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今週末の小ネタ:ビタミンDサプリでメンタルが改善? 1分間のオンラインアートで幸福感が激上がり? HSPってナルシストに似てるんじゃない?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。 

  

 

 

ビタミンDサプリメントがうつ病の緩和に役立つとのメタ分析

ビタミンDといえば当ブログの最頻出サプリでして、なんなら自前でビタミンDのサプリも開発してたりするわけです。

 


でもって、新たに東フィンランド大学などから出てきたメタ分析(R)もビタミンDの話で、まず結論から行ってしまうと、

 

  • ビタミンDのサプリメントが、成人のうつ病の症状を緩和するかも!

 

みたいになります。セロトニン仮説が否定されつつあり、近年はうつ病の原因が錯綜しているわけですけども、ビタミンDに可能性があるんならありがたいですねぇ。

 

 

まぁ似たような研究は過去にもあったんですが、今回のメタ分析は、これまでに発表されたものの中で最大規模でして、なかなかよろしいのではないでしょうか。具体的には、世界中から集められた41の研究をまとめたもので、だいたいは成人のうつ病に対してビタミンDが効くかどうかをRCTで検討したものだけを厳選しております。

 

 

その結果は先ほども申し上げたとおりで、

 

  • ビタミンDのサプリは、うつ病患者の抑うつ症状の緩和において、プラセボよりも有効だった。
  • 使用されたビタミンDの用量には大きな違いがあったが、通常は1日あたり50~100マイクログラム(2,000~4,000 IU)を使っていた。

 

 みたいになります。とにかく、ビタミンDサプリメントは、成人のうつ病患者の抑うつ症状を緩和するかもしれないんだ、と。

 

 

まー、このメタ分析については、あつかっている数は多いものの、研究の対象となってる参加者がバラバラだし、それぞれのビタミンDの用量もかなり違うので、これをもって「ビタミンDでメンタル改善だ!」とは言えないのでご注意ください。正直、まだ証拠としてはかなり弱い印象なので。

 

 

とはいえ、ビタミンDが、脳の中枢神経系の機能を調節しているのは有名な話だし、この機能の乱れがうつ病と関連しているって話も多いので、サプリメントが効く可能性は十分あるんじゃないでしょうか。また、過去には「ビタミンDが足りないとうつ病の症状が出やすくなるよー」って傾向は何度か観察されているので、体内に十分な量が足りない方は、サプリメントを使ってみるのもよいかもしれませんねー。

 

 

 

1分間のオンラインアートで幸福感が激しく上がる説

アートってメリット多いよねー」って話はさんざんしてますが、新しいデータ(R)では、「ネットで1分のオンラインアートで幸福度が上がるぞ!」って結論になってておもしろかったです。これまでも、美術館に行ってみたり、自分でアートを制作したらストレスが下がるよーってな話はあったんですけど、オンラインでも似たような効果があるってのはすばらしいっすね。

 

 

で、今回はマックス・プランク心理言語学研究所などの調査で、84人の男女にスマホ、タブレット、パソコンなどでGoogle Arts & Cultureを閲覧してもらい、ほんの1~2分ぐらいアートにアクセスしてもらうように指示。そのうえで、観覧の前後で気分がどう変わったかについて回答してもらったんだそうな。

 

 

でもって、すべてのデータを分析したところ、

 

  • オンラインでアートを見たグループは、否定的な気分、不安、孤独感が低下し、主観的な幸福感が高まった。

 

  • これらの効果は、自然のなかで遊ぶ体験や、物理的に美術館やギャラリーに行った場合などと同じぐらいだった

 

だったそうです。オンラインでアートをチェックしただけで、「自然で遊ぶ」と同じぐらいポジティブな心理効果を得られるってのはすごいですなぁ。

 

 

