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猫で発がん率があがる!はどこまで本当なのかに悩むマン

 
 

猫とヒトの病気についてご質問をいただきました。

 

私も猫がとても大好きで、現在も長毛の子と暮らしています。

じつは飼い猫の人体への影響について、気になる記事を見つけ、鈴木様はご存知かな? どう捉えたらよいのかな?とモヤモヤしています。

下記記事にコメントをしている医師は、猫の毛を吸うことで肺に慢性炎症が起こる、と解説していますが、猫砂のベントナイト粉塵が問題ではないのでしょうか?

米ジョージアサザン大学の研究チームが、ペットの有無と死亡リスクの関連を調べたところ、猫を飼っている女性は飼っていない女性に比べ、肺がんによる死亡リスクが2.85倍も高く、犬の場合は1.01倍でほとんど上がらなかったというのだ。
https://www.news-postseven.com/archives/20190903_1441995.html?DETAIL

 

ということで、猫を飼っている人は肺がんリスクが高まるのではないか、と。ここで取り上げられているのは2019年の文献(R)で、1950年代から行われているアメリカ人の健康と幸福に関する調査データを分析したものです。

 

この研究は13,725人に家庭でのインタビューを行い、ペットを飼ってる人とそうでない人の病気の発症率をくらべたんですよ。その結果を端的にまとめると、

 

  • ペットを飼っている人は、ペットを飼っていない人に比べて、大腸がんで死亡する確率が約3倍だった(ハザード比=2.83)。この大腸がん死亡者数の差は、ほとんどが「猫を飼うかどうか?」に起因していた(ハザード比=2.67)。

    一方、犬を飼っていても、飼い主ががんになる確率はまったく上がらなかった(ハザード比=0.90)。ペットの飼育が大腸がん死亡に与える影響に男女差はなかった。

 

  • ペットの飼育と肺がんによる死亡との関係を調べたところペット飼育は男性の肺がん死亡に影響を与えなかった。しかし、ペットを飼っている女性は、ペットを飼っていない女性に比べて、肺がんで死亡する確率が2倍以上高かった(ハザード比=2.67)。一方、犬を飼っていても、肺がんの発症率は上がらなかった。

 

  • さらに、すべてのがんで調べたところ、男性はペットを飼っても飼っていなくても、がんで亡くなる確率はほぼ同じだった。しかし、ペットを飼っている女性はがんで死亡する確率が40%高くなった(ハザード比=1.40)。その効果は、鳥(ハザード比=2.41)と猫(ハザード比=1.48)を飼っている女性で最も大きかった。

 

みたいになります。なぜだかわからないんですけど、とにかく猫と鳥を飼ってる女性に限ってがんの死亡リスクが上がるのではないか、と(ちなみに、この調査では喘息やアトピーによる影響は調整されている)。

 

 

で、この結果についてどう思われるかと言われれば、正直さっぱりわかりません。「猫の毛を吸うことで肺に慢性炎症が起こる」説にしても、男女差を説明できるわけじゃないですしねぇ。事実、研究チームも「この現象に対する答えがない」と認めてまして、そのうえで、

 

  • 猫や鳥を飼っている人は、汚染されたペットフードや動物の排泄物に触れることで、アフラトキシンと呼ばれる発がん性化学物質に接触しているのではないか?

 

  • 女性の方が男性よりも発がん性化学物質の影響を受けやすいので、そのせいではないか?

 

みたいな説を出してるんですが、「うーん、いまいち説得力がない………」という印象はぬぐえないところっすね。

 

 

さらに言えば、もちろんこの結果は単に統計的な偶然の産物である可能性もありまして、というのも2016年に行われたデータ(R)では、ペットを飼っても発がん率とは関係がないって結論も出てるんですよ。こちらは123,560人を対象にした調査で、上の調査と同じようにペット飼育とがんに関するハザード比を95%信頼区間を推定したところ、

 

  • 犬、猫、鳥を飼ってもがんにかかる率は全体として変わらない
  • 部位別のがんについても、多重比較を調整しても関連性は認められなかった

 

って結果だったんだそうな。全体的に見てますと、この2016年研究のほうが信頼できそうな気もしないでもないですし、「猫&鳥と発がん率」をうまく説明できる理屈が思いつかないこともあって、個人的にはそこまで心配してなかったりはします。とはいえ、現状では「よくわからん!」ってのが正直なとこでして、私も困ってるんですよねぇ……。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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