筋トレだけで内臓脂肪は減るのか?って問題を調べたメタ分析の話
「内臓脂肪を減らすには有酸素運動が効く」ってのはよく知られた事実なんですけど、「筋トレには効果がなさそうだよなー」ってのが最近までの風潮だったんですよ。というのも、2012年のメタ分析(R)では、「筋トレをしても内臓脂肪は減らないのでは?」って結論になってたもんですから。
が、近ごろ「本当に筋トレって内臓脂肪には無意味なの?」って問題を調べ直したデータ(R)が出まして、テヘラン大学などのチームが新たなメタ分析を行ってくれてました。
なんで新たにメタ分析をやり直したかと言いますと、20121年のメタ分析に「データ選びが甘くないか?」って疑義が出てたからです。なぜなら、かつてのメタ分析では、「カロリー制限の有無にかかわらず筋トレの効果をチェックしていた」って問題があったため、筋トレの正味な効果がわかりづらかったんですよ。結局のところ、内臓脂肪を減らすためにはカロリー制限が一番ですからね。
では、ってことで著者たちは過去の研究から34件をピックアップして、新たなメタ分析を実施。そのデータの内訳をざっくりとまとめておきますと、
- 参加者は合計2,285名
- 全体のうち、13件は「筋トレ+カロリー制限」と「カロリー制限のみ」の比較、22件は「筋トレ」と「カロリー制限なし」の比較をしていた
- 実験の期間は2カ月から24カ月
- カロリー制限を行った研究では、1日の摂取カロリーを250〜1000kcalぐらい減らしたものがあれば、全員に1日800kcalの食事を続けさせたものもあった
- 筋トレの回数は週に2〜7日であったが、週に3回のトレーニングが圧倒的に多かった(34件中25件)
みたいになってます。過去の研究に比べるとだいぶセレクションが厳密になってまして、より確からしい結論が出せてるんじゃないでしょうか。
そこで、分析の結果なにがわかったかと言いますと、
- カロリー制限を行っていない場合、筋トレだけでも内臓脂肪は減ることがわかった
- その差は統計的に非常に有意であり(p < 0.001)、データのバラつきも低かった(I2 = 4.17%; p = 0.40)
- ただし、その効果量は小さめ(d = 0.24)
- サブ解析でも、肥満の人と標準体型の人、中高年の人のいずれにおいても、筋トレで内臓脂肪が減る効果が示された(d = 0.18-0.32)
- 筋トレ+カロリー制限をカロリー制限のみと比較した場合、内臓脂肪を減らす効果に目立った差はなかったが(p = 0.09)、有意ではない結果ではカロリー制限のみの方が有利だった(d = 0.23)
といった感じっすね。全体的に見れば、あくまで効果は控えめながら、筋トレだけでもそれなりに内臓脂肪は減るよーって感じですね。
まぁ「内臓脂肪を減らしたい!」と思ったら、「有酸素運動+カロリー制限」の組み合わせがおそらくベストなんで、その点はご注意ください。多分、すでにカロリー制限をやってる方が、そこに筋トレを追加したところで、内臓脂肪の減少スピードは増えることも減ることもないかと思われます。
また、カロリーを制限をしていない状況では、筋トレよりも有酸素運動の方が内臓脂肪の減少に役立つはずなんで、こちらもご注意くださいませ。カロリー制限がなくとも筋トレだけで内臓脂肪量は減るものの、あくまで補助的な役割に使うのが良さそうっすね。
いずれにせよ、内臓脂肪が多いと心臓病リスクは増えるし、糖尿病にもかかりやすいし、いろんな癌の危険も高まりまし、死亡率がガンガンに高くなっちゃうんで、ぜひ対策をしといてくださいませ。どうぞよしなに。