間違った筋トレのフォームの改善に「エラー増幅メソッド」にはどこまで効果があるのか?問題
言わずもがな、筋トレには正しいフォームが必須。ベンチプレスにせよスクワットにせよ、ちゃんとしたフォームで行わないと、筋肉への刺激が激減しちゃうんですな。
といっても、いったん身についた癖は取れないのが人間の常。いくら頭では違うとわかっていても、なかなか正しいフォームには変えられないものでございます。
こんな時には、第三者からフォームをチェックしてもらうのが普通でしょう。トレーナーから「もっと肩甲骨を寄せて!」などと言われて、意識的にフォームを修正するパターンですね。
ただ、近ごろ「もっと効くんじゃないの?」と言われ始めたのが「エラー増幅メソッド」(MAE)という手法であります。ざっくり言うと、「あえて自分のミスを強調して筋トレをする」というもの。正しいフォームを意識するのではなく、わざと自分のおかしいところを誇張してみるわけですな。
もっとも、この手法が本当に使えるかは議論が分かれるとこではあるんですけど、近ごろ「MAE」の効果を確かめる論文(1)が出まして、なかなか勉強になりました。
これはヴェローナ大学の実験で、ウェイトリフターの男性30人が対象。みんなプロレベルの人だけを集めたらしい。
実験ではみんなに1RMの80%ぐらいでスナッチをやってもらったんですが、その際に2つのグループに分けまして、
- 普通におかしなところを指示してフォームを修正(「胸がバーから離れすぎだ!」みたいな)
- MAEを使っておかしなフォームをあえて強調するように指示(「胸がバーから離れすぎだから、もっとできるだけ離してみろ!」みたいな)
って感じにしたそうな。スナッチは1セット8回で、そのうち4回は指示ありで、残りは指示なし。そのまま1週間ほど同じようにトレーニングを続けてもらって、両グループの違いをチェックしたらしい。
で、フォームがどれだけ治ったかは、体やバーベルの動きが以前と比べて何センチ変わったか?で判断してます。ヒザの移動距離とかバーベルの位置がどう変わったかを計測して、具体的にフォームの改善度を数字で判断したわけですな。
さて、その結論から言っちゃうとMAEの勝利です。全体的にそこまで劇的な違いではないものの、全体的にはMAEが18%ぐらいの改善だとしたら、普通の指示だと7%ぐらいの改善。悪くない数字じゃないでしょうか。
こういった違いが出るのは、どうもわざと間違いを強調することで、逆にどこが悪いのかを明確に意識できるから。おかげで単に間違いを指摘されるよりも、自分のエラーへの理解が深まるらしい。なんか筋トレだけじゃなくて勉強にも使えそうな理屈ですな。
ただし、この研究はプロ級のリフターが対象なんで、果たして筋トレ初心者でも同じような結果が出るかは不明。リフターさんはすでに十分な知識があるので、その分だけMAEの効果が出やすい可能性はあるかなーと思われます。
そのへんはまだよくわからないとこですが、「どうしてもフォームが治らないなー」みたいなお悩みがある方は、試しにやってみてもいいかもしれません(ケガしない範囲で)。