「いま鍛えてる筋肉に意識を向けると筋肉が増える!」はどこまで本当か?
https://yuchrszk.blogspot.com/2018/03/blog-post_6.html?m=0
筋トレ中は筋肉に意識を向けたほうがいい?
よく筋トレの世界では「いま鍛えてる筋肉に意識を向けよう!」なんてアドバイスを聞くわけです。腕立て伏せをやってるときは「いま胸の筋肉を使ってるな…」とか、スクワットをやってるときは「太ももの前のほうが刺激されてる…」とか、自分が鍛えたい筋肉に集中したほうが筋肉が育ちやすい!って考え方ですね。といっても、このアドバイスが正しいかどうかを調べた研究ってあんまりなかったんですが、近ごろちょっと良い感じの論文(1)が出まして、勉強になりました。
これはデンマークで行われた実験で、18人の男性が対象。最低でも1年の筋トレ歴がある人だけを選んだそうで、ベンチプレスの1RMは103±25kgだったとのこと。なかなかの筋力っすね。
意識する筋肉を変えながら筋トレしてみた
で、実験では、参加者に1RMの50%ぐらいの負荷で、3回 × 6セットのベンチプレスを指示(1RMついてはこちらをどーぞ)。このとき、セットごとに「意識する筋肉のエリア」を変えたそうで、- 最初のセットは、いつも通りに筋トレをする(どの筋肉にも意識を向けない)
- 次のセットは、胸の筋肉だけに意識を向ける
- 3セット目は、二の腕の筋肉だけに意識を向ける
といったように意識を集中するエリアを切り替えてったらしい。
さらに、3セットごとにベンチプレスのやり方も変えたそうで、
- 最初の3セットは、わざとゆっくりバーベルを動かす(2秒であげて2秒で下げる)
- 次の3セットは、できるだけ素早くバーベルをあげる
って感じにしたみたい。つまり、この研究チームは、「運動のスピードによって効果が変わるんじゃないか?」と考えたわけですね。
筋トレの効果は筋電図で測りまして、電極は胸と二の腕の筋肉にセット。これで、どれぐらい筋肉の刺激が変わったかを見ております。
筋肉に意識を向けるのは確かに効くが……
それでは、以下にポイントを箇条書きにしておきます。- 意識を向けた筋肉は、何も意識しない時よりも確実に刺激が大きくなっていた
- 胸の筋肉は6%アップ
- 二の腕の筋肉は4%アップ
- ただし、できるだけ早くバーベルを上げた場合は、筋肉に意識を向けても違いが出なかった
ってことで、ゆっくりと筋トレをした場合に限り、筋肉への刺激は大きくなるみたい。よく筋トレの世界では、意識と筋肉のつながりのことを「マインドマッスルコネクション」などと言うんですが、少なくとも刺激量の点では正しかったみたいっすね。
いっぽうで、素早い筋トレには「マインドマッスルコネクション」が効かないのは、バーベルを動かそうとする時点で、脳が「全力を出すぞ!」と考えるからだそうな。素早い筋トレに備えて脳が準備してくれるんで、わざわざ意識を向けなくてもいいわけっすね。なるほど。
素早い筋トレをすれば十分じゃないのか問題
そのため、この実験ではもうひとつ大事な結果が出てまして、- 素早い筋トレをした場合は、別に筋肉に意識を向けなくても、筋肉の刺激量はスローな筋トレと変わらない
ってのもおもしろいポイントかと思います。つまり、わざわざ「マインドマッスルコネクション」とか考えなくても、普通に「できるだけ素早く筋トレするぞ!」と心がけるだけで十分じゃないの?ってことですね。
もちろん18人の実験で判断するの危険ですけど、過去にも似たような結果はチラホラと出てまして(2,3)、まぁ正しいのだろうなーと思う次第です。ただし、この研究はあくまで筋肉の刺激しか見てないので、長期的に筋肉の発達につながるかどうかは不明であります。そこらへんはご注意ください。