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今週半ばの小ネタ:「いい人」は人生で成功しやすい?アートの効果すごすぎ、仕事のパフォーマンスが上がりやすい性格とは?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

      

 

 

「いい人」は人生で成功しやすいのか?それとも失敗しやすいのか?

現在の心理学で、もっとも正しい性格テストと呼ばれているのがご存じ「ビッグファイブ」。そのなかで、いまいち存在感がないのが「調和性」であります。これは、主に人々と仲良くしたり、ポジティブな関係を築くことに関係する性格特性なんですが、例えば誠実性や開放性などとくらべていまいち名前があがることが少ないんですよね。

 

 

ということで、アーカンソー大学などの研究者たちが、近ごろ「調和性が高い人は人生に有利なのか?」を調べたデータ(R)を発表してくれておりました。私も調和性は高めな人間なんで、そこらへんは気になるところです。

 

 

これがどんな調査だったかと言いますと、

 

  1. ビッグファイブに関する過去のメタ分析142件をピックアップする(190万人の参加者と約3,900の研究データが含まれている)

  2. それぞれのデータで使われた275の変数をピックアップし、これにたいして調和性がどう関係するかを調べる(身体的・心理的健康、業績、動機づけ、成功などに関する影響をチェックしている)

 

みたいになります。人生のあらゆる側面について、調和性がどう影響するかを調べてくれたわけです。これだけ大規模なデータを使って、調和性について調べてくれたのは、めちゃくちゃありがたいっすね。

 

 

で、その結果をひとことでまとめると、

 

  • 調和性は、93%の変数と結果に対して望ましい影響を与える!

 

だったそうです。簡単に言えば、いい人より幸せで健康的で人生に成功しやすいのだ!ってことですね。一部には、「調和性が高い人はダマされやすい」みたいな見解もあったんで、これはうれしい結果じゃないでしょうか。

 

 

ちなみに、研究チームは「調和性が役立つ人生のジャンル」を8つのテーマに統合していて、具体的には以下のようになります。

 

  1. 自己超越:自らの成長に意欲を持ち、他者への配慮や関心を示す。

  2. 満足感:人生をありのままに受け入れ、新しい状況や制度にうまく適応することができる。

  3. 人間関係への投資:他者との良好な関係を築き、維持しようとする意欲。

  4. チームワーク:他者と目標を調整するための共感力と、集団の目標を達成するために効果的に協力する能力。

  5. 仕事への投資 : 仕事に対して努力を惜しまず、質の高い仕事をし、職場環境に対応しようとする意欲。

  6. 結果重視の度合いが低い: 個人の結果を出すことを重視せず、他人のパフォーマンスをより甘く評価する傾向。

  7. 社会規範志向:社会規範やルールを遵守する行動を尊重し、ルール違反や不正を避ける傾向が強い。

  8. 社会的統合:社会的役割や制度にうまく溶け込む能力があり、非行や反社会的行動、離職の可能性が低い。

 

ってことで、調和性が高い皆さまにおかれましては、あなたの性格が持つ上記のメリットを存分に活かす方向で考えていただければと思うわけです。

 

 

 

アートは犯罪に巻き込まれる可能性を下げるのでは?

「アートはすばらしい!」って研究例は昔から多いわけです。例えば、

 

 

みたいな感じでして、アートの重要性は高まるばかりなわけですが、新しいデータ(R)では「アートは犯罪に巻き込まれる可能性を下げるのでは?」って結果になってておもしろかったです。

 

 

こちらは米国の25,000人以上のティーンエイジャーのデータを調べたもので、

 

  1. 学校のクラブ、オーケストラ、合唱団、学校外の芸術クラスへの参加、美術館やコンサートに行ったかどうか、自分で読書をしたかどうかなどの活動から、ティーンエイジャーの芸術活動への総合的な関わりを測定

  2. それぞれのティーンエイジャーが、どれぐらい反社会的行動(学校での非行、ケンカ、窃盗やドラッグ販売などの犯罪行為など)に関与したかを調べる

  3. 両者のデータにどんな関係があるのかをチェックする

 

といった感じになっております。すると、アート系の活動をよく実践している参加者ほど反社会的行動に関わる率が低く、それから2年後にも同じ傾向が認められたんだそうな。

 

 

さらに、アート系の活動が多い学生には以下の傾向も確認されております。

 

  • 芸術に親しんでいるティーンエイジャーや若者は、自制心のスコアが高く、反社会的行動を否定的にとらえる傾向がある

 

なんでアートで反社会行動がなくなるのかは謎だし、あくまでも観察研究につき因果関係は不明なんですけど、研究チームは、

 

  • アートのおかげで共感性が上がるからでは?
  • 退屈が軽減されるからじゃないの?
  • アートは感情のコントロールに効くんでは?

 

といった推測をしておられました。ここらへんはまだまだ研究が必要ですけど、アートの素晴らしさを示すデータがまたひとつ増えた感じですねー。

 

 

 

仕事のパフォーマンスが上がりやすい性格とは?

仕事のパフォーマンスが高い性格とは?」って問題を調べたメタ分析(R)が出ておりました。これはミネソタ大学などが行った調査で、9つの主要な職業パターン(牧師、顧客サービス、ヘルスケア、法曹、経営、軍隊、専門職、販売、技術職)のパフォーマンスを調べた15のメタ分析をまとめた内容になっております。全体で89,639人のデータを調べてまして、わりと精度は高めではないでしょうか。

 

 

で、こちらの研究でも、分析には「ビッグファイブ」を使ってまして、「どんな性格の人が仕事のパフォーマンスが高いのかなー」ってところを調べてくれてます。その結果をざっくりまとめると、

 

  • 誠実性(マジメにコツコツやれる性格)が高い人は、すべての仕事において業績が高かった。しかし、その効果は、認知的な要求が低い仕事と中程度の仕事で強く、認知的要求が高い仕事では弱かった(つまり、コツコツやれる人はどんな仕事でもうまくいきやすいが、法曹とか経営みたいに頭を使う職業だと効果は低くなる)

 

  • 外向性が高い人は、そこそこ頭を使う仕事で高いパフォーマンスを上げる可能性があった

 

  • 他の特性は、特定の職業のパフォーマンスを予測するのには役立った。例えば、ヘルスケアの仕事では調和性が役に立ち、営業や管理職では外向性がより良い効果を示し、感情の安定性は技術職、法曹、軍隊でパフォーマンスが高い傾向があった

 

  • 全体的に、中程度の複雑さを持つ仕事は、性格の違いによる仕事のパフォーマンスを予測しやすかった

 

ということで、予想どおり「誠実性が高い人はどんな仕事でも有利!」って感じでして、それ以外の性格については、職業の分類がおおまかなもんで、いまいち参考になりづらいところがありますね。とりあえず、誠実性を鍛えて損はないですよーってことでひとつ。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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