今週末の小ネタ:糖質制限と筋肉、メンタルに悪いユーモア、先延ばしを克服するための締め切り
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
超低糖質ダイエットって筋トレに役立つの?
超低糖質ダイエットって筋トレに役立つの?って問題を調べた研究(R)が出ておりました。この研究は、9つのRCTを対象にしたナラティブレビューで、健康で筋トレをしている188人を対象にしたもの。ざっくり言いますと、
- 超低糖質ダイエットは、体重、脂肪量、筋肉量などにどんな影響があるの?
ってのを調べてまして、ここでいう超低糖質ダイエットってのは、炭水化物の摂取量が10%未満、または1日あたりの炭水化物の摂取量が50g未満の食事を意味してるそうな。
でもって、9つのデータをまとめてどんな結論が得られたかと言いますと、以下のようになります。
- レビューに選ばれた9つのRCTのうち、7つは超低糖質ダイエットと普通食のあいだで摂取カロリーを一致させ、残りの2つは参加者に自由に食事を食べてもらっていた
- 6つのRCTでは、超低糖質ダイエットのほうが普通食より体重と脂肪が減り、他の3つのRCTでは、どちらのグループも体重と脂肪の減りかたは同じだった
- 5つのRCTでは、超低糖質ダイエットのグループのほうが除脂肪体重がより多く減っていた
ってことで、まだハッキリとは言えないものの、超低糖質ダイエットってのは筋肉の成長を邪魔する可能性があるんじゃないか、と。
その理由について、研究チームは3つの仮説を提示しておられます。
- 炭水化物の摂取量を減らすことでインスリンレベルが低下し、それによってmTORが阻害され、筋タンパク質の合成を減少させる
- 超低糖質ダイエットはAMPKのリン酸化を促進し、同化経路を阻害する可能性がある
- 超低糖質ダイエットは食欲を抑制する働きがあるため、それによって摂取カロリーが減り、それによって筋肉を作りづらくなる
もちろん、これだけだと本当に超低糖質ダイエットで筋肉が減るとは断定できんのですが(除脂肪体重の話なんで)、糖質制限が筋肉に悪影響って可能性はあるかもなーとか思った次第です。
メンタルに良いユーモアと悪いユーモア
メンタルに良いユーモアがどんなものかを調べたぞ!ってデータ(R)がおもしろかったんでメモ。これはマセラータ大学などの研究で、まずはチームの問題意識がどんなものだったかと言いますと、
ユーモアは一義的な概念ではなく、ポジティブな面とネガティブな面の両方を持つ。いくつかの研究では、ユーモアのセンスが高い人は低い人に比べて不安やストレスが少ないことが示されている。
今回の研究では、どのタイプのユーモアが心配事を減らし、どのタイプのユーモアが幸福感を増すのかを特定できた。
みたいになってます。ユーモアがストレス解消に良いのは昔から有名なんだけど、笑いにもいろんなパターンがあるから、そのタイプによってメンタルにあたえる影響は変わるのではないかってことですね。
そこでチームは18歳から67歳までの男女254人を集め、みんながどんなスタイルの笑いを好むかを質問紙でチェック。これに加えて、みんなのメンタルも評価しつつ、さらには世界保健機関(WHO)の幸福度指数にも回答してもらったんだそうな。
その結果がどうだったかと言いますと、
- ポジティブなスタイルのユーモア(楽しいユーモアと善意のユーモアの2つ)をよく使う人は、心配や不安のレベルが低く、心理的な幸福度が高い傾向があった
- シニシズムが強いユーモア(一般的な価値観を切り捨てることを目的としたユーモア)をよく使う人は、心配のレベルが高く、幸福感のレベルが低い傾向が見られた
- ウィット、皮肉、嫌味、ナンセンスなどは、心配や幸福度とはほとんど相関がなかった
だったそうな。ポジティブなユーモアが幸福度と相関するのは納得ですが、メンタルに悪いのがシニシズムだけで、皮肉や嫌味は相関しないってのはおもしろいですね(サンプル数が少ない研究なんで断定はできんですが)。
ちなみに、シニシズム系のユーモアってのは、
- ホレス「幸運とは、他人に不幸が起こることである」
- ビスマルク「自分の良心を純粋に保ちたいなら、それを使うべきではない」
みたいなことを言うらしい。決まればかっこいいけど、外すとドン滑りしそうな感じではありますね。
まー、文化的な差もあるだろうから一概にシニシズムが悪いとも言えないですけど、ストレスフルな状況をポジティブに切り返すのがメンタルに良いってのは間違いないので、そこは意識しときたいとこですねー。
先延ばしを克服するための締め切り設定とは?
先延ばしを克服するには締め切りの設定が一番!とはよく聞く話です。もちろん私もすべてのタスクに締め切りを設定してまして、これがないと多分なにもやらないだろうなーとか思うわけです。
では、締め切りの設定法によってその効果は変わるのか?ってことで、そのへんを調べたデータ(R)が出ておりました。
これは約3000人の男女を対象にした調査で、みんあにある慈善団体のためのアンケートに答えてもらったんですが、その際にアンケートの回答期限を、1週間、1ヶ月、または期限なしのどれかに設定したんだそうな。
で、その後のアンケートの回収率をチェックしたところ、
- 最も回答数が多かったのは、締め切りが「1週間」または「期限なし」の条件だった
- 締め切りが「1ヶ月」の条件が、もっとも回答率が低く回答のスピードも遅かった
だったそうな。要するに、他人い頼み事をするときは、期限を短くするか、もしくはまったく締め切りを決めないかのどちらかが最適なんじゃないの?みたいな話っすね。
研究チームいわく、
短い締め切りや、まったく締め切りを設けない場合と比べて、長い期限を指定したほうが切迫感がなくなってしまう証拠だと解釈している。
そのため、人々はタスクをを先延ばしにし、回答率が低下する。
とのこと。まぁこの研究は、あくまで「人に頼み事をした場合」しか調べてないんで、自分が自分のために締め切りを設定した場合は?みたいな疑問について考えるには不向きではあります。
とはいえ「長い締め切りは危険だ!下手に設定するぐらいならなんもしないほうがいいかも?」ってのは、ちょっと考えて損はないポイントかなーと思う次第です。