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「あともう少しで終わる!」が脳のパフォーマンスを上げるぞ!みたいな話

 

あともう少しで終わる!」と思うと急にやる気が出たりするのはよくある話。逆に「いつ終わるか定かでない……」みたいな状況だと、なかなかモチベーションも上がらないもんでしょう、

 

 

で、新しい論文(R)はさらに別の知見を提供してくれていて、「あとどれぐらいで終わるか? がわかると、人間の脳は働きがよくなる!」って結論になってておもしろいです。例えば「あと10ページやれば参考書が終わる」みたいな状況下では、認知のパフォーマンスが上がるみたいなんですな。

 

 

これはテル・アヴィヴ大学など研究で、2つの実験から構成されております。ただしどちらも実験デザインは似ていて、ひとつめのテストでは64人の学生にストループ課題のような注意力が必要なタスクを指示して、「正解率が上位25%の人にはお金をあげるよー」と告げたそうな。

 

 

その際、全体を2つのグループに分けまして、

 

  1. 「あと何回やれば全てのタスクが終わりますよー」と伝える
  2. 何も教えられないままタスクをこなす

 

って感じでフィードバックの有無を変えつつ、さらに参加者に「どれぐらい疲れましたかー?」みたいな質問を重ねたところ、こんな傾向が確認されました。

 

  • 「あとどれぐらいで終わるか?を教えられたグループは、タスクのスピードと正確さのパフォーマンスレベルが高かった。この現象は、特に実験の終盤に顕著になった
  • また、フィードバックを受けた参加者は、フィードバックを受けなかった参加者に比べて、タスク間の休憩時間も少なかった

 

というわけで、進捗状況のフィードバックをもらったグループは、たんに作業へのモチベーションが上がっただけでなく、実際にタスクのパフォーマンスも上がったらしい。おもしろいもんですねぇ。

 

 

なんでこういった現象が起きるのかはまだ謎な部分も大きいんですけど、現時点でありえるメカニズムとしては、

 

  • 終わりを知っていると、「もうすぐで退屈な作業が終わって、もっと楽しい活動ができるはずだ!」という気分が生まれるから?

 

  • 「終わりが見えない状況」だと、どれだけ長く取り組むべきかがわからないため、すべてのエネルギーをそのタスクに投入することができないから? 逆に「終わりが見える状況」の場合は、エネルギーが尽きてしまうのを恐れずに全力を尽くすことができる?

 

といったあたりが考えられるかなーってところです。そういえば、ちょっと前にも「エネルギーが残ってない!と思ってる人はなかなか寝ようとしない」みたいな話がありましたが、これに近い側面があるのかもしれんですね。

 

 

そんなわけで、この実験を現実の世界に活かすなら、

 

  • 1日の作業を決めるときは、なんでもいいから「ここで終わり!」ってポイントを決めようぜ!

 

みたいな話になりましょうか。まぁ「10ページやったら終了」でも「2時間やったら終了」みたいな決め事はみんなすでにやってることと存じますが、この作業が脳のパフォーマンスも高めると思うと、またありがたみも違うんじゃないでしょうか。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。