過去最大級の「低脂肪ダイエット vs. 糖質制限ダイエット」実験はどちらが勝利したのか?
低脂肪と糖質制限はどっちが強い?
当ブログでは定期的に「糖質制限ダイエットどうなのよ?」みたいな話を書いております。私の基本的なスタンスは「糖質制限ダイエットの理屈がおかしいことがほぼ確実になった件」に書いたとおりですが、全体的には糖質制限には厳しい状況が続いているのではないかと。
そんななか、新しく出た論文(1)では「低脂肪と糖質制限はどっちが強いの?」をあらためて調べてておもしろいです。過去にも似たようなデータを紹介してきたんですが、今回のデータが素晴らしいのは、
- 参加者の数が過去最大級(609人)
- 実験期間もすごく長い(1年)
- 食事内容のチェックも厳密
ってポイントを押さえてるとこ。この規模のダイエット研究でほとんどないんで、かなーり信頼性があって良いのではないでしょうか。
1年にわたって低脂肪 vs. 糖質制限の比較をした
これはスタンフォード大学の実験で、肥満ぎみの男女だけを対象にしたもの(平均BMIは33)。まずは全体を2つに分けまして、
- 低脂肪グループ:最初の2カ月は脂肪は1日20gまで。その後、少しずつ量を増やしていき、平均で1日42gまでにする
- 低糖質グループ:最初の2カ月は糖質は1日20gまで。その後、少しずつ量を増やしていき、平均で1日96.6gまでにする
って感じ。どちらのグループも、序盤は極端に糖質または脂肪を削って、そこから徐々に、無理なく実践できるレベルまで持っていったらしい。
さらに、どちらのグループにも共通する指示としては、
- 1日の摂取カロリーは気にしないでOK
- タンパク質の量はどちらのグループとも1日90gぐらい
- できるだけ加工食品を減らして野菜を増やす(小麦や砂糖、トランス脂肪酸の量はできるだけ減らす)
のようになっております。わりとパレオダイエットのガイドラインに近いですね。
ついでに遺伝子型までチェックしてます
さらに、この研究でおもしろいのが、参加者の遺伝子型までチェックしてるとこ。具体的には全部で15の遺伝子型を調べて、
- 生まれつき糖質の代謝が苦手な人(=糖質制限が効きやすいと推測される)
- 生まれつき脂質の代謝が苦手な人(=低脂肪が効きやすいと推測される)
- 生まれつきインスリンが分泌されやすい人(=糖質制限が効きやすいと推測される)
といった違いも見ております。生まれ持った体質によってダイエットの効果が変わるのか?って問題もチェックしたわけですね。これはかなり徹底してていいですねー。
果たしてどちらが勝ったのか?
さて結論は、
- 1年で低脂肪グループは5.3kg減り、糖質制限グループは6.0kg体重が減った!
って感じでした。というと、パッと見では糖質制限がやや有利のように見えますが、これを1カ月あたりの減量効果の差に直すと56グラムぐらいで、遺伝子型をみた上でも、統計的には差がないとの結論。簡単に言えば、
- 低脂肪と糖質制限の効果は引き分け!
と言えます。この結果は想定の範囲でしたが、遺伝子の違いを組み込んでも差がないってのはやや驚きでしたね。
ちなみに、体重以外のポイントを見てみると、
- 血圧と安静時インスリンの改善も両グループに差はなし
- 悪玉コレステロールの減少は低脂肪ダイエットの勝ち(ただし微妙な差)
- 善玉コレステロールの増加は糖質制限ダイエットの勝ち(ただし微妙な差)
ってところで、細かい結果の違いはあれど、こちらも大きく見ればドローってとこでしょうか。生まれつき代謝が異なろうが、インスリンの分泌量が違おうが、糖質と脂肪の量はほぼダイエットの効果に影響しないわけっすな。
あと、個人的におもしろかったのが、今回の研究がスタンフォードとNuSIの共同で行われてるとこですね。NuSIってのは科学的なダイエット法を調査している機関何ですが、この共同設立者が、あのゲーリー・トーベスなんですよ。
トーベスさんは有名な科学ジャーナリストで、日本では「ヒトはなぜ太るのか?」で有名な人。かねてから熱心な「糖質制限ダイエット」の支持者として知られていて、海外ではちょっとしたカリスマみたいな人なんですな。いまのとこトーベスさんはノーコメントなんですが、この強烈な反証にどうリアクションするのかが気になるとこです。