今週半ばの小ネタ(新型コロナエディション):健康な人ほど感染させてる?、気温と新型コロナ、ペットは大丈夫なの?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。相変わらず新型コロナに関する新しいデータがいくつか出てたので、今回もそこらへんのまとめなど。
健康そうな人ほど新型コロナをばらまいてるんじゃないか説
「無症状の感染者が多い!」ってのが新型コロナの嫌ったらしいポイント。気づかぬまま感染が広がっていくもんで、コントロールが難しいんですよね。
で、直近のデータ(R)はさらに嫌な感じで、「新型コロナウイルスの感染力は発症前が一番強い!」という困った結論になっておりました。これは広州医科大学などの研究で、新型コロナの患者さん94人を選んで、定期的にノドからウイルスの量を測定しまして、
- どのタイミングでどれぐらいのウイルスをばらまいてるか?
ってのをチェックしたんだそうな。つまり、新型コロナの感染力がピークに達するのはどのタイミングなのか?という問題を調べてくれたわけですね。
さらに、ここでは新型コロナに感染した人たち77組のデータを分析。みんなが新型コロナにかかったタイミングも合わせて計測したところ、
- 新型コロナウイルスの感染力は、症状の発症前か発症時にピークに達する!
- だいたい症状が現れる2~3日前からウイルスが大量に排出される可能性が高い!
- 逆に気分が悪くなり始めると、ウイルスの排出量が減っていく
って傾向があったそうな。言い換えれば新型コロナってのは、いかにも病気そうな人からではなく、見た目は元気そうな人から最も多く拡散されてるんじゃないか、と。うーん、なんて嫌なウイルスなんだ。
まぁこのデータは患者の主観的な記憶を使ってたりもするんで、そこまで信頼度が高い内容とは言えないんですが、とりあえず万全を期して「健康そうな人ほどウイルスをばらまいてる可能性があるから注意しとくにこしたことはないぞ!」ぐらいに思っとくといいかもですぬえ。
気温が上がれば新型コロナはおさまるのか?問題
インフルエンザは寒い時期に流行るので、暖かくなれば新型コロナもおさまるのでは?という考え方もあるわけですが、米国科学アカデミー(NAS)が割と否定的なレポート(R)を出しておりました。これはNASの常任委員会のメンバーによるレビューで、「新型コロナは温暖な気候に弱いのかどうか?」って問題について、現時点で手に入るデータをもとにまとめてくれたんですね。
というわけで、ざっくり要点を箇条書きにしていくと、こんな感じです。
- 他のいくつかのコロナウイルスは春に衰退するパターンを見せているが、SARS-CoV-2(COVID-19の原因となるウイルス)が同じパターンをたどることを示唆するデータはほぼない
- オーストラリアやイランのように温暖な気候の国でもウイルスが急速に広がっていることを考えれば、湿度や気温の上昇に伴って症例が減少することは想定すべきではない
- 一部には「温度と湿度が上がるとウイルスの感染力が下がる」と報告したデータもあるが、それでも感染率は2であり、結局のところ指数関数的に感染が拡大する可能性は変わらない
- 過去250年のあいだにインフルエンザ のパンデミックが10件あり、そのうち2つは北半球で冬に始まり、2つは夏に始まり、3つは秋に始まった。すべてのパンデミックは、最初の流行がいつ発生したかにかかわらず、人間への感染が確認されてから約6ヶ月後に第二波のピークを迎えている
というわけで、これから暑くなるとはいえ楽観的にはなれそうにもない感じっすね。まことに嫌なウイルスですが、どうにかやってくしかないですなぁ‥…。
新型コロナでペットは大丈夫なのか?問題
どうやら犬や猫も新型コロナに感染するらしいぞ!といったニュースを耳にする昨今。老猫を飼ってる私としても気になるテーマなわけですが、そこらへんを調べたレビュー(R)が出ておりました。
これは「ペットと新型コロナ」に関する現時点までのデータをまとめたもので、こちらも要点をまとめてみると、
- 武漢でアウトブレイクが起きた後に集めたデータでは、同地域の猫の14%がウイルスに対する抗体を持っていた
- 香港の調査では、新型コロナに感染した家庭から引き取られた17匹の犬と8匹の猫を調査したところ、2匹の犬が陽性となったが、1匹は「弱い」陽性と判断され、偽陽性であった可能性がある。猫はいずれも陽性ではなかった
- より大規模な研究ででは、犬、猫、馬などから採取した4000のサンプルを分析したが、どれも新型コロナにかかった証拠はなかった
だったそうな。全体的なところ見てみますと、
- 理論的には、犬も猫もコロナウイルスに感染する可能性がある
- 基本的に猫は犬よりも感染しやすい
- ヒトから猫に感染する可能性はあるが、猫からヒトに感染する可能性はほぼない
といった傾向が見てとれまして、犬好きはかなり安心ながら、猫の感染度はわりと高いみたい。なんて嫌なウイルスなんだ……。
もっとも、感染した猫に何らかの症状が現れたケースはほとんどないみたいなんで、現時点ではそこまで心配しなくても良さそうなのが幸いではあります。結局のところ、ヒトの防御を最優先した方がいいって結論は同じですね。