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「自分なんて……」みたいな志向は人生をハードモードにするが、良い側面もあるぞーという話


  

インポスター症候群ってあるじゃないですか。詳しくは「つい頑張りすぎる人にありがちなインポスターシンドロームの罠」を読んでいただきたいんですが、ざっくり言えば、何かをうまく成功させたあとでも「たまたまラッキーだったたけだ……」とか「みんな私を過大評価している……」みたいに感じる現象です。

 

 

どれぐらいの人がこの問題に悩んでるかは謎ですが、とにかくどんな偉大な成果を残した人だろうが起きる現象で、アインシュタインやらニール・ゲイマンなども苦しんだことがあるそうな。当然、その結果についてはネガティブな報告が多くて、詳しくは「自分を信用できない人は実際に年収が下がっちゃうみたいよ」をご覧ください。かくいう私もわりとインポスター寄りなとこがありまして、嫌になっちゃうんですが。

 

 

が、そんな状況下、新しいデータ(R)では、「インポスター症候群にも良いところがあるから落ち込まないで!」みたいな結論になってて、なかなかはげまされるものがありました。

 

 

これはMITスローン経営大学院などの調査で、投資ソリューション会社の社員160人以上やら、ROTC士官候補生、研修中の医師などを対象に、みんなのインポスター症候群レベルと実際の仕事ぶりを調べて、それぞれにどんな関係があったかを調べた内容になってます。

 

 

すると、インポスター症候群には悪いことばかりではなく、以下のメリットがあったそうな。

 

 

  • 偽者思考(「みんな自分を評価し過ぎだ!」みたいなやつ)が多い人は、その思考によって他者により集中するようになるため、仕事でより効果的にコミュニケーションを取る傾向があった。

 

  • 一方で、偽物思考があるからといって、客観的な仕事のパフォーマンスが下がるわけではなかった。

 

  • 偽者思考が引き起こす恐怖と不安によって仕事に失敗するケースもあるが、同時に仕事へのモチベーションが高まる人も少なくない。

 

 

要するに、偽者思考を持っている人たちは、「嫌われたくない!」という気持ちが高まるので、人を助けたり、協力したりといった、仕事上の対人パフォーマンスが向上するんだ、と。うーん、これめちゃわかるな。「自分の能力は他人が思っているより低い!」と感じていたら、対人関係で尊大になりようがないっすもんね(要は小心者でビクビクしているだけですが…)。

 

 

ちなみに、筆頭著者さんいわく(R)、

 

研修中の医師を調べた研究では、偽者思考を使うことが多い人ほど、会話中のうなずきが多く、アイコンタクトも頻繁で、たくさんのジェスチャーをしていた。つまり、より他者志向な行動を行っていたのだ。

 

その結果、偽物思考が多い医師は、患者から「コミュ力が高い」と思われる傾向があった。つまり、偽物思考の人は、聞き上手で、よく質問し、より共感してくれる人物だと思われやすかった。

 

別の研究でも、これらの偽物思考をより多く持つように誘導された人は、面接でもより多く質問をする傾向があり、採用担当者からもより高い評価を得ることにつながりやすかった。

 

とのこと。偽者思考を経験すると他者志向になり、その結果として、対人関係の評価が高くなるわけですね。これなら小心も悪くないな……。

 

 

また、この調査では、偽者思考によって仕事のパフォーマンスは下がらないって結論でして、過去の調査と食い違ってるのが不思議なところです。ここらへんの差が出る謎ですけど、他人志向がすぎて長期的にメンタルをやられちゃうのかな……。

 

 

まー、この話をふまえての教訓としては、

 

  • 偽物思考が本当に仕事に悪影響をもたらすかはまだ明らかではないので、偽者思考を持っているからといって、大きく心配する必要はない。

 

  • それどころか、偽物志向は対人関係において良い影響を与える可能性がある可能性が高い。まぁだからといって、偽者思考は最高だぜ!って話ではなく、修正できるならそれに越したことはない。

 

  • もっとも、一般的に偽者思考を持つ人は自分自身を厳しく責めまくるところがあり、そのせいで自尊心や気分の低下が起きるケースもよく確認されている。なので、対人関係のメリットを活かすように心がけ、そのうえでジリジリと改善していくと良い。

 

みたいになりますかね。インポスター症候群にもメリットがあるので、その「他者志向のせいで他人からの評判がよい」って側面はキープしつつ、自己評価と他者評価のより適切なラインを見極めていくのがいいんでしょうな。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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