今週末の小ネタ:MCTオイルの効果、PQQの脳機能アップ効果、質の高い食事と新型コロナ
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
MCTオイルでコレステロールは改善するの?みたいな話
MCTオイルはすごい!みたいな話を耳にしたことがある人は多いかと思います。MCTは中鎖脂肪酸のことで、一般の油よりもすばやく消化吸収されるので太りにくく、さらには血中のコレステロールなどにも良い影響が!などと言われてるんですよ。ケトジェニックダイエットなどでもおなじみっすね。
では、実際のところMCTオイルはどれぐらい意味があるのか?ってことで、そのへんを深掘りしたデータ(R)が出ておりました。
これはMCTオイルに関する過去の7つの試験をメタ分析したもので、だいたい以下のような内容になってます。
- 364名分のデータをまとめて、MCTオイルが血中脂質にどんな影響があるのかを評価した(なのでダイエット効果とかについては調べてない)
- メインのチェック項目は、LDLコレステロール、HDLコレステロール、総コレステロール、中性脂肪など
- 試験は少なくとも2週間行われ、MCTオイルと他の油を比較。7つの試験すべてで、中性脂肪と総コレステロールに関するデータを報告し、6つの試験でLDLコレステロールとHDLコレステロールに関するデータを報告していた
- 3つの試験は健康な人が対象で、残りは2型糖尿病、軽度から中等度のアルツハイマー病患者、ヘリコバクター・ピロリ菌陽性者が対象だった
- 7つの試験は「低リスク」または「若干の懸念あり」に分類された(つまり、データがゆがんで報告されてる可能性は低い)
ということで、メタ分析としては小規模ではありますが、MCTオイルが気になっているような方には貴重なデータじゃないでしょうか。
で、結果をまとめまーす。
- MCTオイルは、中性脂肪を0.14mmol/L(5.41mg/dL)増加させたが、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロールには影響を与えなかった
- サブグループ解析では、MCTオイルは不飽和脂肪酸に比べて総コレステロールとLDLコレステロールが増加し、長鎖脂肪酸に比べてLDLコレステロールをわずかに低下させた
全体的に見てみると、血中コレステロールに関して言えば、MCTオイルは良くも悪くもないかなーって印象ですかね。まとめてみたらそこまでの違いがあるわけでもないんで。
ちなみに、過去のメタ分析とも比べてみると、
- 2018年のメタ分析(R)では、長鎖脂肪酸が多い食事と比べて、MCTが多い食事はHDLコレステロールを増加させ、LDLコレステロール、総コレステロール、中性脂肪には影響がなかった
- 2015年のメタ分析(R)では、MCTはLDLコレステロール、HDLコレステロール、総コレステロール、中性脂肪に影響を与えなかった
みたいになってます。それぞれ微妙な違いはありながらも、まーMCTを使ったからといって血中のコレステロールが目立って改善するようなことはなさそうっすな。
ピロロキノリンキノンで脳の機能はアップするのか?
ピロロキノリンキノンって成分をご存じの方は少ないかもしれません。俗に「物忘れに良い!」などと言われる成分で、動物実験などでは「神経細胞が成長した!」なんて話もありまして、サプリも普通に発売されてたりするんですよ。名前が長すぎて覚えられないので、わたしはPQQと呼んでますが。
が、いまんとこPQQにはまともな人体実験が行われてないんで、実際に脳になんらかの影響があるのかどうかは謎。新たなデータが望まれてた状況だったんですが、「PQQで脳機能が上がるかを確かめたよー」って研究(R)が発表されておりました。
これは12週間のランダム化比較試験で、龍泉堂などのチームが日本の健康な成人を対象にしたもの。「最近もの忘れが増えて……」と自分で思っている男女64名(平均年齢72歳)を対象に、21mgのPQQまたはプラセボを1日1回ずつ飲んでもらったそうな。
でもって、6週間および12週間ぐらいサプリを飲んだ後、いろんなテストでみんなの記憶力、情報処理のスピード、実行機能、忘れっぽさなどを調べたところ、結果はこんなふうになりました。
- 12週間後、PQQを飲んだグループは、プラセボグループに比べて、複合記憶、言語記憶、反応速度、注意力、認知の柔軟性、実行機能などのスコアが上がった
- このうち、注意力、認知の柔軟性、実行機能については、6週間後の時点でもPQQを飲んだグループのほうが良好だった
- PQQのサプリは、プラセボに比べて物忘れを改善した
- また、PQQは血中や尿中のバイオマーカーに影響がなかった(多分、安全性は高い)
というわけで、「おー、意外と良い傾向が出ている!」って感じで、今後の調査に期待が持てそうな気がするわけです。まぁこの試験では、合計で約13項目の認知機能を評価してるんですけど、研究チームは多重比較の調整を行っていないんで、「この結果はもしかしたら偽陽性かもなー」といったあたりは否定できないところです。そこらへんは注意しつつ見守っていきたいところ。
質の高い食事で新型コロナの感染やら重症化リスクが減るかもなー、という
体に悪い食事をしてたら感染症にも弱くなるんだろうなーってのは、なんとなく理解できるとこだと思いますが、そこらへんをちゃんと調べたデータ(R)が出ておりました。
これは約59万の人たちにスマホで調査を行ったもので、みんなに「普段から果物や野菜をどれぐらい食べてるか?」を尋ねた上で、研究のあいだに新型コロナにかかった人たち31,831人をチェックしたんだそうな。その結果をざっくりとまとめると、こんな感じになります。
- 野菜と果物が多い食生活をしている人の上位4分の1に当てはまる人は、下位4分の1の人と比べてCOVID-19の発症リスクが9%低く、重度のCOVID-19の発症リスクは41%低かった
- この結果は、タバコ、運動、年齢、基礎疾患などで調整しても確認された
ということで、もちろんタバコや運動といった要素も重要なんだけど、普段どれぐらい野菜やらなんやらを食べてるかどうかも大事なんだよーって感じですね。
研究チームいわく、
予防接種を受けたり、人混みの中でマスクをすることの重要性はもちろんだが、今回の研究では、食生活に気を配ることでもCOVID-19への感染や重症化のリスクを減らせる可能性を示唆している。
とのこと。そりゃあそうっすよねーって結論ですけども、やっぱ気にしとかないとですなぁ。