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お酒を飲んでも運動による体型改善の効果は消えないの?って問題を調べた実験の話

 

アルコールは筋肉の発達に良くない!という説は昔からあるわけです。というのも、アルコールには筋肉のタンパク質合成を抑える働きがあるんで、飲み過ぎるとせっかくのメリットが消えちゃうかもしれないんですよ。

 

 

とはいえ、「運動のために禁酒だ!」ってアドバイスは酒好きな人には辛いでしょうから、ある程度の妥協ラインは必要になってくるでしょう。新しく出た研究(R)では、「適度な酒はどこまでトレーニングに良くないのか?」ってあたりを検証してくれておりました。

 

 

これはグラナダ大学などの調査で、まず研究の狙いを簡単に引用すると、

 

高強度インターバルトレーニング(HIIT)は、体型を改善するための効率が良いテクニックとして推奨されている。しかし、同時に活動的はビールを飲むのが好きな傾向があり、おかげでHIITの効果が妨げられてしまう可能性がある。

 

みたいになります。このブログでは、かねてから「HIITは時間の効率がいいよー。体型も改善しやすいかもよー」みたいな話を書いてきましたが、果たしてその効果は酒を飲んでも保たれるのか?って疑問ですね。

 

 

ってことこで、研究チームは24±6歳の健康な男女72人を集めて、以下のようなチーム分けをしたそうな。

 

  1. HIITトレーニングをしつつビールを飲む
  2. HIITトレーニングをしつつウォッカを飲む
  3. HIITトレーニングをしつつノンアルビールを飲む
  4. HIITトレーニングをしつつ炭酸水を飲む
  5. トレーニングをしない

 

ドリンクを飲むグループは、月曜日から金曜日まで、男性は昼食時と夕食時にそれぞれ330mLを摂取し、女性は夕食時にのみ330mLを摂取したとのこと。エタノールに換算すると、男性は1日24~36gで女性は12~24gぐらいなんで、だいたい1日1〜3杯ぐらいの酒に相当しますかね。ほぼ健康には影響しないレベルといっていいっすな。

 

 

またトレーニングの回数は週2日で、週あたりのトータルは40〜65分。RPEで8ぐらいの強度を目指して、ニーアップやらスクワットやらバーピーなどの種目をサーキット形式でやるタイプのHIITを採用したらしい。

 

 

体組成の変化については二重X線吸収法(DXA)を使ってまして、体重はもちろん内臓脂肪率や筋肉もわりと正確に測定されてるのがいい感じです。それでは、10週間後にどんな結果が見られたかと言いますと、

 

  • トレーニングをしたすべてのグループで、脂肪量の有意な減少と除脂肪量の増加が見られた
  • 酒を飲もうが飲むまいが、体重、ウエストサイズ、ウエストとヒップ比、内臓脂肪、骨密度に目立った違いはみられなかった
  • ただし、内臓脂肪については、ノンアルコールビールと炭酸水グループのみ減少が見られた(ただし有意差ではない)

 

みたいな感じです。つまり、ビールでもウォッカでも、1日1〜4杯程度であればHIITによる体型の改善効果には悪影響が出ないのではないか、と。

 

 

 

まぁ例によってこの実験にも難点はありまして、

 

  • ただでさえ参加者が少ないのに5グループにも分けちゃってるので、意味がある違いを確認できなかったのかも
  • 10週間っていう実験期間では、体組成の変化が起きるには十分じゃないのかも
  • ラボの外での食事や運動の記録が取られてないので、そこらへんで違いが出たかも

 

といったあたりは判断が難しいところっすね。もしかしたら、追試ではひっくり返るかもなーという感じもしております。

 

 

もっとも、アルコールと体組成については過去にも良い感じの系統的レビュー(R)は出ていて、これによると、

 

  • 1日に4杯以上も飲まない限りは体重には影響を与えない
  • 1日1〜2杯ぐらいであれば逆に体重の増加を防ぐかもしれない(特に赤ワインの効果が大きい)

 

なんて結果が出てたりしますからねぇ。その点で今回のデータは先行研究とも整合が取れてるんで、おそらく適度な酒ならHIITの効果には影響がないんだろうなぁってのが個人的な印象ですかね。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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