なので、アレルギー体質の人がどんな反応を起こすかは未知数だったりします。
自己免疫疾患の人は避けたほうが無難…かも
続いて、ナス科野菜と自己免疫疾患(リウマチとかIBDとか)の関係はどうなの?ってとこですが、これもまだよくわかってない段階です。いちおう「IBDのマウスでリーキーガットが起きたよ!」みたいな報告 (1,2)はあるものの、ヒトへの影響については謎としか言いようがありませんで。
もっともアルバータ大学の2002年論文(1)によれば、フライドポテト(他の食品よりアルカロイド量が多い)の消費量が多い国ほどIBD(腸に謎の炎症が起き続ける難病)の発症率が高いそうで、ちょっと気になっちゃうとこではあります。
同様にレクチンについても謎のままなんですけど、2015年のレビュー論文(4)なんかでは、リーキーガットを起こしてリウマチを悪化させるメカニズムが示されてたり。これまた断言はできないものの、やはり自己免疫疾患の方がナス科野菜を食べるのは難しいのかな、と。
というわけで、いまんとこ「いろいろ謎!」としか言いようがないんですけど、個人的には「アレルギーじゃなきゃナス科野菜はどんどん食べたほうがいいんじゃない?」と思っております。というのも、ナス科野菜の害を示すデータがあるいっぽうで、メリットを示唆した研究も多いもんですから。
具体的には、
- ジャガイモのアルカロイドを使った生体外研究(5)では、ガン細胞の働きを抑える現象がみられた
- トマトにふくまれる「トマチン」(アルカロイドの一種)は、心疾患のリスクを下げる効果が確認されている(6)
- トウガラシ類がふくむカプサイシン(アルカロイドの一種)は、食欲の低下と代謝のアップ効果が大きく認められている
- ナスには抗酸化物質が多いため(アントシアニン)、やはり血管の健康を保つ作用がある(7)
みたいな感じ。アルカロイドの抗癌作用はデータの信頼性が低いものの、そのほかについては結構いい線いってるのではないかと思われます。
まとめ
というわけで、ここまでの話をまとめると、
- ナス科野菜が腸内の健康によくない可能性はある。ただし、まだ動物実験の段階
- いっぽうでナス科野菜に特有のメリットがあるので、健康な人であれば普通に食べたほうがよさげ
ってところです。アレルギー持ちへの悪影響については何とも言えない段階なので、私としても「君子危うきに近寄らず」ぐらいのレベルで判断している感じですねー。
アレルギー体質の人は完全にNGってわけじゃないものの、ナス科野菜を口にするときは、食べたあとで自分の体にどんな反応が出たかをちゃんと記録しておくことをオススメしておきます。参考になれば幸いです。