体罰には百害あって一利なし!というか人間の暴力性を加速させるだけ!というデータが出てたよー
「体罰はいかん!」ってのがいまや世界の常識。日本でもいちおう学校教育法で体罰は禁止されてるものの、いまだに教師が生徒を虐待した!みたいなニュースは流れますな。
事実、日本はわりと今も体罰に寛容な国(1)だと考えられてて、「学生をしつけるためには仕方ない」って意見もあったりとか。言葉よりも肉体的な罰のほうが効果が高い!みたいな考え方ですな。
この問題についてはいくつか研究例があって、たいていは「やっぱ体罰は無意味でしょ」みたいな結論が多め。科学的にも反対派の勢力が優勢な感じですが、新しく出たデータ(2)は、初めてシステマチックに「体罰どうよ?」ってとこを調べてくれてていい感じです。
これはマギル大学の研究で、世界の88カ国からおよそ 400,000人分のデータを処理したものです(WHOのデータセットを使ったらしい)。ここでは、各国の体罰に対する態度を3パターンに分けていて、
- 家庭でも学校でも法律で体罰が禁止されている国=30カ国
- 体罰禁止の法律が存在しない国=20カ国
- 学校だけは体罰が禁止されている国=38カ国
って感じ。これに各国の子どもたちが「どれぐらい暴力的な行動をしたか?」って数値を照らし合わせて、体罰との相関をチェックしたわけです。ありそうでなかった研究で実によろしいですなぁ。
で、具体的にどんな数値が出たかと言いますと、
- 「体罰が全面的に禁止の国」は「体罰を容認してる国」と比べて、子どもの暴力が男性は69%も低く、女性は42%も低い
- 「体罰が全面的に禁止の国」と「学校だけ体罰禁止の国」を比べた場合は、女性の場合は体罰禁止の方が暴力が56%低く、男性には違いがなかった
って感じ。この傾向は、各国の裕福さや犯罪発生率などで調整しても残ったそうで、どうも体罰って子供を暴力的にしてるだけなんじゃないの?って疑いが出てきたわけですな。
研究者いわく、
この調査では体罰と暴力の因果関係はわからない。「体罰は良い教育法ではない」という考え方が社会的に受け入れられた国ほど、積極的に体罰禁止の法律を作るだろう。他の文化的な要因も考えられるため、はっきりとは言えない状況だ。
ってことで、「体罰が暴力性を上げる」ってのは、あくまでも可能性のひとつだよーってとこを強調されておりました。
ただし、個人的には「体罰の悪影響」についてはかなり賛成でして、たとえば160,927人の子供を対象にした2016年のメタ分析(3)によれば、
体罰は非社会的な行動を増やし、メンタルの問題を悪化させ、家庭環境も悪くすることがわかった。
って結果が出てたりするんですよ。こちらはおよそ50年分のデータを使ってて、わりと信頼性は高め。
さらに研究者いわく、
ときどき「体罰にも良い面があるはずです。そこを探したらどうですか?」と言われることがある。しかし、私たちはすでに体罰のメリットも探している。そのうえで、体罰には何のメリットも認められなかったのだ。体罰とは、単に暴力の方法を教えているに過ぎない。
ってことで、かなり強烈に批判を展開しておられます。いやー、恐ろしいですな。
そういえば、わたしの学生時代はいまより体罰に寛容だったせいか、よく教師に頭をぶっ叩かれたりしてたなぁ(たいていは授業中に別の本を読んで怒られてた)。さらには父親にもよくぶん殴られてましたし、あの経験には悪影響しかなかったと言われると切ないもんがありますなぁ(涙
とりあえず、体罰には百害あって一利なしですんで、教育者はもちろん社会人の方々もご注意くださいませー。