2022年4月に読んでおもしろかった6冊の本と、1本の舞台
月イチペースでやっております、「今月おもしろかった本」の2022年4月版です。まいどのことながら新刊の執筆続きで読書量はガツンと下がってまして、今月に読めたのは13冊ほどで、映画は1本も見られませんでした。ムフー。
ルーズな文化とタイトな文化―なぜ〈彼ら〉と〈私たち〉はこれほど違うのか
ピンカー先生やアダム・グラント先生など、そうそうたるメンツが激賞している一冊。著者はスタンフォードの心理学教授で、恥ずかしながらこういう研究があるのをはじめて知りました。
ざっくり言えば「世界にはタイトな文化とルーズな文化があり、この分類でいろんなことが説明できるよー」みたいな話です。タイトな文化はシンガポールみたいにルールに厳しく、ルーズな文化はスペインみたいにゆるいイメージっすね。非常にシンプルな枠組みですが、この武器をもとに経済力や差別への姿勢、犯罪率の低さ、肥満率の違いまで幅広い現象をなで斬りにしていて、読んでて爽快な気分になりますね。
もちろん、あまりに枠組みがシンプルすぎて、経済とか地理みたいに外的な要因を軽くあつかってる気もしなくはないですが、それでも説明力が高いフレームワークのひとつとして知っておくと役に立ちそうであります。
人体大全―なぜ生まれ、死ぬその日まで無意識に動き続けられるのか―
「人類が知っていることすべての短い歴史」など、とにかく大量の情報をまとめるのが大好きなビル・ブライソン先生が、「人体」をテーマに現在の論点や楽しい豆知識を披露してくれる一冊。
取り扱われるジャンルは「脳と人格」「痛みの種類」「皮膚のすごさ」など幅広く、さすがにそれぞれを網羅的に説明してるわけではないものの、「知っておくと自慢できるトリビア」と「押さえておきたい基礎知識」「現在の論点と今後の展望」がバランス良く収められていて、「書き方がうまいなぁ……」と感心しまくりながら読ませていただきました。
ゴットマン式コミュニケーション術 ――自己診断テストでわかる改善と対策
「対人コミュニケーション研究の鬼」ことジョン・ゴットマン先生が、あらゆる種類の人間関係(友人、結婚、恋人、家族、同僚など)をよりよく進めていく方法をまとめた一冊。この手の海外本って、人間関係に悩む個人のエピソード紹介みたいなのが延々と続き、そこからちょっとだけ教訓を抜き出して終わってしまうようなものが多く、「結局どうすりゃいいんだ!」みたいな気分になりがちなんですけど、本書はかなり実用を意識して書かれているのが良い感じです。
まずは自己診断テストで自分のコミュニケーションスタイルをつかみ、それにそって最適な人間との接し方を探っていく感じで、コミュニケーション本としてはかなり使い勝手がよいのではないかと。
若者の性の現在地: 青少年の性行動全国調査と複合的アプローチから考える
「青少年の性行動全国調査」をベースに、いまの若者は性についてどんなイメージを持っているのか? どんな行動をしているのか? 性的マイノリティへのイメージには変化が出たのか? などをたんたんを数字で見せてくれる一冊。
あくまで調査レポートがメインなので、なんらかの答えとか行動の指針になりそうなことは書いてないんですけども、「2011年から急に若者の性的な活動のレベルが下がった」とか「草食系みたいな言葉がはやったけど、大学の調査では実際にそのような変化は確認されていない」とか、いろいろと思考のとっかかりになりそうなトピックが出てきて楽しませていただきました。
常識として知っておきたい裏社会
数度の服役経験を持つ懲役太郎さんと、裏社会に詳しい作家の草下シンヤさんの対談集。このタイプの対談集って、ともすれば個人の自慢合戦になったり、興味を持ちづらいトリビアしか書いてないケースが多いんですが、本書はタイトルどおり「常識として知っておきたい」ような知識が会話のなかで過不足なく披露されてまして、かなり編集が効いてる印象を受けました。
ヤクザと半グレの違いとか、海外マフィアの生態とか、たんなる興味深い読み物ではなく、自衛のために使える知識が詰まってまして、読んで損なしではないかと。
佐久間宣行のずるい仕事術――僕はこうして会社で消耗せずにやりたいことをやってきた
テレビプロデューサー佐久間宣行さんが、経験をもとに働き方のコツをまとめたビジネス書。全体的なトーンとしては、自分の目的を効率よく達成するために、いかに世間で「不合理」とされている事象をうまく活用するか?って方向で書かれていて勉強になりました。経験ベースのビジネス書って、「旧世代はこんな不合理ばっかやってるぜ!打ち壊そうぜ!ガハハ!」みたいなノリが多いんですけど、それだとたんに合理を目指したすえに非効率を生むだけなので、この本のようなやり方のほうが現実には役立つことが多いでしょうね。
ちなみに、わたくしこのタイプの本を手にする際には、「この内容を支持するデータってあるだろうか?」みたいに考えながら読む職業病にかかってるんですが、本書の内容は発想法や組織心理の先行研究にも適合した知見が多いように感じました(特に企画術のところとか)。
バカリズムライブ「信用」
わりと毎年行ってるバカリズムライブを、今年は久々に劇場で見ることができてめでたいことでありました。毎度のことながら、ひとつのコントごとに新しいシステムか新しい発想のどちらかが入れ込まれていて、「なぜいつもこんなイバラの道を……」という気分にさせられました。作業工程を想像するだけで気が遠くなりそう。