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今週末の小ネタ:良い姿勢を心がけても腰痛の予防にはならない?人間の寿命の限界は120歳前後より長い?音が字幕になって見える人がいる?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

  

 

 

良い姿勢を心がけても腰痛の予防にはならんぞ!  

以前、「腰痛の原因は姿勢が悪いから!は科学的にはまったく証明されていない」って話を書きました。世の中では「姿勢が悪いと腰痛になる」とか言われますが、この説については、実はまったく明確な証拠がないって話であります。

 

 

で、最近のデータ(R)も同じことを言ってまして、結論から申し上げますと、

 

  • 良い姿勢を心がけても、背中の痛みや腰痛の予防にはならんぞ!  

 

みたいになります。これはカーティン大学などの研究で、姿勢と腰痛に関する昔のデータをあらためて調べ直して、この問題に関する大きな結論を出してくれているんですよ。

 

 

そのポイントをいくつかピックアップすると、以下のようになります。

 

  • 大量の若者を調べた大規模な調査では、背中が丸まった人、ずっと猫背の人などをチェックしても、背中の痛みや腰痛とは目立った関係が見られなかった。

 

  • 肉体労働に従事している人を調べた研究では、腰痛に悩んでいない人ほど、実は背中を丸めた姿勢を取っている傾向があった。

 

  • 逆に、腰痛に悩んでいる人ほど、実は背筋を伸ばしたよい姿勢を取っていた。

 

  • ある小規模な研究では、腰痛の症状がやわらいだ人ほど、姿勢が悪くなる傾向もあった。

 

ということで、これまでブログで書いたきたとおり、やっぱり姿勢と腰痛には関係がないし、それどころか姿勢が悪い人ほど腰痛が少ない可能性すらあるんじゃないか、と。

 

 

じゃあ、腰痛についてはどうすりゃいいのかってことですけど、研究チームが言うことには、

 

  • ストレス対策をする
  • 気分がへこんだらすぐに切り替える
  • 疲れがたまったら休む
  • よく寝る
  • 日中によく身体を動かす
  • 腰痛が不安になったら注意をそらす

 

ということだそうです。要するに、あんまり心配しすぎず、普通に健康的な生活を心がけようぜ!ってことらしい。まー私としては「やっぱりそうですよねー」みたいな結論なんですが、姿勢と腰痛にお悩みの人には、ちょっとビックリなニュースかもですね。

 

 

 

人間の寿命の限界は120歳前後より長い説

一般に「人間の寿命の限界は120歳前後だ!」と言われております。これは、過去の長寿者のデータや、人体の酸化ダメージのシミュレーションなどから推測されたもので、どんなに遺伝に恵まれた人でも、だいたい120歳を過ぎて生きるのは難しいんじゃないかと言われてるんですね。

 

 

が、新たにジョージア大学などが行った分析(R)だと「ヒトの寿命ってもっと伸びるのでは?」って結論になってて、ちょっとおもしろかったです。

 

 

これは先進国19カ国の出生と死亡データを分析したもので、出生の年代ごとにグループを作ったうえで、それぞれの死亡率や最長寿命がどんなふうに変化し、いまの世代の死亡率はどうなるかを推測したものです。あくまで経済学畑の分析でして、テロメアや酸化ダメージような要素は組み込まれてませんが、やってることはおもしろいですよねー。

 

 

これでどのような結果が出たかと言いますと、

 

  • 1910~1950年の間に生まれた人たちは、さらに寿命が伸びるかも?

 

って感じだったそうです。この世代から、高齢になっても死亡率の上昇がゆるやかな現象が認められてまして、これが事実であれば「120歳て実は生物としての寿命限界じゃないのでは?」と考えられるんだそうな。ほほーう。

 

 

まー、あくまで寿命のトレンドだけを追った分析なので、果たしてこの現象が続くのどうかは読めないのですけど、ちょっとおもしろい結論だなーと思ったことでした。というか、今後もまだ寿命が伸びるとすると、「DIE WITH ZERO」みたいなやり方でライフプランを組み立てている人は、いろいろと悩ましくなるかもしれませんね。

 

 

わたしの場合、ざっくり90歳ぐらいで資産を使い切るように設定して生きてるんで、「150まで生きたらどうすべ……」って気分になりました(笑)。まぁ、90歳で死ぬまでに必要な金額より多くを稼いでおいて、あとはギブダイレクトリーとかに寄付しちゃえばいいのかもですが。

 

 

 

 

音が字幕になって見える人がいるよ!

音が字幕になって見える人がいるよ!」って研究(R)がおもしろかったのでメモ。「音が字幕になって見える」ってのは、文字どおり耳から入った音声が文字として目の前に浮かぶ現象で、専門的には「ティッカーテープ共感覚」と呼ばれるらしい。数字に色が見えたり、音声に香りが感じられたりといった共感覚はよく知られるところですが、その一種なわけですな。

 

 

で、この調査では、ティッカーテープ共感覚を持つ26人にアンケートを行い、「具体的にどんなことが起きているの?」ってのを調べたんだそうな。そこでわかったことを述べていきますと、

 

  • 全体の73%が、「子供の頃に読書をしてたら共感覚が出てきた」と証言した。

 

  • 全体の70%が、音声で字幕が出る現象はコントロールできない。

 

  • この共感覚のおかげで、難しい単語のスペルを覚えるのは楽。

 

  • ただし、周囲でいろんな人が会話をしていると、目の前に字幕が現れまくってめちゃウザい。

 

  • うるさいところでの読書は、文章のうえに字幕が重なって見えるので、まず読書は不可能。

 

  • 新しい言葉とか珍しい言葉ほど字幕が浮かびやすい。

 

  • 大きな音は大きな文字に見えるし、悲しい言葉はにじんで見えるしで、音声によってフォントが変わったりもする。

 

ってことで、こうして見ると、わりと大変そうな能力ですね。うるさいところだと読書ができないのはつらいなー。

 

 

ちなみに、研究チームは、ティッカーテープ共感覚を「読書力の裏返し」と表現しておられます。つまり、私たちが本を読むときは「文字を脳内で音声に変換する」って手順を踏みますが、ティッカーテープではこれが逆になってるんじゃないか、と。んー、人間の脳はおもしろい。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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