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「筋肉量アップ用のトレーニング」と「筋力アップ用のトレーニング」はどう使うのが正しいのか?問題

 

筋肉を増やすために役立つものって何?って問題については、このブログでもいろいろと取り上げて参りましたが、既存の文献を全体的にまとめると、

 

  • ただし、同じボリュームでも、1セット内の負荷が軽めで回数が多いほど筋肉量は増えやすい
  • 逆に、1セット内の負荷が重めで回数が少ないほど筋力は増えやすい

 

といったことは言えるでしょうね。ただ、上にあげた筋肉量と筋力の関係性はあくまで一般論で、まだまだ調査の余地はあるよなーって感じではありました。

 

そこで、新しいテスト(R)では、一般に言われる「筋肉量アップ用のトレーニング」と「筋力アップ用のトレーニング」はどこまで差が出るものなのか?ってのを調べてくれててためになりました。

 

 

まずは実験のデザインを簡単に紹介すると、

 

  1. 参加者は26名の若い男性で、筋トレの経験が平均5年以上で、バックスクワットの1RMが体重の1.5倍以上の人を選んだ(つまり、結構な筋トレスキルがある人だけを選んだわけっすね)

  2. 研究期間は8週間で、全員に週2の筋トレを指示

  3. 参加者の半分には「筋肉量アップ用のトレーニング」をやってもらい、残り半分には「筋力アップ用のトレーニング」をやってもらう

 

みたいになってます。この手の実験って、だいたい筋トレの初心者を対象にするケースが多いので、ここまでゴリゴリの筋トレ経験者を集めただけでも貴重な感じがしますね。

 

 

で、ここで採用された筋トレの内容は、以下のような感じです。

 

  • 筋肉量アップ用のトレーニング:バックスクワットとレッグプレスを1セット8~12回の範囲で4セット。セット間の休憩は1分で、トレーニング間の休憩は5分

  • 筋力アップ用のトレーニング:1〜3週目はバックスクワットとレッグプレスを1セット1~3回の範囲で4セット。4~8週目は4セット×8~12RM。セット間の休憩は1分で、トレーニング間の休憩は5分

 

ってことで、筋肉量アップグループのほうが軽めの負荷を使い、筋力アップグループは重めの負荷を使っております。参加者が指定の負荷をこなせなかった場合は重さを調整したらしいんですが、どうやって適切な負荷を判断したのかは書いてないので謎。

 

 

それでは、結果を見てみましょうー。

 

  • トレーニング負荷とボリュームの違い:1~3週目の時点では、各運動の負荷は筋力トレーニンググループの方が大きかった、4~8週目には有意差がなかった。8週間でのボリュームを比べると、どの運動でも筋肉量トレーニンググループの方が高かった(レッグプレスで146659 vs 109330ぐらいの差)

 

  • 筋肉量の違い:最終的な太ももの筋肉の増え方は、筋力トレーニンググループのほうが大きかった(6.2% vs 4.4%)

 

  • 筋力の違い:最終的なレッグプレスとバックスクワットの1RMの増加率は、筋力トレーニンググループのほうが大きかった。バックスクワットで20.7% vs 13.7% 。レッグスクワットで14.3% vs 9.5%

 

ということで、この結果を素直に受け止めるならば、

 

  • まず3週間ぐらい筋力に特化したトレーニングをやる → それから5週間ぐらい筋肉量に特化したトレーニングをやると、最終的にはよりよい結果が得られるのでは?

 

って感じになりますね。うーん、どうなんでしょう。

 

 

ただ、数値を細かく見ると判断がムズい点もありまして、

 

  • 筋力トレーニンググループは3週目までの変化が0.2mmしかないので、これを重く見るのはどうかなーって気がする(いちおう統計的には有意だけども)

  • 参加者の変化にバラつきがほとんどなさすぎるのも怪しい
  • データの補正を行なって偶然の発生率を減らすと、グループ間の有意差はなくなる
  • 筋肉量アップ用のトレーニングで、セット間の休憩を1分しかとってないので、これが不利に働いてる気もする(普通は2〜3分ぐらいは欲しい)

 

ってのは注意したいとこっすね。ざっくり言うと「グループ間に差があるとしても数値が小さすぎて微妙」って感じなもんですから。

 

 

そんなわけで、過去のデータもふまえてまとめると、個人的な感想はこんな感じです。

 

  • 負荷がめちゃくちゃ重くて1セットあたりのレップ数が少ないトレーニングを行なっても、やっぱり筋肉の成長を最大化させることはできないっぽい。これは従来のデータでも支持されてる

 

  • 筋力アップ用トレーニング→筋肉量アップ用トレーニングに切り替えることで、なんらかのメリットが得られるかはまだ謎。ただし、定期的にトレーニングの内容を変えるとモチベーションは上がるので、試してみてもいいかも

 

  • 1RMが20%以上を超えた状態で十分な量のトレーニングをしている限り、筋肉の量は普通に増える。これは大半のデータで支持されてるんで、最終的にはこのポイントだけは外さないようにしたい

 

ってことで個人的には、筋力トレと筋肉量トレを定期的に切り替えるのもいいかなーとは思っております。それで目立ったメリットが得られるかは謎ですけど、まぁ長い人生なんでいろいろ試すのもいいんじゃないかと。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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