このブログを検索

野菜は生で食うべきか?それとも料理して食うべきか?どっちが健康にいいの?問題を考える

 

野菜は生で食うべきか?それとも料理して食うべきか?」って問題は昔からあって、「生食のほうが栄養価が高い!」って主張がある一方で、「調理したほうが逆に栄養が吸収される!」みたいな主張もあったりします。

 

 

ここらへんの問題は難しくて、「不老長寿メソッド」では「どちらの食べ方もメリットとデメリットがあるから、深く考えるほどの意味がない!」ぐらいの結論に落ち着いてたりします。食材によって栄養の使われ方はかなり違うので、全体的に大きな結論を出すのが難しいんですよ。

 

 

が、近ごろ「野菜は生で食うべきか?それとも料理して食うべきか?」問題を調べたおもしろいデータ(R)が発表されまして、だいぶ参考になりました。

 

 


これは英国バイオバンクの健康データを使ったもので、特に心疾患がない男女399,586人のデータを評価しております。参加者の平均年齢は約56歳、約55%が女性で、

 

  • 2006年から2010年にかけて、食事の内容、ライフスタイル、健康状態などを調べ、さらにみんあの身体計測と血液、尿、唾液の採取も行う

 

  • 食事に関するアンケートをもとに、それぞれが「1日に平均でどれぐらいのサラダや生野菜を食べるか?」や「1日に平均でどれぐらい調理済みの野菜を食べるか?」を判断する

 

  • 野菜の摂取量を4段階に分類し、生野菜と調理済み野菜それぞれの摂取量をベースに、みんなの健康レベルと比較する

 

って感じの研究になってます。ここでいう「健康レベル」ってのは、おもに心臓や血管の病気による入院または死亡をベースに判断してまして、そのうえで数字に影響しそうな要素をいろいろとコントロールしたんだそうな。

 

 

平均の追跡期間は約12年でして、分析したらこんな結果になりました。いずれも、野菜をたくさん食べる人と、ほとんど食べない人を比べた場合の数値になっております。



  • 心疾患の発症率
    • 生野菜をたくさん食べた場合の発症リスクの低下率=12〜21%
    • 調理済み野菜をたくさん食べた場合の発症リスクの低率=0〜23%

 

  • 心疾患による死亡率
    • 生野菜をたくさん食べた場合の発症リスクの低下率=15〜26%
    • 調理済み野菜をたくさん食べた場合の発症リスクの低率=4〜33%

 

なんだか数字にだいぶ幅がありますけど、これは「どの要素でデータを調整するか?」によって、結果が大きく変わってくるのが原因です。基本的には、年齢とか居住地域みたいに基本的な要素だけで調整したほうが数字が大きく出て、さらに運動量、タバコ、加工食品の量などをいろいろと加えると数字が低めに出る感じっすね。

 

 

というのも、野菜の総摂取量が多い人は、少ない人に比べて高学歴で裕福な地域に住んでおり、喫煙者が少なく、平均BMIが低い傾向がありますんで、いろんな要素で調整しない場合はどうしても数字がデカくなりやすいんですよ。これはしかたないところですね。

 

 

つまり、上記の結果をざっくりとまとめるのであれば、

 

  • 生野菜と調理済み野菜は、どちらも食べるほど心疾患の発症および死亡のリスクの低下と関連していた

 

  • 全体的に言えば、生野菜は調理済み野菜よりも予防効果が高かった。が、観察された相関の多くは交絡因子に起因する(すべてではない)

 

といった感じになるでしょう。出てきた数値を見る限り生野菜が優勢っぽいんだけど、それは交絡因子で説明できるってことですね(つまり、野菜をたくさん食べる人は金持ちで健康的なライフスタイルを送っており、そっちの原因のほうが病気の発症率や死亡リスクへの関係は大きい)。

 

 

ってことで、個人的には「生野菜と調理済み野菜の効果が異なるのは、野菜の食べ方よりも他の要素の影響が大きいのでは?」ってな印象を大きく持ちました。ちなみに、参考までに過去の類似研究とも比べておきましょう。

 

  • 2017年の観察研究(R)では、17か国から集めた135,335人のデータを評価したところ、1日2皿以上の生野菜を摂取する人は、1ヶ月に1皿未満よりも死亡リスクが54%低く、交絡因子を調整すると31%に減ると報告されている。一方で、調理した野菜の摂取量が1日2皿以上の場合は、1ヶ月に1皿未満よりも死亡リスクが28%減少したが、交絡因子を調整した後は9%に減少した

 

  • オーストラリアの150,969人のデータを評価した2016年の観察研究(R)では、生野菜をもっとも多く摂取する人は、さほど摂取しない人よりも全死因死亡のリスクが35%低いが、この効果は交絡因子で調整すると有意ではなくなった。調理した野菜をもっとも多く摂取する人は、さほど摂取しない人よりも全死因死亡リスクが12%低く、交絡因子で調整すると13%に増加した。

 

というわけでして、これらの話を合わせて考えてみると、やっぱ生野菜か調理野菜かはあんま考えず、「とにかく量をこなす!」ぐらいに考えておくのがいいんじゃないでしょうか。


スポンサーリンク

スポンサーリンク

ホーム item

search

ABOUT

自分の写真
1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

INSTAGRAM