このブログを検索




「過呼吸」で筋トレの疲れがグンとやわらぐぞ!という実験の話

 
 

過呼吸で筋トレがはかどる!」ってなおもしろい報告(R)が出ておりました。なんとも耳慣れない話ですが、過呼吸を行うことでベンチやレッグプレスの回数が増えるというんですな。


なんじゃそりゃ?って感じですが一応の理屈はありまして、

  1. 筋肉が疲れる主要な原因のひとつに、「血液中の二酸化炭素の濃度が高くなる」ってのがある
  2. 二酸化炭素レベルを下げれば、血液が塩基性になり筋トレ中の水素イオン生成に耐えやすくなる
  3. 二酸化炭素を下げるには過呼吸が役立つ!

みたいな流れです。まぁちょっと難しい話ではありますが、これは当ブログでも何度か紹介してきた「重曹がトレーニングに役立つ!」って話のメカニズムと似てまして、そうなると過呼吸にも十分な可能性があるわけです。


というわけで研究チームは11人の男性を対象に、「過呼吸が筋トレに役立つのか?」って疑問を調べてくれております。参加者は平均で7年の筋トレ経験があり、かなりの筋肉を持ってる人だけを集めたそうな。


具体的にどんな実験をしたかと言いますと、

  1. ベンチプレスを6セット、レッグプレスを6セット行う(1RMの80%の負荷、セット間の休憩は5分)
  2. プロトコルAでは、参加者は1、3、5セットの前と6セット目の後の回復期間中に過呼吸になる(過呼吸の時間はそれぞれ30秒)
  3. プロトコルBでは、参加者は2、4、6セットの前に過呼吸になる(過呼吸の時間はそれぞれ30秒)

って感じです。過呼吸のタイミングをいろいろと変えた上で、ベンチとレッグプレスの回数に違いが出るかを調べたわけっすな。

  • 過呼吸を行った後のセットでは、普通に呼吸をしたあとのセットよりも、有意に回数が増えていた(ベンチプレスで44±10 vs 36 ± 10レップス、レッグプレスで64±9 vs50±15レップス

  • 過呼吸を行っても目立った副作用(めまいとかヒリヒリ感とか)を示した被験者はいなかった

ってことで事前の仮説のとおり、休憩中の過呼吸には、筋トレの回数をアップさせる働きがあるみたい。おもしろいもんですなー。


個人的にはこの数値は結構ビックリでして、1セットあたり1.3〜2.3もレップ数が増えるってのは結構なものではないかと(だいたい27〜35%なんで)。サンプル数が少ないデータなんでうのみにするのも危険ですが、とりあえず試してみたくなる結果っすね。


また、先にも書いたとおり、過呼吸で筋トレの疲れがやわらぐメカニズムは重曹の効能とほぼ同じなんですが、実際のところ過呼吸のほうが優秀なポイントがいくつかありまして、

  • 重曹の場合、筋トレの疲れをやわらげる効果にはリミットがある。しかし、理屈の上では、過呼吸には上限がない

  • 重曹の飲み過ぎによる副作用が、過呼吸にはほぼ存在しない

ってのも大きなメリットでしょうね。過呼吸の安全性は高いんで、よしんば効果がなかったとしても失うものは少ないのがいい感じです。


ただ、いちおうの注意点としては、

  • 過呼吸に関する先行研究(R,R)では、そこまで目立った効果が出てないケースもある

ってのがあります。例えば、ニーエクステンションみたいに、1回の運動で使う筋肉の数が少ない場合はあんま過呼吸のメリットは得られないみたいなんすよね(まぁ当たり前と言えば当たり前ですが)。


いっぽうで、今回の研究で使われたレッグプレスみたいに、血中pHが低くなりがちなトレーニングの場合は効果があるっぽいので、

  • 足のような大きな筋肉を使うトレーニング
  • 多関節みたいに一度にいろんな筋肉を刺激するトレーニング

を中心に過呼吸を使っていくのが良さげです。


というわけで、今回のデータにもとづくと、筋トレで過呼吸を試してみたい方は、

  • 休憩時間のあいだにに、30秒あたり25回ぐらいのスピーディな呼吸をする(45秒以上やるとめまいが出る可能性があるので注意)
  • ただし、慣れないうちは30秒でもふらつきが出る可能性があるので、最初のうちは安全性を確保したうえで行う

といったあたりをおすすめします。私もさっそく次回のトレーニングから試すつもり。

スポンサーリンク

スポンサーリンク

ホーム item

search

ABOUT

自分の写真
1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

INSTAGRAM