今週末の小ネタ:お金が不安な人ほど買い物で幸せになれない件、ツイッターでヤバい人は現実でもヤバい件、正しく老ける方法
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
お金が不安だ……と思っている人ほど買い物の喜びが減る
「お金が不安だ……と思っている人ほど買い物の喜びが減る!」ってデータ(R)が出ておりました。
これは7,000人以上を対象に行われた調査データと、25,000人以上を対象とした他の調査データのレビューから得られたもので、
- みんながどれぐらいの経済状況にあるか?
- それぞれの購買幸福度はどれぐらいか?(要するに、何かにお金を払ったときに得られる幸福感)
って2つの要素をチェックして、両者にどんな関係性があるのかを調べております。
でもって、分析の結果について、研究チームはこんなことを言っておられます。
経済的な制約がある人は、幸福感を高めるために物を買う傾向があるが、我々の研究によると起こることは正反対だ。
経済的な制約を感じることで、人々は購入したものをもう一度見直し、そのお金で他に何ができたかを考えるようになる。消費者の頭の中には、そのお金を他に何に使えたかという疑問があるため、その購入について考えるたびに、最終的に購入したものに対する満足度が少し下がってしまう。
お金のなさに苦しんでいる人は、「いつも節約ばかりしてるから、今日は豪華なスイーツでも食うぞ!」みたいな消費をしがちなんだけど、その後で「ああ……あのスイーツを買った金で電気代の支払いができたな……」とか思ってしまい、結果的に満足度が低下しやすくなるのではないか、と。これは「あるある」かもしれないですねぇ……。
特に現代では、あらゆる所得レベルの人々が、経済的なプレッシャーを感じている。家賃は劇的に高騰し、住宅市場は多くのアメリカ人にとって手の届かないレベルだ。
アメリカで中央値よりかなり上の収入を得ている人たちでも、ガソリンが突然1ガロン4ドルになったり、牛乳が2年前より50%高くなったりすると、やはり経済的な問題を意識せざるを得ない。
ということで、アメリカでも経済的なプレッシャーは大きく、貧しい人だけでなく、お金持ちでもショッピングから幸福を得られない人が増えているらしい。これは日本でも同じようなことが言えそうですな。
では、この問題についてどうすればいいのかと言いますと、
この苦難から抜け出すには、計画性が必要だ。経済的なプレッシャーを感じている人は、その場で何も考えずに消費をしてはいけない。事前に計画を立て、そのお金をどのように使うことができるかもふくまて考える必要がある。そうすることで、より多くの幸福を得ることができる。
だそうです。とにかく衝動買いはやめて、そのお金をどう使うかについて前もって計画することで、実際のショッピングからより多くの幸福を引き出すことができるわけですな。まぁ買い物に計画性が必要なのは当たり前ですが、ショッピングをより有意義にするって意味でも事前の計画は重要なんでしょうな。
ツイッター上で嫌な人間は、リアルの世界でも嫌な人間なのか?
「もしあなたがオンラインで嫌な奴なら、おそらくあなたは人の前でも嫌な奴だ。」って名言がありまして、もしあなたがネット上で「この人いやだなー」と思った人物がいた場合は、その人はリアルでも嫌な人である確率が高いわけです。
でもって、新しいデータ(R)も、「ネット人格とリアル人格の違い」を掘り下げていて、非常におもしろかったです。
これは ジャンムー大学などの研究で、ざっくりと研究のデザインをまとめてみると、
- インドのTwitterユーザー100人をピックアップ。サンプルは、男性47名、女性53名で、年齢は25歳から41歳
- みんなが投稿した直近の500件のツイートとリツイートを分析し、みんなのビッグファイブを推測
- 実際にビッグファイブのテストも行い、リアルでの全員の性格をチェックする
みたいになります。ツイッター上の人格とリアル人格がどこまで関わるのかを調べたわけですね。
そこで、どのような結果が出たかと言いますと、
- オンラインでの行動は、基本的には私たちのリアルでの行動とかなり重なっている
- 実際のところ、オンラインでヤバいやつは、犯罪行為をやっている確率も高かった
- 具体的な数値を出すと、Twitterから性格特性(ビッグファイブ)を見抜く際の予測精度は75%だった
だったそうで、75%の精度ってのはわりとすごいですね(過去の類似研究よりも数値が高いので注意が必要ですが)。
ちなみに、このほかにも興味深い結果が出てまして、
- 「協調性」(他人とうまくやっていける優しい人)と「外向性」(社交性があってコミュニケーションがうまい人)が高いTwitterユーザーはフォロワー数が多い傾向があった
- 逆に「神経症性傾向」が高いユーザーはフォロワー数が少なかった
といったあたりも「なるほどなー」って感じですね。まぁ、この研究はインド人の小さなサンプルで行われているんで、この結果を一般化できるかは謎なんですけど、いまのところは「ネットの性格はリアルの性格を反映している」って報告のほうが多い感じっすね。
「老化に成功している」ってどういう状態を意味するの?
