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冬のマインドフルネス祭り:プラーナヤマの効果、瞑想リトリート、マインドフル+アート


  

マインドフルネスは人気のわりに真っ当な研究が少ない!ってのはつねづね思ってることですけど、相変わらずいろんなデータが出ております。ってことで、ここ数ヶ月で出てきたなかから、いくつか見つくろってみました。

 

 

4週間の呼吸トレーニングで脳がポジティブに?

4週間のプラーナヤマで感情コントロールが上手くなる!」みたいな話(R)が出ておりました。プラーナヤマはヨガの呼吸法で、たとえば前に取り上げた「片鼻呼吸法」なんかもその一種。その他の代表的なものは「7つの呼吸法」にまとめてますんで、合わせてご参照ください。

 

 

で、このテストでは平均年齢25歳の若者30人を集めて、

 

  1. 5日間のプラーナヤマトレーニングに参加し、その後、通常のプラーナヤマの練習を4週間行う
  2. クロスワードやカードゲームなど、呼吸法とは無関係な活動に参加

 

って2つのグループに分けたとのこと。プラーナヤマの練習は1回30分の指導付きトレーニングを週3回。自宅練習を週2回ずつ行なったらしい。

 

 

でもって全員に感情コントロールテストをしつつ、その際の脳をfMRIで調べたら、プラーナヤマを練習したグループにのみこんな変化が出ておりました。

 

  • 不安などのネガティブな感情が減り、逆にポジティブな感情は増加
  • 扁桃体、前帯状皮質など、感情のコントロールに関わる脳のエリアが変わった

 

周知のとおり扁桃体は感情コントロールに大きく関わる脳のエリアで、ここが変わったおかげでネガティブな感情がわきにくくなったらしい。

 

 

研究チームいわく、

 

昔から、瞑想を行うと、感情的な刺激に対する扁桃体の活動が低下することがよく知られてきた。これは島皮質、ACC、視床への変化によるものだと考えられる。

 

したがって、瞑想やプラナヤーマなどの実践で脳の変化が観察されるのは、感情調節のボトムアップモデルにより適合しているように思われる。

 

とのこと。これまでも瞑想や呼吸法で脳が変わるって話はあったものの、またひとつ新たな知見が加わった感じですかねー。難しい話はさておき、呼吸法などで脳に良い影響があるなら試してみてもいいんじゃないでしょうか?

 

 

瞑想リトリートで注意力がアップしまくる?

まずは「瞑想リトリートで注意力が上がる!……かも?」みたいなお話(R)です。瞑想リトリートってのは、一定の期間だけ人里離れた場所で瞑想のトレーニングを行うことで、いわばマインドフルの集中合宿みたいなやつです。自宅でコツコツやるのもいいんだけど、集中的にやったほうが効果は得やすいのでは?と考えられてるんですね。

 

 

で、これがどんな実験だったかと言うと、

 

  1. 60人の参加者のうち半分を3ヶ月間の瞑想リトリートに出席させる

  2. 残り半分は瞑想リトリートには参加しない

  3. 全員に注意力テストを行い、さらに血液サンプルで体内の炎症レベルも調べる(要するに、免疫システムがどうなったかを見てる)

 

みたいになってます。リトリート中、参加者は1日に約6時間ずつサマタ瞑想を行なったそうで、いわゆる呼吸に集中し続けるタイプのトレーニングっすね。これを6時間ってのは、なかなかハードですな。

 

 

その結果はと言いますと、

 

  • リトリートをしたグループは、注意力を特定のものごとに維持する力が上がった!
  • 体内の炎症は注意力の悪化と相関していた


 って感じだったそうです。もともとサマタは特定のものに注意を向けまくるトレーニングなので、このような結果が出るのは納得な気がしますね。体内の炎症が脳の機能を下げるのも、昔からよく言われてたことですし。

 

 

まー1日6時間も瞑想するのは大変なんで、果たしてそれだけの労力に見合う変化かと言われれば微妙なんですけど、とりあえず今後もコツコツとマインドフルの訓練をするモチベーションにはなりそうっすね。

 

 

マインドフル+アートの組み合わせがメンタルに良いよ!というメタ分析

マインドフルとアートを組み合わせたらいい感じだったよ!ってな話(R)が出ておりました。もともとアートセラピーも心理療法としては定番だったんで、マインドフルと混ぜたらさらに良いのでは?って考えるのは確かにアリっすね。

 

 

研究チームは、「マインドフルネスをベースにしたアートセラピーってどこまで効果あるの?」って疑問を調べるために、系統的レビューで14のデータをまとめて、そのうち9件でメタ分析をしてます。

 

 

各研究の参加者は1人(症例研究)〜114人のあいだで、大多数はがん患者だったとのこと。合計9件の研究が同じアートセラピーを使ってて、だいたい週2時間のセッションを8週間にわたって行ったそうな。セラピーの内容は、自由にお絵描きしたり詩を書いたりといった作業を、それぞれを瞑想のように現在を意識しながら行なってく感じです。

 

 

その上で、不安、抑うつ、幸福感などの変化を調べたところ、

 

  • マインドフルネスベースなアートセラピーは、参加者の疲労、不安、抑うつの症状を減少させた
  • 9件の研究では、アートセラピーは心理的・身体的症状の改善に効果的だったが、怒りの感情や社会的適応には大きな影響を与えなかった

 

というわけで、マインドフルなお絵かきなどのアート活動は、ヒトのメンタルを改善してくれたらしい。基本的に癌の患者さんをベースにしてるんで、その他のコンディションでも同じ効果が得られるかは謎ですが、おそらく誰にとっても有用なんじゃないかなーとは思いますね。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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