アルギニンとシトルリンで筋トレがガンガンはかどる!ってどこまで本当?
一酸化窒素にかんするご質問をいただきました。
よく一酸化窒素がスポーツにいいという話を書いてますよね?そこで質問なのですが、筋トレ好きな私の友人がアルギニンやシトルリンなどを飲んで「一酸化窒素が出るから筋肉にいいんだ」と言います。これは本当に正しいのでしょうか?
ということで、果たしてアルギニンやシトルリンは筋トレに使えるのか、と。
一酸化窒素でスポーツのパフォーマンスは上がるが…
ご質問者さんがおっしゃるとおり、「パレオな男」では一酸化窒素をよく持ち上げていて、
などの話を書いております。一酸化窒素が有酸素運動のパフォーマンスを高めるってデータは結構多いんですよね。
軽くおさらいすると一酸化窒素はガスの一種で、血管をひろげる働きを持った物質です。血管がひろがるってことは、
- 栄養が全身にいきわたりやすい
- 酸素も体のすみずみまで届きやすくなる
という話になるもんですから、「筋トレにいいのでは?」みたいな発想が出るのも当然の話。そんなわけで、一部の筋トレ界隈では「クレアチンなみに使えるかも!」とか言われてたりするんですよね。
ただし一酸化窒素のサプリはない
ただ、一酸化窒素のサプリは存在しないので、クレアチンほど使い勝手がよくないのが難点。当然ながら一酸化窒素はガスなんでパッケージングできないし、半減期も激しく短いもんですから(だいたい1〜2秒ぐらい)。
なので、一酸化窒素のメリットを得ようと思ったら、ほかの成分からコンバートする必要が出てくるわけです。そこで、よく言われるのがアルギニンとシトルリンの2つだったりするんですな。
アルギニンって、どうよ?
さて、まずはアルギニンですけど、これについては以前のエントリでは「成長ホルモンは持続しないよねー」みたい結論を書いております。いまも筋トレ好きには人気のサプリながら、個人的にはオススメしておりません。
さらに、一酸化窒素へのコンバートも望みがなさそうでして、2008年の研究(R)なんかを見てると、どうやらアルギニンってのはかなーり「バイオアベイラビリティ」が低いってことがわかってきたんですよ。つまり、せっかくアルギニンを飲んでもうまく体内をめぐらないので、ほとんど一酸化窒素にはなってくれないわけなんですな。いやー、困ったもんです。
ってことで、とりあえずアルギニンについては、筋トレ用に使うのは筋悪じゃないかと思っております。
シトルリンは筋トレに効くの?
続いてシトルリンでですが、こちらはスイカなんかによく入ってるアミノ酸の一種で、「パレオな男」では「筋肉痛に効くかも?」って文脈で取り上げたことがありました。
この成分も体内で一酸化窒素に変わる性質を持ってるんですが、アルギニンよりも優秀な性質がありまして、
- バイオアベイラビリティが高い(=一酸化窒素になりやすい)
- 体内のアンモニアを取り除くサイクルを促進する(=疲労感が取りやすい)
- 理論上はATPの産生に役立つので、運動のパフォーマンスが上がるかも(ATPは体内のエネルギー源)
といったあたりは、かなりいいんじゃないかと。
ただし、現時点でシトルリンが筋トレに使えるの?と聞かれれば、「うーん、試してもいいけどそこまで期待しないでね!」ぐらいのことしか言えないっすね。というのも、シトルリンが筋トレに効くかどうかを調べたデータって相反するものが多くて、ハッキリしたことが言いづらいんですよね。
詳細にふみこむのは避けますが、
ってな良い結果が出てるいっぽうで、2018年に出た2つの論文(R,R)だと「シトルリンを飲んでも筋トレには無意味だ!」って結論になってるもんですから。うーん、難しい。
また、いくつかの実験では効果量も出してくれてるんですけど、0以下(まったく無意味)と断定したものもあれば、0.5以上(そこそこの効果)と報告したものもあって、やはり謎は深まるばかりであります。まぁ、おそらく「いちおうの違いは出るんだろうけど、飲む意味があるかは怪しいレベル」ぐらいに落ち着きそうな気がしますが。
まとめ
ってことで、現段階で筋トレ用に飲むならシトルリンでしょうけど、積極的にはオススメしないです。それでも筋トレにシトルリンを使いたい時は、
- 筋トレの40〜120分前に1回8gを飲む
ぐらいの使い方でOKだと思います。どうぞよしなに〜。