アルギニンで身体能力が上がりまくる!ってメタ分析が出たが、いまいち乗り切れなかった話
「アルギニンには効果があるのか?」ってのを調べたメタ分析(R)が出ておりました。アルギニンはスポーツ界で有名なアミノ酸の一種で、昔から筋トレやランニングのパフォーマンスを上げてくれると言われてるんですね。
が、その作用については意見がバラバラだったりして、どうにも判断がしづらいとこでもあったりします。このブログでも「成長ホルモンに効くとは思えない」や「一酸化窒素に効くかねぇ」といった話をとりあげてまいりました。難しいとこっすねぇ。
というわけでチームは、アルギニンに関する過去の研究から18件をピックアップ。合計の参加者は394人で、そのうちの大半はアスリートだったそうな。
では、いきなり結論からまとめちゃうと、こんな感じです。
- アルギニンは嫌気性の運動(筋トレとかスプリントとか)のパフォーマンスを有意に向上させる(効果量0.24)
- ついでに有酸素運動(ランニングとか水泳とか)のパフォーマンスも有意に向上させる(効果量0.84)
ざっくり言えば「アルギニンはかなりスポーツに効く!」って結論でして、この数値だけ見ると「サプリを買う価値がある!」と思っちゃうわけです。
というわけで結論だけ見た段階ではちょっと盛り上がったんですが、確認のためにデータを見直していたら「うーん、これはちょっと判断できんな……」って気にもなってきております。それと申しますのも、正直なところ、この分析にはいくつかの問題点がありまして、
- いくつかの研究結果が4倍カウントされてるのに、数値を調整してるように見えない(つまり、有酸素運動の効果が4倍ぐらい大きく出てる可能性がある)
- 異なる効果量を同じものとしてあつかっているように思える(これは結構な問題)
- 分析に使われた研究に「これって運動のパフォーマンスが向上したと言っていいのか?」と思われるものが入ってる(具体的には、運動後に心拍数がスムーズに戻るかどうかを指標にしている)
- ある研究では、アルギニンと一緒にピペリンも使っており、正確な効果をねじ曲げてるように思われれる
みたいな感じなんですよね。全体的に見て「メタ分析としてはヤバくないか?」って雰囲気がプンプンでして、どこまで信じて良いものやら…って印象になるのが普通ではないか、と
また別の視点として、今回のメタ分析が過去の知見とあまりにも食い違ってるのも気になるところです。例えば、
- 一酸化窒素に関する2012年の系統的レビュー(R)では、「どうもアルギニンの効果はパッとしない」って結論になっている
- 国際スポーツ栄養学会議のアナウンスでも、「大半のアルギニン研究はスポーツのパフォーマンスアップ効果を否定している」と結論づけている(R)
といったあたりは割と強力な反論になっていて、ここらへんの不整合さを思うと、気軽に「アルギニンを飲もうぜ!」とは言いづらいところがありますな。
もちろん、今回のメタ分析で出た数値を信じて使ってみるのも一興ではありますが、個人的には「まだステイだ!」ってのが結論ですかねぇ。おそらく現時点ではシトルリンの方がまだ見込みがあると思いますんで、「体内の一酸化窒素を増やすぞ!」って方はこちらを試す方がいいかな。