ダメな性格を変えるのって意外と簡単なんじゃないか?説
「性格は変えられるのか?」って問題についてはまだ諸説あるわけですが、近ごろは「性格は決して不変ではない!」って見解が増えてきてたりします。なんらかの課題を一定の期間こなし続ければ、狙った性格特性が変わるって報告が多いんですよね。
SMUなどが行った研究(R)もそのひとつで、まずチームはこんなことを言っておられます。
性格を変えるという考え方(特に他人が個人の性格を変えようとするという考え方)は、怖く聞こえるかもしれない。しかし、私たちが認識しているかどうかにかかわらず、社会は私たちの性格特性を変えようとする介入であふれている。
たとえば、代表的な例は小学校だ。この施設は、子供たちがより知的に、より優しく、より社交的に、責任感を持ち、勤勉になるように設計された巨大な介入システムと言える。
ということで、そもそも学校が子供の性格特性を変えるために編み出されたしくみであり、それが一定の成果をあげている以上は、人間の性格は変えられると捉えるのが自然ではないのか、と。言われてみりゃそうですね。
ということで、チームは2つの研究を行って、性格はどこまで変えられるのかをチェックしてくれてます。どちらも実験の期間は4ヶ月でして、
- 1つ目の研究では、175人の大学生が、誠実性と神経症傾向のどちらかを変えるように無作為に割り当てられた。参加者には、その性格特性を改善するためのチャレンジ課題を選んでもらった。たとえば、誠実性の改善グループに選ばれた人には、「机の上を整理してきれいにする」「やりたいことをリストアップする 」といった課題が与えられた。
- 2つ目の実験では、複数の大学に通う400人以上の大学生に、「自分が変えたいと思う性格を選んでね!」と指示。しかし、そのうち半数の参加者には、自分が選ばなかった特性の改善を狙ったチャレンジ課題を無作為に割り当てておく。
みたいになってます。どちらの研究も、事前にみんなのビッグファイブを調べておき、実験の前後で変化が出るかをチェックしたんだそうな(実験で使われた性格テストは44問のフルバージョン)。
でもって、4ヶ月後にどんな結果が得られたのかと言いますと、以下のようになります。
- 誠実性(責任感が強く、勤勉で、組織的に行動する能力)は、参加者が「この性格を変えたい!」と特に思っていなくても、日常的に責任感が必要なタスクをこなし続ければ改善できる。つまり、決められた期間内に一連の課題をこなすことで習慣が変わり、誠実性も向上させることができる。
- しかし、神経症傾向(感情の安定性)はそう簡単にはいかず、参加者が「この性格を変えたい!」と強く願わないと、感情の安定性が高まらず、困難な状況に対処する能力も向上しなかった。
ということで、明確なモチベーションがなくてもコツコツまじめにやれる性格は改善するんだけど、不安になりやすさやトラブルへの弱さについては、本人の強い熱意がないことには改善しないのではないか、と。
なんで感情の安定性の改善には強いモチベーションが必要なのかと言いますと、チームはこんな推測をしておられます。
多くの人にとって、『怒りを感じないようにする』や『ストレスを感じないようにする』というのは難しいことです。
私の直感では、日記を書いたり、ポジティブなことを考えたりといった、感情を変えるための間接的な戦略は、人々がそのテクニックを使って本気で感情を変えようとしたときに初めて効果を発揮するのではないかと思います
人間はネガティブな感情をあつかうのが苦手なので、それだけ神経症傾向の改善には時間がかかるんじゃないかってことですね。まぁ確かにポジティブな介入のほうが手を付けやすいですからね。
一方で誠実性については、「部屋の掃除」や「カレンダーを使ってスケジューリングする」といった機械的なタスクでも簡単に実践できるので、別にモチベーションがなくてもどうにかなるらしい。
参加者が介入を守る限り、誠実性を対象とした介入に動機付けはほとんど関係ない。
とのことで、こちらは「自分はコツコツやるのが苦手で……」とお悩みの方には良いニュースじゃないでしょうか。本人にやる気がなかったとしても、とりあえず義務的に「机の上をきれいにする」みたいな行為を続ければいいわけですからね。
こうなると、「具体的にどんなチャレンジをすればダメな性格が変えられるのか?」ってのが気になりますが、これはだいぶ長い話になるので「パレオチャンネル」のほうにまとめておくことにします。全部で241のチャレンジタスクを取り上げるので、どんな人でもなにかしらヒットするとこはあるんじゃないでしょうか。