女性ホルモンの量が変わると、女性の筋トレパフォーマンスはどこまで落ちちゃうの?というメタ分析のお話
「女性の生理は筋トレにどんな影響があるのか?」って問題を調べたメタ分析(R)が出てたんでチェックしときましょう。女性の体内では定期的にホルモンレベルが変動しているのは周知の事実で、エストラジオールとプロゲステロンが神経系と骨格筋の働きに影響しているのもよく知られるところでしょう。
となれば、「生理周期によって女性の筋力が変わるのでは?」と考えるのは自然のことですし、実際に「パフォーマンスが変動する」と証言する女性アスリートも多いですからね。今回の研究ではそこらへんをガッツリと調べてくれたわけです。
調査では先行研究から21件のデータをピックアップしていて、
- 参加者が正常な生理周期を持つ健康な女性である(合計232人)
- 生理周期による筋力とパワーの変動を調べている
といった条件を満たすものだけを分析の対象にしております。参加者の年齢は19~33歳で、それぞれの運動履歴は完全なビギナーからプロアスリートまで幅広い感じになってますね。
そのうえでチームは、
- 卵胞期初期(月経開始から5日以内)
- 排卵期(排卵から2日以内)
- 排卵期と黄体中期(月経開始から21~25日後)
- 卵胞期と黄体中期のあいだ
っていうタイミングで、それぞれ筋力とパワーがどのように変動するかをみたんだそうな。筋肉の働きをチェックする指標としては、ジャンプの高さやサイクリングのどれだけのパワーを出せるかといったあたりを使ってます。
で、まずは分析の結論をひとことでまとめちゃうと、
- 生理の周期によって女性の筋肉パフォーマンスはほぼ影響を受けない!
のようになります。数値の一部を軽く紹介しますと、
- 卵胞期初期 vs 排卵期:最大筋力=0.01(Hedges g)、瞬発的な筋力=0.05(Hedges g)
- 卵胞期初期 vs 黄体中期:最大筋力=-0.01(Hedges g)、瞬発的な筋力=0.01(Hedges g)
- 排卵期 vs 黄体中期:最大筋力=0.01(Hedges g)、瞬発的な筋力=-0.06(Hedges g)
みたいな感じでして、確かにほとんど差がないと言って差し支えないっすね。いやー、エストロゲンが運動パフォーマンスを上げてくれるのは有名な話だったっんで、ホルモン変動で筋肉の働きに差が出ないってのは、個人的にはちょっと意外な結論でしたね。実際のところ、女性ホルモンがあたえる影響ってのは、実質的な違いを出すほどの大きさじゃないのかもですな。
が、もちろんこの結果をもって「生理は女性の筋トレパフォーマンスに影響しない!」とは言えないのは当たり前の話。実体験として「やっぱパワーが出ないなぁ……」といった感想を持たれたことがある方も、少なくないハズであります。
この問題についてはハッキリしたことは言えないものの、考えられることとしては、
- シンプルに月経の症状により気が散ってしまう(一方でラボ実験のようなシンプルなタスクだと気が散らない)
- 月経の不快感をパフォーマンスの低下と混同してしまいがち
- そもそも生理が重い女性は「生理中に筋トレ実験をします!」なんて募集に応募してこない(そのせいで、「生理は筋肉の働きに影響しない」って結論が高めに出てるのかもしれない)
- また、大半の実験では具体的なエストロゲンとプロゲステロンのレベルをチェックしてるわけでもないので、そこらへんで誤差が出てるかもしれない
といったあたりはあり得そうな気がしますね。まぁいずれにせよ、現時点では生理による筋肉のパフォーマンスへの影響はほとんどないかかなり軽微みたいなので、メンタルケアのほうを重視した方がいいのかもですね。