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自分で自分を動かす「セルフナッジ」を使いこなす4つのパターンとか



ナッジ」って言葉が広まってだいぶ経ちまして、実際の政策に取り入れる国も増えてきた昨今でございます。ナッジってのは、人間に強制せずに自発的に望ましい行動を取らせる手法のことで、日本の政府にも専門の機関が存在してたりします。

 

で、新しくヘルシンキ大学などのチームが出したレビュー(R)では、

 

  • ナッジもいいけど”セルフナッジ”についても考えようぜ!

 

って提案をしてておもしろかったです。セルフナッジは名前のとおり「自分で自分の意思決定の環境をデザインして、努力せずに良い行動を取るようにしよう!」って発想で、政府みたいに大きな力を借りずに自分でナッジするわけっすね。

 

 

というと難しい印象があるかもですが、「お菓子を戸棚の奥にしまって取りにくくする」とか「ランニングシューズを取りやすい位置に置いて運動しやすく」とか「給料の10%を自動的に投資に回す」ぐらいのことなら誰でもやってるはず。こういった、ちょっとした工夫もセルフナッジの範囲です。

 

 

で、研究チームは、過去のナッジ系の研究をまとめて、「効果的なセルフナッジにはどのような種類があるのか?」をピックアップしてくれたんですよ。具体的には、大きく4つのカテゴリーでセルフナッジをまとめてます。

 

 

 

セルフナッジの基本1. リマインダーとプロンプト

ドアに「卵を買う」と貼っておいたり、ToDoリストを書いて更新したり、スマホで友人の誕生日を通知してもらったりといった手法の総称で、チームいわく「多くの人がもっとも直感的に使うセルフナッジ」とのこと。いわば「自分へのメモ」ですな。

 

 

研究チームが挙げている例としては、

 

例えば、自分の食生活が環境に与える影響を心配している人がいるとしよう。この人物は、肉や乳製品が環境に与える影響の大きさを認識しているが、同時に食生活を変える難しさも感じている。

 

そこで、この人物が、「温室効果ガスの排出量のイラスト」を冷蔵庫に貼り付けて自分の目標を思い出させれば、それはセルフナッジと言える。

 

みたいな言及がありました。そう考えると、このブログで取り上げた「連想リマインダー」なんかも、立派なセルフナッジっすね。

 

 

 

セルフナッジの基本2. セルフフレーミング

セルフフレーミングは、自分がやるべき行為のとらえかたを変える手法です。「トムソーヤーの冒険」で、フェンスを白く塗るという雑用のことを、トムが「男の子にとって毎日フェンスを塗るのは特権だ!」と考え直したところ、その友人たちが自発的に働くようになったみたいな話がありましたけど、これがまさにフレーミングの代表的な事例っすね。

 

 

トムの事例ではフレーミングで他人を誘導してますが、自分自身を誘導するためにも使えまして、

 

  • ジョギングに出るか?それともベッドで寝ているか?で迷った場合は、「運動はキツい労働ではなく、脳内麻薬をドバドバ出す楽しい行為だ!」と考え直す

 

  • 寄付をしたいが貯金を減らしたくない思った場合は、過去に偶然に稼いだお金(宝くじとか誰かからもらったとか)のことを思い出し、「この寄付には、あの時のあぶく銭を使うのだ!」と考え直す

 

みたいな感じになります。ものごとを都合がいいように捉え直すのは、慣れるまではちょっと難しいんですけど、うまくフレーミングできれば効果は大きいっすね。

 

 

 

セルフナッジの基本3. アクセス性を変える

難しそうな表現ですけど、要するに「やりたくないことは難しくする、やりたいことは簡単にする」って考え方です。上述した「お菓子を戸棚の奥に置く」なんてのは典型的だし、逆に「果物や野菜などは目線の高さに配置して意識しやすくする」なんてのも定番のやり方っすね。

 

 

考え方としては、なにか自分の行動を変えたい場面があったときは、

 

  • やっちゃダメなこと=もっと不便にすることはできないか? もっと摩擦を大きくする方法はないか?と考える
  • もっとやりたいこと=もっと手軽にはできないか? 自分のモチベーションを下げる摩擦は何か? それを取り除く方法は? と考える

 

みたいになりますね。個人的には、うまくアクセス性を設定できれば、こいつが最も強力な考え方だと思っております。

 

 

 

セルフナッジの基本4社会的比較

人間は自動的に自分と他人を比べてしまう生き物でして、この傾向を前向きに使うのが「社会的比較」です。例えば、定期的に運動したい人は、

 

  • 公の場で同僚に「俺は運動するぞ!」と約束をする

  • 運動をしなかった場合にペナルティを執行する人(「コミットメント・レフリー」を任命する)

  • 健康的な生活を送っている同僚や友人を選び、その人物を比較対象として使う

 

といったあたりが考えられますね。これについては、個人的には「一緒に運動する仲間を探す」が最強だと思いますが、「なんか比較を使えないか?」と考えてみるのは有効でしょうね。

 

 

 

ってことで、セルフナッジの基本を4つにまとめてみました。セルフナッジはいろんなパターンを組み合わせた方が効果が大きいので、

 

  1. まずは今の自分がどのパターンを使っているか?を考える(リマインダーか?フレーミングか?みたいな)

  2. 上記のリストを見つつ、ほ「他のパターンのセルフナッジを使うとすれば、どんな方法が考えられるだろう?」と考えてみる

 

みたいに今回の知見を使ってみると良いのではないでしょうかー。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。