「運動なんて苦しいだけだ!」と思ってエクササイズが続かない人は何が問題なのか?という実験の話
その昔「太りやすい性格と太りにくい性格の違い」みたいな話を書いたところ、新たに「運動しない人の性格とは?」って問題に取り組んだデータ(R)が出ておりました。
というと、「それって単に怠け者なんじゃないの?」みたいに思う人も多そうですけど、本論での結論をざっくり述べておくと、
- 不安によって引き起こされる心と体の変化を恐れている人ほど運動をしない!
みたいになります。不安のせいで呼吸が荒くなったり頬が赤くなったりするのを、必要以上に怖がる人ほど日々の活動量が低い傾向があるんだそうな。
これはオルブライト大学の実験でして、チームの問題意識はこんな感じです。
臨床現場で見た患者の中には、「運動は拷問のようなものだ」と表現するばかりで、エクササイズによって身体が楽になったり、ストレスが減ったり、達成感を得たりといったポジティブな体験を全くしたことがない人がいた。
運動でポジティブな体験をする人とそうでない人の間には、どのような違いがあるのだろうか?
運動が嫌いな人のなかには、いくら体を動かしてもなんの喜びも感じられない人が一定数いるのはなぜだろう?って話ですね。かくいう私も10年前は運動嫌いでしたけど、実際にやってみたらすぐにメリットを感じられたタイプなので、この研究には当てはまらなそうであります。
本研究は 64人の若者を対象にしていて、
- まずはみんなの「ビッグファイブ」をチェックして性格を把握する
- さらに専用のテストでみんなの「不安感受性」のレベルを評価
- 全員に加速度センサー(Fitbitみたいなやつ)を着けてもらい、1週間の活動量を調べる
みたいになってます。「不安感受性」は耳慣れない単語でしょうが、これは「ネガティブな感情のせいで体に起きた異変にどこまで恐怖を感じるか?」をあらわす指標です。例えば、
- 呼吸が不規則になった
- 動悸が起きた
- 手足が震える
- 汗が止まらない
- 胃がゴロゴロする
といった身体の感覚を、「心臓発作を起こすのでは‥…」や「気絶するかも……」や「手足が震えてるなんて恥ずかしすぎる!」など、無闇に怖がった解釈をするような人のことです。体の感覚の変化を現実よりも怖がっちゃうわけですね。
でもって、研究チームが上記のデータをすべてまとめたところ、こんな傾向が確認されました。
- 不安感受性が強い人ほど身体活動のレベルが低い
- 性格特性で言うと「協調性」だけが身体活動の量と相関していた
ってことで、やはり身体感覚への恐怖は活動量と相関してたらしい。運動をすれば心臓がバクバクしたり汗が噴き出すのは当たり前なわけで、この感覚を恐れていたらそりゃあエクササイズなんてする気にはならないでしょうねぇ。
チームいわく、
定期的に運動したいができない人たちに、今回の研究が役立つことを願っている。心拍数の増加、焦燥感、息切れなどの身体変化に対する恐怖が、運動を楽しめない人たちの根底にある可能性は高い。
しかし、このような不安感受性の問題は、行動療法や運動プログラムなどによってすぐに低下させることができる。
とのこと。一般的に不安感受性が強い人に使われるテクニックは、パニック障害に用いられるものと近くて、
- 回転イスでグルグル回ってもらって意図的にめまいを体験させる
- 過呼吸(深く速い呼吸を何度もする)をさせて息切れを体験させる
- 階段を何度も駆け上がってみて心拍数の変化を体験させる
みたいなことを行います。あえて不快な体験に身をさらすことで、「この体の変化は普通なんだな」ってのを脳に覚え込ませていくわけですな。ってことで、「運動は拷問だ!」とか「運動は辛いことしかない!」といった感覚をお持ちの方は、行動療法系の介入を考えてみるといいかもしれませんねー。