自分の印象をコントロールしたきゃ会話中の◯◯を変えよ!みたいな話
「みんなわりと正確に他人の性格を見抜ける」ってのは、よく聞く話だと思います。多くの人はだいたい数秒で他人への印象を形成し、その判断はおおむね正しいって報告は非常に多いんですよね。
で、ジェームズ・クック大学のデミング・ワン先生らによる新しい研究(R)も「他人の性格を見抜く方法」にまつわる話で、結論をざっくりまとめると、
- 多くの人は「返事のスピード」で、その人の内向性を判断している!
みたいになります。研究チームいわく、
人は本を表紙で判断する傾向があり、他者を判断する際に、外見、ボディランゲージ、声の抑揚、表情といいた表面的な手がかりに頼る傾向がある。
ということで、実際の話の内容ではなく、こちらの質問に対してどれぐらいのスピードで返事をするかで性格を判断している人はとても多いんじゃないか、と。
というのも、過去の研究では「内向的な人は自分なりの答えを出すのに時間がかかるため応答スピードが遅くなりがち」って傾向が報告されてたんですよ。それゆえに、私たちは「応答スピード」が内向性の指標になったかもしれないんですね。
応答スピードによる印象の違いをざっくりまとめると、
-
応答反応が早い=誠実で自信があり、友好的で"良い人 “に思われやすい。
-
応答反応が遅い=会話にためらいがあり、神経質で受動的に思われやすい。
みたいになります。会話の応答が遅いと、相手にあまり興味がないような印象を与え、それが「この人は内向的だ!」って判断につながるらしい。
これはド内向人間である私も思い上たるところで、自分としては熟考してるだけなんですけど、人によっては傲慢な印象を持ったり、人によっては気難しい人間だと思ったりされがちなんすよね。こっちはただ考えてるだけなんですが……。
ということで、研究チームは、14パターンのオンライン実験をやってまして、参加者に架空のシナリオを提示して、その主人公をどんな性格だと思うかを調べたんだそうな。たとえば、具体的に使われたシナリオはこんな感じです。
ケリーはシンガポールで生まれ育った20代前半の女性で、現在、地元の大学の最終学年に在籍している。ある日の夕食時、ケリーの母親が尋ねた。
「卒業後の具体的なキャリアプランについて考えている?」
ケリーは(即座に/6秒間)の間をおいて回答を始めた。
「大まかな計画はあるけど、具体的な計画を立てるには、最終的なGPAを待つ必要があるね」
ご覧のとおり、応答スピード以外は、完全に同じシチュエーションであります。これによって、応答スピードによる印象の違いをチェックしたわけです。
それでは、結果を見てみましょう。
- みんな6秒の間隔で返事をした人を、内向的だと判断した。
- また、内向的だと判断された人は、社会的な仕事にはふさわしくないと判断されやすく、孤独な仕事をやったほうがよいと見なされる可能性も高かった(そりゃそうでしょうな)
- 認知的負荷などの可能性を補正しても、内向性効果は強固に維持された(つまり、ストーリーの主人公が他に考え事をしていたと想定しても、返事が遅い人は内向的だと思われた)。
- さらに、シナリオに登場する2人が友人同士だ説明された場合でも、ためらいがちな回答者はより神経質で、それゆえに内向的だると認識されました。
って感じだったそうで、やはりレスポンスの遅さは、内向性のジャッジに大きく影響するらしい。この結果をふまえて、著者らはこんなことを言っておられます。
応答タイミングは、日常のさまざまな場面で適応的に自己をアピールするための戦略として活用できるかもしれない。
要するに、内向的な人は、相手の印象を良くするために、少し返答を速くすることを心がけるといいんじゃないか、ということですね。
その他にも、この実験を現実生活に応用するならば、
- 外向的な性格の人はが内向的な人と話す際には会話のペースを落として、内向人間が十分に考えられるペースを作ってあげると良い感じ。ガンガンに答えを求めると、内向人間からのレスはさらに悪くなるので注意したい。
- 内向的な性格の人が、もっと外向性を表に出したい場合は、脳内で答えがまとまる前に沈黙の時間ができないように、会話のフィラー(「まぁ〜」とか「要するにねぇ……」とか)で間を埋めてみるといいかも。
- 自分が他人を判断するときは、「人間は応答スピード時間から相手の性格を判断しがちだ」という事実を念頭においておき、それ以外の要素(感情表現とか)に目を向けるように気をつける。
って感じになるでしょうね。私も気を抜くと応答スピードが遅くなりがちなんで、これは意識しておくか……。