別にキツい運動をしなくても「歩く」だけで十分に長生きできるんじゃない?という観察研究の話
世の中には「推奨される運動のガイドライン」ってのがいろいろありますが、なかでも有名なのは、
- ウォーキングぐらいの軽い運動を週に150分
- または、ランニングぐらいの中程度から強めの運動を週に75分
- 筋トレを週に2回
っていうWHOのガイドラインでしょう。多くの国でも使われてる定番の数値っすね。
が、ここでちょっと気になるのが「軽い運動150分/週」と「強い運動75分/週」の効果って同じなの?ってとこです。ウォーキングぐらいの軽い運動だと、いくら倍の時間をやってもランニングには勝てなそうにも思いますし、そもそも人によっては「キツめの運動はどうにも苦手で……」って人も多いはずであります。
実際のところ、近年の研究(R)によると、人によっては脳内麻薬を受け取るレセプターの量が少ないケースがあることがわかってきていて、このようなタイプの脳を持つ人はキツい運動をしても幸福感を得られないんだそうな。いわゆる「ランナーズハイ」が体験できないわけっすね。
なので、レセプターが少ない人が「HIIT」などの高負荷なエクササイズをしても、ひたすら地獄にしか感じられない可能性が大。そのまま無理に続けても運動を嫌いになるばかりなので、ウォーキングぐらいの軽い運動にしとくのが吉でしょう。
ってことで新たにBMJに出てた調査(R)は、WHOの運動ガイドラインで得られる効果を深掘りしてくれていて勉強になります。
これは米国の大規模な健康調査を使った観察研究で、479,856人分のデータを分析したうえで、「いつもの運動量と死亡リスクの関係はどんなものなの?」ってのを調べたんだそうな。まずはその結果を簡単にまとめると、
- 「強い運動75分/週」のほうがちょっとだけ死亡リスクを低くするが、別に「軽い運動150分/週」でもそんなに効果は変わらない
- 少なくとも週に2回は筋トレをして、ウォーキングぐらいの軽い運動を1日30分の週に5回ぐらいやるか、または1日15分の激しい運動(ランニングなど)を週に5回やると、もっとも長生きにつながる
ということで、別にそこまでキツい運動をしなくても、ウォーキングぐらいの活動でも十分に長生きにはつながるんじゃないか?って感じっすね。これは高負荷な運動が嫌いな人には良いニュースではないでしょうか。
研究チームいわく、
推奨される身体活動のガイドラインと同じレベルの有酸素運動と筋力アップ運動の両方を行う人は、そうでない人に比べて、全死亡リスクが40%もの低下を示した。また、推奨されている有酸素運動または筋力アップ運動のどちらかに従事していた成人も、全死亡のリスクがそれぞれ29%と11%減少した。
ということで、かなりの違いを見せております。「どうにもHIITやランニングは嫌いだなー」って人は、まずは気楽にウォーキングからスタートするのは十分にありでしょう。
ちなみに、日本における「運動の推奨量」(R)は実はWHOのガイドラインよりも多くて、
- ウォーキングぐらいの身体活動を毎日 60 分やろう!(歩数だとと 8,000〜9,000 歩/日ぐらい)
みたいになってたりします。なんとアメリカの推奨レベルの2倍でして、これはもともと日本人が欧米人よりも運動量が多いからだとされてるんですよね。上記の観察研究はあくまでアメリカの話なんで、日本人としてはやはり1日8,000〜9,000 歩ぐらいは歩いておくのがいいかもしれませんねー。