さらに、この調査では、「アートに対する個人の主観的な体験がポイントだよー」って結論も出してまして、こちらも重要な感じでした。簡単に言えば、アートが個人にとってより意味深く感じられたり、美しいと感じられたりするものだったりするほど、アートを鑑賞する際によりポジティブな感情を抱き、より大きな心理効果が得られるんだそうな。

 

 

つまり、オンラインアートでメンタル改善を狙うなら、「意味」と「美しさ」の2つを追えってことですな。ちょっとGoogle Arts & Cultureをぶらついてみるか……。

 

 

 

HSPってナルシストに似てるんじゃないか説

HSPといえば、はいわゆる敏感な脳の持ち主のこと。1996年にエレイン・アーロン先生が作った言葉で、感覚的な刺激に対する反応が強く、すぐに刺激に圧倒されてしまうので、社会をうまくわたっていくのが難しくなったりします。もちろん、近年はHSPのメリットもいくつか認められてるんですが、基本的にはいろいろ大変なことが多い感じではあります。

 

 

でもって、新たに出た研究(R)もHSPにまつわる話でして、こちらも結論から言いますと、

 

  • HSPな人って、同時に「傷つきやすいナルシスト」の特徴も持ってるのでは?

 

みたいになります。「傷つきやすいナルシスト」ってのは、以前にも書いたナルシシズムの一形態で、「自分は好きなんだけど、自信がないせいでいつも不安なナルシスト」みたいな定義になります。自分は好きなんだけど、いまいち自信がないせいで、他人からの批判にめっぽう弱い傾向を持ってたりします。このような特徴を、HSPも合わせ持ってるのではないか?ってことですな。

 

 

これはグラーツ医科大学などの研究で、イツの成人280名と英国の成人310名からなる2つの別々のサンプルを使用。オンラインアンケートを使い、みんなの性格特性やメンタルおよび身体の症状を回答してもらったそうな。

 

 

すると、結果は研究チームの予想どおりでして、

 

  • どちらの研究でも、HSPは傷つきやすいナルシストと正の相関を示した
  • 特に「興奮しやすい」という因子が、ナルシシズムの尺度と最も強く結びついていた
  • HSPは意外と権利意識が強く、これもナルシストの考え方と似ていた

 

だったそうです。やはりHSPと傷つきやすいナルシストは似たところがあり、さらに権利意識まで持ってるんじゃないかって話ですね。

 

 

研究チームいわく、

 

HSPと傷つきやすいナルシストは、どちらも『私は傷つきやすいから、どんな不快感も避けるのが当然だ』という態度をとっていることを示している。

 

とのことで、両者とも自分の弱さを特権意識に切り替えてる可能性があるらしい。これはなんとなくわかるなぁ。

 

 

さらに、その他の結果も見てみると、

 

  • HSPとナルシシズムは神経症傾向と内向性の性格に関連しており、神経症傾向がこの2つの特性の共分散の大部分を説明していた

 

みたいな結果も出ておりました。神経症傾向がHSPとナルシシズムに関わってるってのは、非常によくわかるポイントですね。

 

 

さらに研究チームいわく、

 

HSPと傷つきやすいナルシシズムは必ずしも同じものではないが、両者は重要なポイントが似ている。特に、長期的に個人の成長をじゃまする可能性が高い自己規制メカニズムを共有している。

 

このような問題は、特に「不快感を避けなければならない」という態度を示す個人に当てはまりやすい。

 

とのこと。なんでも、HSPの人たちというのは「自分は他の人と違うのだ!」って感覚に日常的にさいなまれやすく、その感覚が「自分は特別な人間なのだ!」や「自分は特別扱いされるべきなのだ!」って考え方にスライドしちゃうかもしれないんだそうな。確かに、このような特徴はナルシシズムの基本的な要素でして、その点でHSPとナルシシズムが似てくるってのはありそうですね。

 

 

いずれにせよ、もっとも良くないのは「不快感を避けなければならないのだ!」って考え方みたいなんで、HSPや傷つきやすいナルシストの傾向がある方は、その点をくれぐれもご注意ください。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。