メンタルが弱い?それってドーパミンのバランスが崩れてるせいじゃないすか?みたいな話
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「ドーパミン・ネイション」って本を読みました。タイトルどおりドーパミンと中毒症状の関係を探った一冊で、著者のアンナ・レンブケさんはスタンフォード大学の依存症治療センターのメディカル・ディレクターだそうな。依存治療の第一人者っすね。
というわけで、個人的に勉強になった4つのポイントをメモっときます。
ポイント1. いまのデジタル環境って脳のバランス崩してない?
- 過去100年間におよぶ神経科学の研究により、ヒトの脳では喜びと痛みが同居していることがわかっている。快楽の処理と痛みの処理は脳の同じエリアが司っており、そのおかげで快感と痛みのバランスを取るように設計されている。
- 脳はつねにドーパミンの量を一定に調整しており、喜びと苦しみのどちらかが増え過ぎてしまうと、脳はバランスを元に戻そうと必死に働く。いわゆるホメオスタシスと呼ばれる効果である(どんな楽しいコンテンツでもやがて飽きが来るのは、脳が喜びを下げようとしてドーパミン受容体とドーパミン伝達をダウンレギュレートするせいで発生する)。
- ところが、現代ではYouTubeやネトフリのように、次から次へとドーパミンを発生させる仕組みがあるので、脳がダウンレギュレートするヒマがない。そのせいで「もっと動画を見たい!」という欲望が生まれる
- 脳のホメオスタシスが崩れると、私たちはやがて喜びのベース設定が変わってしまう。つまり、ちょっとしたコンテンツでは喜びを感じられなくなり、普通の感覚を保つためだけにYouTubeやネトフリを見続ける状態に切り替わる。いったんこうなると、動画を見るのをやめただけで、不安、イライラ、不眠、渇望の感情が生まれ、脳は依存症に近い状態になっていく
ポイント2. ドーパミンの過剰分泌がこわいこわい
- ポイント1で挙げた喜びと苦しみのバランスは、何百万年もかけて進化したシステムで、この機能があるおかげで、私たちの祖先は原始時代を生き延びることができてきた。しかし、現代は圧倒的に豊かになったため、メール、ツイッター、ゲーム、ギャンブル、砂糖、買い物、タバコなど、ドーパミンをドバドバ出す方向に向かわせるものが多すぎる。
たいていのものはワンクリックで大きな報酬をうながし、中毒性を持つように設計されている。スマートフォンは皮下注射のようなもので、デジタルドーパミンを24時間いつでも供給できてしまう。
- そのくせ、多くの先進国で、うつ病、不安障害、身体的苦痛、自殺の割合が増えており、「世界幸福度報告書」によると、豊かな国ほど不安障害が多い傾向が見られる。これもまた、脳内のドーパミンバランスの崩壊によるところも大きいかもしれない。
豊かな国に住む人々ほど、報酬が高く、効力が強く、斬新な薬物を簡単に入手できるため、強迫的な過剰消費の影響を受けやすい。このような状況は、依存症のリスクを高める危険な要因となっている。
ポイント3. ドーパミン断食
- ここまでの問題を解決するには、「ドーパミン断食」が有効となる。考え方は簡単で、自分がハマっているコンテンツ(ゲームとか動画とか)をとにかく1カ月間やめてみるだけ。
- 事実、「ドーパミン断食」を行ったあとで、不安や落ち込みがなくなったと報告する患者はとても多い。これは、報酬経路へのドーパミンの放出をいったん止めたことで、脳がホメオスタシスを取り戻し、バランスが回復したからだと考えられる。
- ただし、なにも考えずにドーパミンを追いかけているときは、原因と結果の関係がわかりにくいため、多くの人はなかかな「ドーパミン断食」を実践しようとしない。これは難しい問題で、私たちは嗜好品をやめてから初めて、自分の生活や周りの人に与える影響を知ることができる。
ポイント4. ホメオスタシスを回復させる
- 具体的な「ドーパミン断食」の例としては、著者が治療を行ったゲーム依存の患者が挙げられている。ここでは、いったん1カ月ほど完全にゲームを止めさせたあと、「いかに脳内のドーパミンバランスが重要か?」という事実を念頭に起きつつ、ゲームをする時間を週に2日&1日2時間までに制限した。これぐらいのペースで行えば、再びゲームをしてもホメオスタシスが回復するのに十分な時間を確保できる。
- ドーパミン断食の期間は長ければ長いほどよく、特に最初の12時間は欲求が強くなるので、どうやっても嗜好品にアクセスできない環境を作っておくのがおすすめ
- それと同時に、ゲーム用のノートパソコンと勉強用のノートパソコンを使い分けることで、ゲームと勉強を物理的に分離する作業も実施。最後に、ゲームで社会的なつながりを強化するために、友人とだけプレイし、知らない人とはプレイしないようにた。人と人とのつながりはドーパミンの強力な供給源なので、乱用は避けておきたい。
- 「ドーパミン断食」を行うと、最初は快楽と苦痛のバランスが苦痛の側に傾き、落ち着かず、不機嫌になる。しかし、十分な時間をかけてバランスが回復すれば、依存の対象に心を奪われなくなり、今を生きることができるようになり、人生のちょっとした思いがけないことにも喜びを得られるようになる。
ってことで、「ドーパミン・ネイション」のポイントは以上です。本書ではドーパミン断食がもっと詳しく述べられてますんで、気になる方はどうぞ。個人的には「喜びと苦しみは表裏一体!」って本書の主張にはとても共感しまして、
- 現代の消費文化はムダにドーパミンを刺激して、「人生はもっと楽しいはずだ!」って幻想を生んでるぞ!
- 基本的に人生はつらいんだから、そこを認めないとドーパミンの幸福は得られないぞ!
ってあたりは「無(最高の状態)」にも近いものを感じましたね。ドーパミン系としては「もっと! : 愛と創造、支配と進歩をもたらすドーパミンの最新脳科学」も良い本でしたが、こちらも合わせて推奨。