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今週末の小ネタ:睡眠をブーストする運動タイミング、左利きは頭が良い説、身長が高いと認知症リスクが下がる?

Summary


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

睡眠をブーストする運動タイミング

運動の効果を最大限に発揮するにはタイミングが大事! ってのは皆さまご承知のことと思いますが、新しいメタ分析(R)だと「睡眠の質を上げたきゃ夜に運動だ!」って結論になってておもしろかったです。

 

 

これはコンコルディア大学などの研究で、

 

  • 座り仕事をしており、なおかつ健康で睡眠に問題がない人たち(18~50歳)が対象
  • 就寝前に行われる定期的な運動によって、睡眠の質が変わるかどうかを調べた研究をピックアップ
  • 過去15件の研究から合計194名のデータをまとめる

 

みたいになってます。一般には寝る前の運動によって眠りにくくなると言われてるんで、それが本当かどうかをチェックしてくれたのはありがたいですねー。

 

 

で、分析の結果がどうだったかと言いますと、

 

  • 就寝の2時間前に運動を終えると、眠りやすくなったり、睡眠時間が伸びたりなど、睡眠に良い影響がある

 

  • 就寝の2時間前よりも後に運動を終えると、入眠までの時間が長くなり、睡眠時間も短くなった

 

ということで、眠る2時間前の運動であれば、睡眠に悪影響がないどころか、逆に睡眠の質を上げてくれるんだそうな。うーん、すばらしい。

 

 

また、この分析では他の知見も得られてまして、

 

  • 夜の早い時間帯(午後6時から9時の間)に高強度の運動を行うと、すべての被験者で入眠が促進され、睡眠時間もある程度まで改善された

 

  • ただし、高強度の運動を行った場合は、時間帯にかかわらずREM睡眠の量がわずかに減った(おそらく悪影響はなさそうですが)

 

  • 睡眠の改善にもっとも効果的な運動はサイクリングだった

 

といったあたりは非常に参考になりますね。個人的には「サイクリングがベスト」って見解ははじめて見たので、これから試してみようかなーとか思いました。とりあえず、今後は午後6時ぐらいにエアロバイクで運動してみるか……。

 

 

 

左利きは頭がいいのか?問題

「左利き」といえば、過去に「右利きよりも年収が低いのでは?」みたいな話がありましたが、今度は左利きに有利なデータ(R)が出ておりました。こちらは6歳から17歳までの右利きと左利きの2,300人以上の学生を対象にした研究で、おおよそのデザインをまとめておくと、

 

  1. 参加者たちに数学的リテラシーを評価するためのいろんなテストをやってもらう

  2. これを一般的な成績とくらべる

 

みたいになってます。全体で5つの実験が行われてまして、すべてで「左利きは数学が得意なのか?」ってところを調べたんだそうな。

 

 

すると、いずれの実験でも結果は明白でして、

 

  • 複雑な数学の問題を解く場合には。左利きの学生が右利きの参加者を劇的に上回った

 

だったらしい。なんだか不思議な結論ですけど、研究チームの推測によると、左利きの生徒は脳梁(脳の両半球をつなぐ神経線維の束)が大きい可能性を指摘しております。

ふたつの半球の間の接続が強くなることで、(左利きの)被験者はより強い空間能力を持つことが考えられる。数学は空間を通して概念化されることが多いので、空間能力は数学と関連していることがわかっている。

 

これは左利きのせいで日常的にストレスを感じてきた人にはうれしい考え方ですね。

 

 

さらに研究チームは、こうも推測しておられます。

 

利き手は非常に複雑な形質であり、特に左利きは、その原因によって有利にも不利にもなる可能性がある。生まれつき右利きの人の中には、病気のために、あるいは自分の意思で左利きになる人もいます。このような場合、左利きになるために必要なスキルを身につけることで、数学に関連する脳の部分が改善される可能性もある。

 

この考え方がどこまで正しいかは謎ながら、左利きの数学者は数学的な関数とデータを結びつける能力に長けていることがわかったそうで、とにかく左利きと数学能力には一定の関係があるのかもですな。つまり、情報をリアルタイムに再構成する能力が高いってことでして、ちょっとおもしろいですね。

 

 

 

若い頃に身長が高いと認知症リスクが下がるかもよー

若年期に身長が高い男性は、老年期の認知症のリスクが低いのでは?」というデータ(R)が出てまして、低身長に悩むわたしはまたもや気落ちさせられたわけです(泣

 

 

こちらはデンマーク・コペンハーゲン大学などの調査でして、

 

  1. 約7万人と7,388人の双子を含む66万6,000人以上のデンマーク人男性のデータを分析

  2. 人生の後半に認知症を発症した男性10,599人を調べ、身長と関わりがあるのかどうかを見る

 

って感じになってます。果たして、身長と認知症の関係は存在するのか?ってことですね。

 

 

それでは、結果を見てみましょうー。

 

  • 全世界の男性の平均身長(171cm)以上の人は、身長が6cm上がるごとに、認知症になるリスクが10%ほど減少していた


だったそうです。過去の研究でも、「身長って認知症のリスク要因なんじゃないの?」とは言われていたんですが、わりとハッキリした相関が確認されたわけですね。つらい。

 

 

ちなみに研究チームいわく、

 

今回の研究の大きな強みは、若い男性の認知症リスクにおける教育と知能の潜在的な役割を調整したことだ。その結果をまとめると、若い男性の身長の高さと、人生の後半で認知症にかかるリスクの低さには相関があり、この関連性は、教育水準や知能テストのスコアで調整しても持続することがわかる。

 

とのこと。要するに、高い教育を受けた人でも、知能がもともと高い人でも、背が低いだけで認知症になるリスクは上がるかもしれないんだ、と。つらい。

 

 

このような減少が起きる理由はまだ謎も多いものの、研究チームは「たぶん幼少期の環境になにかがあるのかもなー」と推測しておりました。いったい低身長の環境になにがあるのだろう……。つらい。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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