「不老長寿メソッド」では、自分の老化にネガティブイメージを持ってるとマズいよーって視点を強調しております。老化を損失や衰えとイコールで考えると、そのストレスでさらに老化が進んでしまう傾向があるんですよ。
このような考え方は、抗加齢研究の世界ではもはや常識になりつつありまして、「サクセスフル・エイジング」なんて呼び方をされております。老化をネガティブにとらえないのが良い加齢につながるんだよーって視点ですね。
ただ、ここでまだ議論が残るのが、「サクセスフル・エイジングってどんな状態を言うの?」ってポイントです。なんとなく元気なお年寄りはサクセスフルな感じがありますけど、それだけだとボンヤリしててよくわからないですからね。
ってことで、ケルン大学などによる新しいデータ(R)では、「サクセスフル・エイジングってどういうこと?」って問題を深掘ってくれていて良い感じでした。
具体的には80歳以上のドイツ人1,863人の協力を得まして、コンピュータを使った約1時間半の個人面接を実施。「どれぐらい慢性的な病気に悩んでいるか?」や「日常生活に不便を感じていないか?」「脳の働きはどんなもんか?」といったフィジカルな側面をチェックしつつ、さらに「人生にどれぐらい満足しているか?」「加齢にともなうプラス/マイナスの経験はあるか?」「感情的な幸福感はどれぐらいか?」といった主観的な人生の質も評価したんだそうな。
なんでこういう調査をしたかというと、従来の考え方では「病気がなくて頭が働いてて社会に参加してる人こそがサクセスフルだ!」と言われてきたからです。確かにこの考え方も一理あるとは思いますが、一方では慢性的な病気に悩みつつも人生を謳歌してる人もいるはずでして、そのような高齢者を除外することになっちゃうんですよね。
そんなわけで、上記のデータを分析してなにがわかったかと言いますと、
- 病気にかかっておらず、脳機能も万全に働いている人のうち、主観的な人生の満足度の基準を満たした人はわずか11%だった
みたいになります。つまり、いかに健康でバキバキに動けていたとしても、メンタルが充足している人の数はめちゃくちゃ少なかったわけですね。ちなみに、客観的な健康の基準は全部で5つあるんですが、4つを満たしている人は全体の3分の1で、5つすべてを満たしている人は9%だったそうで、こちらも非常に少ない割合だったみたいっすね。
一方、人生の満足についての主観的な基準を満たしたご老人は全体の65%もいたそうで、研究チームは、「主観的な人生の評価は客観的な基準と激しく不一致している」と結論づけております。要するに、身体的にはアンチエイジングがうまくいっているように見えても、外側からはそう見えないケースはめちゃくちゃ多いので、これではサクセスフル・エイジングとは言えないよねーってことですな。
ちなみに、この研究では、主観的な人生の満足の基準として「現在の人生の価値が役に立っている」、「生きる意志が強い」、「人生を最大限に活用している」、「自分で決めた目標を達成している」などの項目に賛成できるかで判断しております。自分の加齢を評価する際は、ぜひこのような観点も採用してみちゃいかがかと思う次第です。