ネット中毒者の脳は「やる気ホルモン」が効かなくなってるぞ!という研究
ドーパミンは量も大事だが受け皿も大事
当ブログでは、「ドーパミンは大事だよ!」なんて話を定期的に書いております。脳内で分泌される「やる気ホルモン」の一種で、こいつが足りないと前向きな行動が取りにくくなるんですよね。
が、ここでもうひとつ大事なポイントが、ドーパミン受容体の問題であります。これは脳内におけるドーパミンの受け皿みたいなもんで、これが機能してないと、いくら「やる気ホルモン」が出ても意味がなくなっちゃう。料理ができたのに食器が足りないせいで食事ができないみたいなもんですな。
インターネット中毒者の脳はドーパミンが効かなくなっている
その事実を示すのが、高麗大学校が行ったおもしろい実験(1)であります。これはインターネット中毒になった男性を対象にしていて、PET検査を使って普通の男性の脳と何が違うのかを比べたんだそうな。ここでいう「インターネット中毒」ってのは、
- ネットがない環境だと怒りやイライラなどの感情が出てくる
- 睡眠や食事などの基本的な欲求を超えてネットをしてしまう
- ネット依存のせいで社会生活に支障が出ている
ぐらいの症状を意味しております。なかなか困ったレベルですな。
で、PET検査の結果がどうだったかというと、
- インターネット中毒の症状が重くなるほど、脳のドーパミンの受け皿が少なくなる!
って感じだったそうな。ドーパミンは普通の人と同じぐらい出てるんだけど、 とにかく受け皿のほうが足りなくなっちゃうみたい。
つまり、普通の人が50のドーパミンで十分に幸福感を得られるのに、インターネット中毒の人はドーパミンが100ぐらい出ないと幸福感を得られないみたいな感じですな。ほとんど麻薬中毒と同じメカニズムでして、肥満の人にも同じ現象が起きることがわかってたりします。
ドーパミンが効かなくなっちゃう2つのポイント
こうなると「何がドーパミンの受け皿を減らすのか?」ってとこが気になるわけですが、研究からわかるポイントは2点であります。
1.刺激はあるが実際の報酬がない
脳に対して「何かいいことがありそうだ!」みたいな刺激を与えるくせに、その後で実際の報酬がないケース。
典型的な例はインスタグラムの「いいね!」で、確かに脳は興奮するんだけど、それが自分の成長につながるわけでもなく、ヒトの三大欲求が満たされるわけでもなく、「だからなに?」みたいな状態になりがち。そのせいで脳がさらに刺激を求めて暴走を続け、結果として「いいね!」中毒になり、果てはドーパミンの受け皿の減少につながっていくわけですね。
2.刺激の入手が簡単で、次の刺激までの間隔が短い
たとえば覚醒剤だったらそうそう手に入りませんが、タバコは簡単に購入できるせいで中毒症状を起こしがち。これはスマホの通知でも同じだし、メールチェックなんかも似たような話であります。
つまり、ドーパミンの効きを一定にさせるためには、ある程度は入手が難しくなきゃいけないってことですな。
ドーパミンの効きを上げるとりあえずの対策
もっとも、これは現代の環境に特有の問題なんで、なかなか解決は難しいところです。基本的には、
- 自分にとってのドーパミントリガーに意識的になり、接触の回数を減らす。ネット、お菓子、ゲーム、スマホの通知など、実際の成果に結びつかないようなものはすべてこれに当てはまる。
- 役に立たないドーパミントリガーを何かに置き換える。ダラダラとツイッターを見てしまいそうになったら、読み応えのある本を手に取ってみたりとか。
- とりあえずドーパミンの刺激は10分と続かないので、無駄な刺激を受けた場合は「10分だけしのぐぞ!」と頑張ってみる。
- 覚せい剤中毒の患者が筋トレとランニングをしたところ、ドーパミンのレセプターが増えたってデータがあるので、すでにドーパミンの効きが弱くなってる自覚がある人は筋トレをする
ってあたりが対策になろうかと思います。とにかく「お手軽な喜び」を避ける暮らしを心がけたほうが、長期的な見返りは大きそうな気はいたしますね。どうぞよしなに。