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人間の問題解決能力は20代でほぼ決まる!それ以降は何をしてもムダ?みたいな悲しい観察研究の話

 


人間の問題解決能力は20代でほぼ決まる!それ以降は何をしてもムダかもだ!」という切ないデータ(R)が出ておりました。


ここでいう「問題解決能力」ってのは、

  1. 抽象的な推論の能力
  2. エピソード記憶
  3. 情報の処理スピード
  4. 言語をスムーズに操る能力
  5. 空間を把握する能力
  6. ワーキングメモリ
  7. 実行機能

といった脳の働きを総合した考え方で、この7つがそろってる人ほど現実の問題を解決する能力が高め。Googleでも採用時の指標にしてるとかなんとか言われていて、人生の成功を左右する能力の集合体みたいなもんすね。


で、今回の調査はカリフォルニア大学サンディエゴ校などによるもので、「ベトナム時代の双子加齢研究」って調査に参加した米兵1,009人のデータを使ってます。


参加者はみんな男性で、20歳ぐらいのときに上の「問題解決能力」を測定。それ以降も定期的に同じテストを続けて、全員が50代半ば〜60代半ばになった時点で、過去の結果と比べたんだそうな。


それで何がわかったかと言いますと、

  • 20歳の時の「問題解決能力」が、62歳になってからの能力の分散の40%を占めていた
  • 上にあげた7つの認知能力については、20歳の時の「問題解決能力」がそれぞれの分散の約10%を占めていた

だったそうです。すごくひらたく言ってしまえば、20歳の時点での問題解決能力により、約40年後の頭の良さをかなりのとこまで予測できるってことですね。


この結果が非常に切ないのは、「20歳時の問題解決能力を考慮した後では、他の要因はほとんど影響を及ぼさない!」って結果が出てるところです。例えば、生涯教育だとか、頭を使う仕事についてるかどうかだとか、知的な活動に参加してるかどうかみたいなポイントは62歳の能力とはほぼ関係なく、具体的な分散でいうと1%未満だったらしい。これはつらい!


研究チームいわく、

この結果は、教育、職業の複雑さ、認知活動への関与などが、後の人生の認知機能に与える影響は逆の因果関係を反映している可能性を示唆している。

とのこと。わかりにくい表現ですが、要するに、

  • 高学歴だったり、読書をしまくったり、頭を使う仕事についても頭は良くならず、単にもともとの能力が高いから高学歴になり、読書を好み、頭を使う仕事につくだけではないのか?

みたいな話です。昔から「頭を使う仕事についてる人は認知症リスクが低い」みたいな話があったんですけど、これはたんに元々の頭の良さを反映してるだけではないのか、という。


ちなみに、この研究では20歳時のテスト結果と62歳の時の脳もくらべてまして、以下の相関も確認しております。

  • 20歳時のテスト結果が良い人は、大脳皮質の表面積がデカい!

……うーん、こうなると20歳を超えたら何をしてもムダなのか?みたいな気がしちゃうわけですが、とりあえず研究チームは、私のようなオッサンでもこれから鍛えられる能力として、

  • 幅広い知識
  • 専門的なスキル
  • クリティカル・シンキング

などをあげてくれてはおります。なかでも最後の「クリティカル・シンキング」については「生まれつきの天才を超えるための唯一の方法」って話もありますし、トレーニングで伸ばせる領域なので、積極的に取り組んでいきたいところではあります。


「生まれつきの天才がクリティカル・シンキングを備えたら勝ち目がなくね?」といった思われる方もおりましょうが、幸いにもと言うかなんと言いますか、実は「生まれつき頭がいい人はバイアスに弱い」ってデータは意外なほど多いので、その点では私にも一矢報いる目があるわけですな(頭いい人はジョブズみたいに現実をねじ曲げるのもうまいので、その分だけバイアスにハマりやすくなる)。


また、その他にも後天的に伸ばせるポイントとしては、「粘り強さ」や「楽観性」「感情の安定性」といったエモーショナル面のスキルもありますんで、そこらへんを意識して伸ばしていくのも手ではないでしょうか。

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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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