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今週半ばの小ネタ:人生の成功に必要な要素、人間はかなり寛容、痛み止めがうつ病改善?

Summary


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
 

 

 

 

人生の成功には「グリット、知性、身体能力」の3つが必要?

やり抜く力 GRIT(グリット)」でおなじみのアンジェラ・ダックワース先生が、「成功につながる2つの要素はこれだよ!」みたいな内容のデータ(R)を出しておりました。

 

 

これは米軍士官学校の生徒11,258人を対象にした研究でして、

 

  • 身体能力
  • 認知能力
  • グリット

 

などを9年にわたってチェックし続けたそうな。グリットってのは「やり抜く力 GRIT(グリット)」をお読みいただければと思いますが、すごーくざっくり言えば「情熱を持って根気強くやれる人は成功しやすいよ!」みたいな考え方のことです。

 

 

で、どんな結果が出てきたのかと言いますと、

 

  • グリットが高い人ほど、厳しい基礎訓練から脱落する確率が低かった!
  • 知性が高い人ほど、学習クラスの成績が良かった!
  • 士官学校を卒業できた人は、身体能力とグリットが高い傾向があった!

 

ということで、ハードな身体トレーニングでは根性が必要で、頭を使う作業では認知能力が必要だという、ある意味で当たり前な傾向が出てました。

 

 

ダックワース先生いわく、

 

この研究では、成功の決定要因がグリットだけではないことを示した。もちろんグリットも重要だが、私たちが厳しい状況をやり抜けるかどうかを判断するためには、グリットは決して最高の指標ではない。

 

とのこと。まぁこれは特殊な状況での成功しか判断してませんし、グリットがどこまで使えるのかについても賛否があるわけですけど、「粘り強く頑張れる能力」を持ってて損する状況もあんまないでしょうから、意識しとくに越したことはないかと。

 

 

人間、実はかなり寛容である説

続いてはオックスフォード大学などの研究(R)で、1,500人以上の参加者たちに「モラルジレンマ」について考えてもらったもの。具体的に言いますと、こんな感じです。

 

他人に電気ショックを与えたらお金をもらえるような状況があったとしましょう。ここで、ある人は電気ショックを断り、また別の人はお金のために電気ショックを選びました。この人たちのモラルはどのようなものだと思いましたか?

 

というわけで、金のために他人を傷つける行為を選んだ人について、多くの人はどんな印象を持つのか?ってポイントをチェックしたわけですね。

 

 

そこでどんな傾向が確認されたのかと言いますと、

 

  • 悪い行動をした人に対しても、たいていの人はすぐに「まぁそこまで悪い人じゃないでしょ」と解釈し、その人物を「本当に悪い人間だ」と非難することはなかった

 

  • さらに、良い行動をした人については、たいていの人は「この人は本当に良い人だ!」と判断し、その判断はなかなか変わらなかった

 

だったそうです。ヒトは他人の悪い行いには意外なほど寛容で、逆に善行は手放しで受け入れる傾向があるんじゃないか、と。

 

 

研究チームいわく、

 

私たちの脳は、基本的に他人を許す方向で社会的な印象を形成する。なぜなら、人間は誰でも時に悪事を行うものなので、その印象は定期的に更新していく必要があるからだ。

 

さもないと、すぐに相手を「悪だ」と決めつけてしまい、その関係性から得られるかもしれない潜在的なメリットを逃しかねない。

 

とのこと。人間であれば誰も欲に流されてしまうことはあるので、そのたびに「こいつは悪だ!」と断定していたら、なかなか良い人間関係は築けないぞってことですね。架空のシナリオで出た結論なので、どこまで現実世界に応用できるかはわからんものの、なかなか希望のある話じゃないでしょうか。

 

 

痛み止めがうつ病をやわらげる!というメタ分析の話

 

で、最後はケンブリッジ大学などの研究(R)で、「痛み止めがうつ病をやわらげるよ!」って結論を出したメタ分析になっております。どんな研究だったかと言いますと、

 

この論文では厳密な統計法を使い、30の先行研究から鬱に悩む約1,600人のサンプルをまとめた。この大量のデータをもとに分析したところ、抗炎症作用を持つ物質が、ひかえめながらも確かな抗鬱作用を持つことを明らかにした。

 

興味深いことに、抗炎症物質はSSRIのような従来の抗うつ薬と一緒に服用することで、より強い作用を発揮するようだ。

 

とのこと。ここで言われてる「抗炎症物質」ってのは、

 

  • NSAIDs(イブプロフェンとかアスピリンとかロキソニンとか)
  • スタチン(コレステロールのお薬)
  • オメガ3脂肪酸
  • ミノサイクリン(抗菌薬)

 

みたいな感じです。アスピリンがネガティブな感情を下げてくれるかも?ってのは昔から言われてたことですが、あらためて可能性が確認された感じっすね。具体的な数字もあげておくと、「抗炎症物質を使うと鬱の症状の辛さが52%下がる」って傾向があるようで、なかなかのものではないでしょうか。

 

 

ちなみに、なんで痛み止めがメンタルに効くのかと言えば、当ブログをお読みの方ならご存じのとおり、近年では「うつ病の原因は炎症だ!」説が有力になってきたからです。脳に炎症が起きてメンタルが不調をきたした状態に、痛み止めの抗炎症作用が働いてくれるんじゃないの?と考えられてるわけです。

 

 

まぁだからと言って「鬱の人は痛み止めを飲もう!」とは言いませんが(消化器系への負担が大きいんで)、やっぱメンタルと炎症は連動してるのかなーぐらいに考えておくと吉でありましょう。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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