「なぜかお腹に不快感が……」な過敏性腸症候群 (IBS)にプロバイオティクスが効くぞ!というメタ分析の話
「お腹が弱くて……」といった人にありがちなのが過敏性腸症候群 (IBS)。全人口の約5〜20%に影響を及ぼす胃腸のトラブルで、いったんIBSになると、
- なんかお腹に不快感がある……
- トイレの回数が増えた……
- お腹にガスがたまってて……
みたいな問題に悩むことになるんですよ。命に関わるレベルじゃないんだけど、生活の質には大きな影響があるんですよね。
とか言っても、まだ目立った原因も解決策もないのがIBSの難しいところ。ストレスのせいだとか食物アレルギーのせいだとか言われていて、治療のために認知行動療法が使われたり制限食が採用されたりしております。何かと難しい症状なわけっすね。
といったところで新しい論文(R)は、「謎のお腹の不調にプロバイオティクスが効くのか?」って問題を調べてくれてて有用でした。原因不明の症状とはいえIBSがお腹の問題なのは間違いないわけで、ならば腸内細菌のサプリが有用だと考えるのは自然でしょう。
これはIBSと診断された16歳以上の男女だけを対象にしたメタ分析で、3,452人の参加者をふくむ合計35のRCTをまとめてくれております。テストに使われた菌は乳酸菌がもっとも多くて、次にビフィズス菌が続く感じ。66%のデータは「高品質」と判定されてまして、なかなか信頼性が高くていいんじゃないでしょうか。
では、以下に結論です。
- プロバイオティクスを飲んだ参加者は、プラセボと比べて「IBSが改善しなかった」と報告した参加者が17.3%少なかった(ただし研究間の不均一性は高い)
- サブグループ分析でも、プロバイオティクスによりプラセボ IBSの症状が有意に改善した
- 全体的な症状や腹痛の改善についてはビフィズス菌と乳酸菌には有意な傾向が認められた
- いろんな菌が混ざったプロバイオティクスを使ったほうが有効っぽい(ただし、データ数としては複数の菌を使ったプロバイオティクスの研究が一番多いんで、有意な結果が出やすいのは当たり前ですが)
全体的には乳酸菌に良い結果が出てまして、おそらく「プロバイオティクスは、腹痛、腹部の膨満感などに効く!」と行って良さそうであります。
また、今回の研究はメタ分析としても割と上質でして、
- いい感じのRCTが多くふくまれている
- 出版バイアスを評価している
- 国立衛生研究所の基準に厳密に従ってる
ってのがありますんで、なかなか良い感じではないでしょうか。IBSは複雑な現象なんで「プロバイオティクスを飲めばOK!」とは言えないものの、処方薬、認知行動療法、催眠療法、食事療法(FODMAPとか)、鎮痙薬などを試していただいたうえで、さらに治療のサポートメンバーに加えていただくといいんじゃないでしょうか。なにせIBSに悩んでいる人は「同じ治療法でも異なる結果が出ちゃう」ケースがよくあるんで、いろいろ試すしかないんですよね。
ちなみに、IBSにどのプロバイオティクスが効くかはまだよくわからないのですが、いちおう2017年のエントリに見込みがありそうなものを取り上げてますんでご参考までにー。