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【質問】最強の習慣化術?「ハビット・スタッキング」はどうやって使うべきでしょうか?

 


 

こんなご質問をいただきました。

 

ハビット・スタッキング 人生を大きく変える小さな行動習慣」という本を読みました。いつもの習慣に新しい習慣を続けていくというやり方で、効果はありそうに思いましたが、あまり研究例が出ていないので不安になりました、ハビット・スタッキングについてどう思われますか?

 

とのこと。ハビット・スタッキングというのは、質問者さんが言うように「習慣に習慣を積む」っていうやり方のことでして、たとえば、

 

  • いつもの習慣をピックアップする(「歯を磨く」「仕事終わりにラップトップを閉じる」ぐらい小さな習慣でOK)
  • 「歯を磨いたら顔を洗う」というように、既存の習慣の上に新しい習慣を積み重ねていく

 

みたいな感じで実践します。建物を建てるのと同じように、基礎となる習慣が強固であればあるほど、その上に積んだ習慣も固定化すると考えられております。

 

 

で、ハビット・スタッキングの研究について申し上げますと、残念ながら、いまだ具体的な調査例はないのが実情かと思います。「習慣に習慣を積むとどうなるか?」って問題は、まだチェックが進んでいないジャンルなんですよね。

 

 

とはいえ、個人的には、ハビット・スタッキングは「理にかなってはいるよなー」と思ってたりはします。それというのも、ハビット・スタッキングってのは、要するには実行意図の一種だといえまして、それであればメリットを示唆する研究は非常に多いもんですから。

 

 

実行意図ってのは、「朝机に座ったら、水を一口飲む」みたいに、いつ、どこで、何をするかを決めておく手法で、くわしくは「悪い習慣が治るif-thenプランニング超入門」をご覧ください。ざっくり言えば、習慣化した行動(例:机に座る)と、自分がやりたいこと(例:水を飲む)の間にメンタルのリンクを作り、それによって行動の自動化を引き出そうというんですな。

 

 

ご存じの方も多いでしょが、すでに複数の検証データがある手法なので、その類似パターンである「ハビット・スタッキング」もおそらく効果を望めるだろうと思うんですよ。現在の習慣がトリガーになり、新しい行動に取り組むチャンスも上がり、最終的には2つ目の行動も1つ目の行動と同じように習慣になる可能性は高いんじゃないかと。

 

 

別の説明をすれば、習慣ができてるってことは、すでに脳内にガッチリした神経経路があるってことですからね。つまり、この神経回路を使って新しい習慣に取り組むと、脳が「あれ?この行動ってすでに慣れた行動なのかな?」と思い込み、新たな行動が習慣になりやすいかも?ってことでもあります。あくまで理論上の話ではありますが、ヘタすりゃ普通の実行意図よりも成果があるかもなーとも思うんですよね。

 

 

というわけで、個人的には「十分やってみる価値があるでしょう!(コストもかからないし)」と思う次第ですけど、実践の際は、以下のポイントにお気をつけください。

 

 

  • 具体性:ハビット・スタッキングに使う習慣は、常に具体的な行動を選ぶのが吉。例えば、「会社が終わったら5分間瞑想する」ではなく、「会社から返って自宅のドアを閉めたら、自分の部屋で5分間瞑想する」みたいにするわけですな。「会社が終わったら」でも十分に具体的に見えるものの、「会社が終わるとは?」や「もし会社を深夜に出たら?」などいろんな疑問が出てきますんで、そのたびに新たな習慣に取り組む確率が下がっちゃうんですね。

 

 

  • 簡潔さ:既存の習慣の上にあまりに複雑な行動を積み重ねると、元の習慣がどんなに安定していても崩れ落ちちゃう可能性が大。そのため、新しい行動を定着させるためには、2~5分以内の行動から始め、そこから積み重ねていくのがいいでしょう。

    例えば、「朝食後に30分運動する」という習慣を身につけたい場合、最初のうちは「朝食が終わったら腕立て伏せを10回」と決めておけば、そのぶんだけ習慣になりやすいはず。でもって、いったん腕立て伏せ10回が習慣になれば、そこに「30秒間その場でもも上げする」みたいに、別の習慣を重ねることができますんで。

    同じ理由で、1つの習慣の上にたくさんの新しい行動を一度に積み重ねるのもNG。ハビットスタッキングをする際は、「ひとつの習慣につけられる行動はひとつ」とお考えください。

 

 

  • 緊急対策:どんな行動でも予期せぬことは起こるため、そんな問題に備えて事前に「コンティンジェンシー・プラン」(最悪の事態を想定して立てる計画)を作っておくのもいいでしょう。たとえば、もし「歯を磨いた後に運動する」って目標を達成できなかあったら、「運動ができなかったら寝る3時間前に10回ももあげする」みたいに緊急対策を決めておいてくださいませ。

 

 

  • 類似性:新しく習慣にしたい行動は、できるだけ古い習慣に近いもののほうが習慣にしやすくなります。たとえば、「コーヒーを飲んだら呼吸法のトレーニングをする」と「運動を終えたら呼吸法のトレーニングする」を比べた場合は、前者よりも後者のほうが近いので、「コーヒー→呼吸法」よりは習慣化しやすくなるわけですね。

    基本、積み重ねるものが似ていればいるほど、ひとつの行動からまた別の行動へとシームレスに移動でき、全体がルーティンになる可能性が高くなるとお考えください。

 

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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