なぜ「声に出して読む」と、そこまで記憶力が高まるのか?
音読は素晴らしい。なぜそこまで素晴らしいのか?
「音読すると頭に残りやすい!」ってのは有名な話で、50カ国語がペラペラになった教授も「シャドーイング」をオススメしてるわけです。
ただし、ここで意外とわかってなかったのが、「音読のなにが効いてるの?」ってとこ。声に出すから頭に残るのか、自分の声を自分で聞くから記憶できるのか?といった問題についてはよくわかってなかったんですよね。
ってことで、新しい実験(1)では「音読はなぜ効くの?」って問題についてガッツリ調べてくれております。
4パターンの記憶法で違いをくらべてみた
これはウォータールー大学の実験で、75人の学生を対象にしたもの。まずは全員に80個の単語を音読してもらって、2週間後にまた実験室にもどってきてもらったんだそうな。
その後、全員にあた新しい単語を80個ほど記憶してもらったんですが、ここで全体に4パターンの記憶法を指示しております。
- 単語を黙読する
- 他人の声で録音した単語を聞く
- 自分の声で録音した単語を聞く
- 単語を音読する
そのうえで全員に単語テストを行ったところ、結果は以下のようになりました。
- もっとも成績がよかったのは「音読」で、正答率は77%だった
- 2番手は「自分の録音を聞いた」グループで、3番手は「他人の録音を聞いたグループ」、最後は黙読グループだった
ってことで、この結果を見ると、音読の効果が高いのは「自分で声に出す」と「自分の声を聞く」って2つの要素が関係してるっぽいんですな。
ただし、「音読」と「自分の声を聞く」グループの差はそこまで大きくなくて、ほんの3%ぐらい。いっぽうで「音読」と「黙読」の差は12%も開いてまして、どうも「自分の声を自分で聞く」ってプロセスは思ったより重要なのかもですな。
音読が大事なのはプロダクション効果が効いてるから
この現象について研究チームは、「プロダクション効果」というタームを使っております。これは、記憶力を増やすのに必要な要素をまとめた言葉で、具体的には以下の3点がキーポイント。
- 声に出すことで運動機能を使うため、より学習のプロセスがアクティブになる
- 声に出すにはテキストを読まねばならず、視覚的なプロセスが必要になるぶんだけ、たんに耳で聴くよりも深い学習が可能になる
- 音読には「自己参照」の効果があるため、記憶への定着率が上がる
「自己参照効果」ってのは、「人間は『自分』にからんだ物事のほうが記憶しやすい」って現象を表した言葉です。音読をすると「自分がしゃべっている」という認識が生まれて、より記憶に残りやすくなるみたい。
そういえば、過去にも「自分が実践している様子をイメージしたほうが記憶力があがる」ってデータが出ていて、こちらも自己参照効果のおかげでありました。この効果に加えて、音読は運動や視覚といった他の刺激もあるため、自然と頭に残りやすくなるみたい。なるほどねぇ。
まとめ
ってことで、改めて音読は素晴らしいと思った次第ですが、さらに「自己参照効果」ってのを覚えておくと、大きな声が出せない状況でも応用が利きそうであります。たとえば地名を覚えるときでも、頭のなかで自分がその場所にいる状況をイメージするだけでもかなり違いそうですもんね。
ちなみに、音読の効果をさらに高めるテクニックとしては「人に向かって音読してみる」なんてのもありますんで、合わせてご参照ください。