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ベジタリアンってどこまで癌の予防に効くんでしょうか?問題

Grown vegetables

 

ベジタリアンというと「健康にめちゃいい!」ってイメージもありますが、個人的には「足りない栄養素もあるから気をつけてね!」ぐらいのイメージだったりします。

 

 

もちろん野菜たっぷりの暮らしがいいのは間違いないんだけど、どうしてもビタミンとタンパク質の摂取量に偏りが出がちなんで、そこらへんは注意したほうがいいよー、ぐらいの感じ。菜食には思想の問題もあるんで仕方ないところもありますしね。

 

 

で、ここで気になるのが「ベジタリアンって癌にいいの?」ってとこです。野菜とフルーツの多い食事ほど発症率を減らすのは間違いないんで、ならばベジタリアンは最強の癌対策なのでは?って気にもなってくるわけです。

 

 

この問題については、2017年のメタ分析(1)が有名で、 86の横断研究と10件の前向きコホートを分析したところ、

 

  • ヴィーガンのガン発症率は、肉も食べるグループより15%も低い!

 

って結論だったんですな(RR, 0.85; 95% CI, 0.75-0.95; P = .002)。うーん、これはなかなか強力な結論ですな。

 

 

さらに、ここらへんはオックスフォードの「ベジタリアン研究」(2)でも似た結論が出てたりします。こちらは2246人のヴィーガンを対象にした観察研究で、結論はこんな感じ。

 

  • ヴィーガンは肉も食べるグループよりも、すべてのガン発症率が19%低い!

 

ってことで、いよいよ「野菜だけ食うのが最強なのでは?」って気分になってくるわけですな。

 

 

ところが、いっぽうでオックスフォード研究はおもしろい視点も提供してまして、

 

  • BMIの要素を組み込んで調整すると有意差が消える!

 

って結果も出てるんですよ。つまり、大事なのは食事じゃなくて太ってるかどうかじゃないのか?ってことですな。

 

 

ついでにロマリンダ大学の研究(3,4)では「どうも癌の種類によってもいろいろ違うんじゃ……」みたいな結果も出てるのが悩ましいところ。こちらは「アドベンチスト死亡調査」っていう有名な健康データを使っていて、 だいたい4.14 〜7.8年の追跡調査を行なったところ、

 

  • 大腸がん、乳がん、胃がん、気管支のがん、膀胱がんなどについては、ヴィーガンと肉を食べる人のあいだで発症率に差はなかった
  • 乳がんについては菜食のほうが22%ほど発症率が下がる可能性があるが、これまたBMIを組み込むとほぼゼロになる
  • 前立腺がんについては、菜食のほうが35%も発症率が下がる(HR, 0.65; 95% CI, 0.49-0.85)。ただし、これは人種の要素を組み込んで調整すると、白人にしか確認されなくなる(サンプル数が少ないのげ原因だと思われますが)

 

だったそうな。こちらも解釈が難しいっすねぇ……。

 

 

ってことで、なんとも難しい状況なわけですが、上記の話をざっくりとまとめると、

 

  • やっぱ野菜がいいのは間違いなさげだが、それよりもジャンクフードを減らすほうが有効のような気もする
  • というか癌については、とにかく体重を減らすのがもっとも大事な感じがする
  • とりあえずベジタリアンが最強の癌の対抗策ってわけでもなさそう

 

って感じ。どうにもハッキリしない話で申し訳ないですけど、やっぱ癌を予防するには健康に良さそうなことを端からやるしかないんでしょうなー。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。