「ノートPC vs. 手書き」本当に勉強に役立つのはどっちだ!問題が混迷してきた件
世の中には「PCより手書きが良い!」って説があるわけです。この考え方を広めたのは2014年の研究で、ラップトップと手書きのどちらかでメモを取ってもらったら、手書きのほうが正解率が高かったと言うんですね。
これはかなり話題を読んだ論文で、引用数が1,100回を超えてるレベル。これをもとにアメリカでは「勉強は手書きで!」という風潮が強くなったとか。
が、このたびタフツ大学が新たに上記実験の追試(R)をしまして、
- 紙とペンでメモを取った参加者は、ノートパソコンを使った参加者よりも成績が悪かった!
って真逆の結果が出ちゃったんですよ。ええーー!
これがどんなテストだったかと言いますと、以下のようになります。
- 142人の大学生を集める
- 約15分のTED講演5本のうち1本を見てもらい、要点をメモするように指示する
- その際に、「ノートパソコン」と「紙とペン」のどちらかでメモを取ってもらう
- 30分後にTED講演の内容に関するクイズに答えてもらう
というわけで、オリジナルの研究とほぼ同じ実験デザインですね。
で、その結果がどうだったかと申しますと、
- 話の内容を思い出すことに関しては、どちらのグループも同じような結果だった
- 講演で提示された概念を思い出す際には、ノートパソコンを使った参加者のほうが優秀だった
ってことで、完全にオリジナルの実験と逆の結果になっております。うーん、びっくり。
まぁ追試で逆の結果が出てしまうのは心理学研究の華ってことで、研究チームは過去の類似試験から8件を選んでミニメタ分析もやってます。なかなか徹底してていいっすね。
でもってこちらの結果がどうだったかと言いますと、
- 手書きの方がデジタルより有利だという証拠は得られなかった
だったそうです。いよいよ事態が混迷してまいりましたね。
もちろん、そもそもの実験デザインがどうなの?って問題もありまして、
- TEDの講演みたいな短いものだと、現実の勉強には当てはまらなくないか?
- 講演を見てから小テストを受けるまでの時間が30分しかないのって短すぎないか?
ってなポイントは気になるところでしょう。ここらへんを考えると、最終的な結論はまだまだ先かも知んないですな。
では、私がこの問題についてどう思っているかと言いますと、実は2014年に書いたこととあんま変わってなかったりします。引用しておくと、
データを見てみると、「ラップトップを使った場合でも、学んだ内容を自分の言葉に変換して書いた人は、ちゃんと理解力も上がったなんて傾向も出てたりします。そう考えると、デジタルかアナログかというよりは、「自分の頭を使って勉強したかどうか?」の方が大事なのだろうと思うわけですが。
みたいな感じです。正直、追試で違う結論が出た理由はよくわからんのですが、
- 学んだ内容をそのまま書き残すのではなくて、自分なりの言葉に変えて書き直さないと頭には定着しない
ってポイントだけはわりと先行研究でも一致してまして、この点さえ押さえておけば媒体は関係ないかもなーとか思うんですよね。まだまだ謎が多い分野ではありますが、とりあえず現時点ではそんなとこで。