今週半ばの小ネタ:ピーナッツで頭が良くなる? 魚で脳の劣化を防ぐには? タマネギで認知が向上?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
ピーナッツで頭が良くなるんじゃないのか?説
ピーナッツって脳に良いのでは?みたいな話は昔からありますけど、新しい研究(R)でも「ピーナッツで脳機能が上がるのでは?」って話になっておりました。
そもそも、ピーナッツは植物学的にはマメ科なんだけど、実質はナッツに栄養組成が似てまして、ナッツ類に近い不飽和脂肪酸、食物繊維、ポリフェノールが豊富なんで、そのおかげで脳の健康を保護してくれるんじゃないかと言われてるんですよね。
これは6か月間のランダム化比較試験で,63人の健康な男女(18歳から33歳)を集めたうえで、
- 皮付きローストピーナッツを1日25g
- ピーナッツバターを1日大さじ2杯(32g)
- ポリフェノールと食物繊維を含まないバターを1日大さじ2杯
って3つの食事法のいずれかに割り当てたんだそうな。それ以外はいままでと同じ食生活を続けてもらいつつも、ワイン、ブドウ、ダークチョコレート、ベリー類のようにレスベラトロールが多い食品は除外したとのこと。
でもって、全員の記憶力や脳の柔軟性、視覚情報の処理スピード、不安、抑うつレベルなどを調べたところ、以下のような結果が見られたらしい。
- ベースラインと比較して、ローストピーナッツとピーナッツバターを食べた両グループで不安スコアが改善。ローストピーナッツを食べたグループは、さらに鬱スコアが改善した
- 認知機能については、ピーナッツバターを食べたグループは、即時記憶、言語記憶などが改善したが、ただのバターと比較して有意な差はなかった
- ただのバターを食べたグループと比べて、ピーナッツバターグループは短鎖脂肪酸の増加が見られた
- ピーナッツポリフェノールの摂取量は認知機能の改善と相関し、ピーナッツポリフェノールの摂取量および糞中の短鎖脂肪酸が増えるほど、鬱病のスコアが下がっていた
ってことでして、全体的に劇的なレベルではないものの、やはりピーナッツのポリフェノールは脳機能の改善に効くのではないか?って感じではありますね。
ただ、この研究は各グループの人数が少ないし、途中で脱落者も出ちゃってるんで、統計的検出力は80%から60%に低下してるのが辛いとこではあります(盲検化も行われていないし)。おそらくピーナッツは良い食材だとは思われるので、普通に食べてみてもよいかと思いますが。
脳の劣化を防ぐためには週にどれぐらい魚を食べればいいの?のメタ分析
もうひとつ脳に良さげな食材といえば魚。これまた昔からデータもある話なんですが、新しいメタ分析(R)では「1週間にどれぐらい魚を食べると脳に良いのか?」ってのを調べてくれてて参考になります。
ここではふたつのメタ分析が行われてまして、
- 追跡期間が2.1年から16年の11の前向きコホート研究のデータを分析し、魚の摂取量と認知症またはアルツハイマーとの関連を評価
- EPAおよびDHAのサプリが認知機能に及ぼす影響を、EPAおよびDHAを少なくとも2カ月間(最長36カ月間)毎日飲んだ9つの試験のデータを用いて評価
って感じで、魚の油が脳にあたえるメリットを評価してくれております。そこでどんな結果が得られたかと言いますと、
- 魚の摂取量が最も少ない人と比べて、魚の摂取量が最も多い人は、認知症のリスクが20%減少する傾向がある(ただし、バイアスのリスクが高い研究を除くと、この効果は有意ではなくなった)
- アルツハイマーに関しては、魚をまったく摂取しない人と比べて、魚の摂取量が週125g(1人前)の場合は24%、週250gの場合は31%ずつアルツハイマーのリスクが減少した。しかし、それ以上の摂取量では追加の効果は認められなかった
- プラセボと比べて、EPAおよびDHAの補給は実行機能をわずかに改善したが、一般的な認知機能は改善しなかった
って感じだったそうな。週に2回(約250g)ぐらい魚を食べればいいだけで認知症のリスクが下がるなら、めちゃくちゃ楽でいいですねー。
タマネギがまた認知機能を向上させるかも?
タマネギはケルセチンってフラボノイドがふくまれる優良食材。ケルセチンは非常に抗酸化作用が強い成分として知られてまして、昔から脳機能にも良いんじゃないかと言われてきたんですよ。
ただし、ケルセチンと脳の関係については、いままではマウス実験がメインだったんで、新たに健康な男女を対象にした実験(R)が行われまして、なかなか良い感じでした。
これは24週間のランダム化対照試験で、61名の健康な男女(60~80歳)を集めて、
- タマネギ由来のオニオンパウダー(ケルセチン50mg)
- 白タマネギ(ケルセチン0mg;プラセボ)
って感じで割り振って、認知機能やら感情の機能などをチェックしたんだそうな(食事からのケルセチン摂取量をコントロールするため、試験の期間中はタマネギとお茶の摂取を控えるように指示したとのこと)。
で、24週間後の結果がどうだったかと言いますと、
- ケルセチンを多くふくむタマネギは、プラセボと比べて認知テスト(MMSE)の総得点の改善効果が大きかった(1.7 vs. 0.9)。ただし、別のテスト(CADi2)で測定した認知機能に差はなかった
- 抑鬱と無気力のスコアについては、プラセボよりもケルセチンが豊富なタマネギのほうが改善した
って感じだったそうで、やっぱケルセチンは「ちょっとだけいいのかも?」って気がするわけです。この研究は事前に登録されているし、MMSEのスコア上昇を検出するために事前の検出力計算もしていたし、そこらへんは非常に良いとこですね(副次評価項目については多重比較の調整を行っていないため、偽陽性のリスクが高め)。