もしあなたがオンラインで嫌な奴なら、おそらくあなたは人の前でも嫌な奴だ。
その昔、「ネットにネガティブコメントを書き込む人はたんにドSなだけ」って話がありましたけど、最近のデータ(R)も「荒らしってどんな人なの?」ってのを調べてくれてておもしろかったです。
この文献については、アダム・グラント先生がこんな要約ツイートをしておられました。
インターネットが人々を荒らしに変えているわけではない。たんにインターネットが荒らしを目立たせているだけだ。
8,000人以上の被験者を対象にした、8つの研究による結論。もしあなたがオンラインで嫌な奴なら、おそらくあなたは人の前でも嫌な奴だ。
荒らしは注目を集めるために攻撃性を選ぶ。エサを与えるよりも無視したほうがいいだろうね。
もうこれだけで十分な気がしますが、いちおうもう少し研究の詳細をメモっておきましょう。
これはオーフス大学などの研究チームによる調査で、8434人を対象に8種類の調査と実験を行ったものです。簡単に言うと、みんなにネットで攻撃的な行動をしたかどうかを調べてまして、
過去30日間に、政治的なコンテンツやコメントをオンラインで投稿ししたが、サイトのガイドラインに違反して警告を受けたり、削除されてしまったり、後になって後悔したり、周囲から攻撃的だと受け取られたりしたことがありますか?
過去30日間に、オンラインにおけるテキストベースの政治討論で、政敵をからかったり、他人が傷つくようなコメントを投稿したり、他人をいじめたりしたことがありますか?
過去30日間に、オフラインの対面で行った政治の討論で同様の発言をしましたか?
みたいな質問を重ねたらしい。ネット上の政治的な議論はとかく罵り合いに発展しがちですけど、オンライン上で攻撃的な人は、果たしてオフラインでも攻撃的なのか?を調べたわけっすね。
でもって、この研究では、ついでに以下のような文章に賛成するかどうかも尋ねてます。
- たとえ暗殺される危険性が高くても、有名な権力者になってみたい
- 危険な場所で金持ちや権力者として生きるよりも、安全な場所で普通の人として生きる方がいい
なんでこういう質問をしたかといいますと、最近の研究では「地位を求める傾向が高い人ほど、大義のために他人を攻撃したり、暴力を支持する傾向があるよー」って報告が多いからです。ネットでケンカをくり返す人は、もしかしたら地位への欲求に取り憑かれているのでは?と研究チームは考えたわけですね。
ということで、すべてのデータをひっくるめてどんな結論が出たかと言いますと、
- オンラインとオフラインの攻撃性には違いがない(ネットで攻撃的な人はオフラインでも攻撃的)
- 政治的な議論で攻撃的になる人は、やっぱりステータスを求める欲求が強かった
だったそうです。ひらたく言ってしまえば、ネットで嫌な人は現実でも嫌な人であり、その背景には「他人の上に立ちたい!」って欲望があるって話ですね。うーん、こわい。
研究チームいわく、
攻撃性は、不幸な状況によって引き起こされる事故ではない。(攻撃的な人々が)オンライン上で欲しいものを手に入れるために用いる戦略なのだ。
ネット上の憎しみは無知から生まれるものではないため、教育で取り除くことはできない。敵対的な人々は、自分の言葉が人を傷つけることを知っているからこそ、その言葉を使うのだ。
我々は、特定の議論ごとに何がOKで何がNGなのかを説明し、モデレーターを使うなどして、そのルールを取り締まることが必要だと考えている。
とのことでして、やはりアダム・グラント先生が言うとおり「荒らしはスルーが一番」なんでしょうなぁ……。