「他人の期待にこたえよう!」は死をもたらす考え方である
失敗を怖がる人にありがちな心理
「完璧主義はメンタルにヤバい!」って話が昔からあったりします。1995年の有名なペーパー(1) によりますと、
自分や周囲に対して完璧さや高い能力のイメージを保つために、完璧主義者はいつも自分の有能さを証明しなければならず、そのせいで少しの失敗や批判にも心が傷つきやすくなってしまう。そのくせ、自分の苦悩をどんなに親しい人とも分かち合うことができない。
って感じ。「俺は完璧だ!」ってイメージを保つために、逆に心がポッキリ折れやすくなるんだ、と。批判や失敗をやたら怖がる人にありがちな心理と言いますか。
で、その後も研究は進んでまして、直近の論文(2)では「完璧主義は死をもたらす!」って結論になっててビビりました。
完璧主義と自殺のメタ分析
これはオンタリオ大学の研究で、過去に行われた「完璧主義と自殺」に関するデータから質が高い54件をまとめたメタ分析。11,747人分の観察研究を解析しておられます。
ここでいう「完璧主義」の定義ってのは、
- 他人の期待に過度に答えようとする
- 高い基準を保つことにプレッシャーがある
- ミスを恐れまくっている
- 他人にも高い基準を要求する
みたいな感じ。自分も周りもギスギスしちゃいそうなパーソナリティですな。
他人の期待にこたえすぎるのが一番ヤバい
そして分析の結果をざっくりまとめますと、
- 完璧主義な人ほど自ら命を絶つ傾向が高い(効果量は小から中程度)
- なかでもメンタルに良くないのは「他人の期待にこたえようとすること」
だったんですね。他人に合わせようと自分を酷使するうちに、心がすり切れちゃうって感じでしょうか。切ないっすね。
完璧主義者には新しいチャンスが恐怖の源でしかない
いっぽうで「メンタルを悪化させないパターン」もありまして、
- 他人に高い基準を求める
- 身の回りをキレイに保ったり、整理整頓を行う
といった完璧さは自殺的な思考に結びつかないらしい。あくまでも、他人からの目を意識した完璧さがヤバいってことですね。
完璧主義は、自分にとって最悪な批判者だ。この罠にハマると、いつも自分に厳しい態度を取り、努力をしすぎてしまう。そういった人にとっては、どんな新しいチャンスでも、自己批判、落胆、失敗をもたらす要素でしかない。
あまりに他人にこたえようとしすぎて、やがてどんなチャンスも怖くて仕方なくなっちゃうわけっすな。これまた切ない…。
昔から「マジメな人ほど自殺を考えやすい」と申しますが、あらためてメタ分析でお墨付きが出た感じですね。これは根深い問題なんですけど、まずは「セルフコンパッション」の技法で地道に自分と仲良くしてくしかないっすねぇ。